いまさら聞けない、なぜ銀行融資では決算書が重要なのか? 3つの理由についてお話をしていきます。
理由までは知らないことが多い
会社が銀行融資を受けるにあたっては、「決算書」が重要だと言われます。ということは、多くの社長が知っていることでしょう。ではなぜ、決算書が重要なのか?
となると、意外と「わからない…」ということもあるのではないでしょうか。そこで、なぜ銀行融資では決算書が重要なのか、3つの理由についてお話をしていきます。
銀行融資の受けやすさにも影響するところですから、ぜひとも確認をしておきましょう。こちらです↓
- 金融検査マニュアルが浸透したから
- 実績が大事だから
- 確定した数字だから
これら3つの理由について、このあと順番に見ていきましょう。
なぜ銀行融資では決算書が重要なのか?3つの理由
【理由1】金融検査マニュアルが浸透したから
銀行融資で決算書が重要だとされる理由の1つめ、それは「金融検査マニュアルが浸透したから」です。
金融検査マニュアルとは、金融庁が銀行を検査する際のよりどころにしていたマニュアルであり、検査される銀行もまた、よりどころとしていたモノです。
その金融検査マニュアルには、「債務者区分」という考え方が記されています。債務者区分は、銀行が「自己査定(回収不能による損失を見積もる=貸倒引当金の設定)」をするにあたって、必要になるものです。
カンタンに言うと、融資先を上から順に「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5つに区分する。というのが、債務者区分の結論になります。
では、どのように区分するかというと。決算書です。おおむね決算書の良し悪しで、債務者区分は決まります。決算書以外の要素も影響はしますが、いちばん大きな要素は決算書です。
たとえば、「債務超過(資産よりも負債が多い)」の会社は「破綻懸念先」以下に区分する、といった具合になります。
その債務者区分にもとづいて決まるのが、「格付」です。ある銀行では、格付がぜんぶで10段回。上から1、2、3、4…9、10。債務者区分の正常先は1〜5、要注意先は6〜7、破綻懸念先は8、実質破綻先は9、破綻先は10。というように、債務者区分と格付とが関連しています。
債務者区分が、全銀行に共通の考え方なのに対して、格付は各銀行に「少々」考え方の違いが見られるところです。
その格付が良ければ、会社は融資が受けやすく、悪ければ融資が受けにくくなる。たとえば、格付が1〜4までは積極的あるいは前向きに融資をして、5〜6は現状維持、7以下は回収をはかる、みたいな感じです。つまり、格付は「銀行の融資姿勢」をあらわすものだと言えます。
というように、格付によって融資の姿勢が決まる。その格付のもとになるのが債務者区分。債務者区分で重要視されるのが決算書。だから、決算書が重要なんだ、ということです。
ちなみに。債務者区分について記載されていた「金融検査マニュアル」は、2019年末をもって廃止されています。もともと金融検査マニュアルは、バブル崩壊によって起きた不良債権問題の解決をはかるべくつくられたものです。
その後、20年以上がたち、問題も一段落を迎えたこと、加えて、マニュアル偏重による「画一的・機械的」な融資審査という「あらたな問題」が起きたことから、金融庁がマニュアルを廃止するにいたりました。
とはいえ、金融検査マニュアルの考え方自体がなくなるわけでもありません(銀行ごとの独自性は強まりますが)。今後も、決算書の重要性は変わらず、債務者区分・格付の考え方は残ることを理解しておきましょう。
【理由2】実績が大事だから
銀行融資で決算書が重要だとされる理由の2つめ、それは「実績が大事だから」です。言うまでもありませんが、決算書に記載されているのは「実績」の数字です。
これに対して、経営計画書に記載されているのは「予測」の数字になります。
会社は、融資を受けるにあたって、銀行に経営計画書を提出することがあるわけですが。予測である以上、「いかようにも書ける」という点で、銀行は慎重に見ています。
実際に、ハタから見ると、ありえないような右肩上がりの計画書があり、結局、大幅な未達に終わる… という計画書はあるものです。銀行が慎重になるのもムリはありません。
では、計画書の信頼度をどのようにはかればいいのか? ひとつの要素が「決算書」になります。決算書の「実績」と、計画書の「予測」とを比較することで、計画書の「妥当性」をはかるわけです。
たとえば、現状の実績が「売上高 1億円」なのに、計画書の予測は「売上高 3億円」というのでは、「ほんとうにそんなに売れるの?」となるでしょう。というように、銀行に経営計画書と決算書とのバランスを見ているものです。
だから、会社は、できるだけ決算書の内容を良いものにしておくことが必要になります。
税金を払いたくないから、経費を増やして利益を減らす。すると、その分だけ、経営計画書の利益は妥当性を失うことを覚えておきましょう。わざと利益を減らしたんだ、などという言い訳は通用しません。
経営計画書に書かれた数字を信用してもらえなければ、せっかく経営計画書提示したとしても、融資審査での「加点」は得られません。審査の大部分は「決算書」によるものではありますが、経営計画書に加点要素はあるのですから、漏れなく得点したいところです。
また、銀行に対して、決算書を見せるよりも先に、経営計画書を見せようとする社長がいます。決算書の内容に自信がないからかどうなのか。まずは経営計画書で「バラ色の未来」を見せようか、みたいなケースです。
銀行からしてみれば、「まずは決算書を見せてくれ」ということであり、「実績を見なければ、経営計画書の妥当性をはかれない」ということでもあります。経営計画書に対する、決算書の「位置づけ」を理解しておきましょう。
経営計画書をつくるなら・見せるなら、はじめに決算書ありき、です。
【理由3】確定した数字だから
銀行融資で決算書が重要だとされる理由の3つめ、それは「確定した数字だから」です。決算書が確定した数字だとした場合、確定していない数字であるのが試算表です。
試算表だって、毎月数字を確定している!と、思われるかもしれませんが。銀行は必ずしもそのようには考えていない、ということです。むしろ、試算表に書かれた数字は「仮」に過ぎず、決算書では数字が大幅に変わることさえある。だから、試算表はアテにならない、と考えています。
なので、銀行は、1年に1回、融資先から決算書を回収すると、前述した格付の手続きにて「向こう1年(次の決算書を回収するまで)」の融資姿勢を決めてしまうのです。
途中、融資先から提出される「試算表」も融資審査の参考にはなりますが。決算書に比べれば、その「比重」は小さなものです。いま現在の試算表では黒字、でも、直前の決算書は赤字となると、どうしても決算書の赤字のほうを気にするのが銀行、ということになります。
そう考えると、やはり、会社は「決算書でいかに利益を出すか」が重要です。繰り返しになりますが、目先の税金を嫌い過ぎるあまり、利益を出し惜しみしないようにしましょう。
ところで、試算表よりも決算書の比重が高いからと言って、「じゃあ、試算表はつくらなくてもいいか」などと考えてはいけません。試算表には試算表の「役割」があります。
そのひとつが、「管理能力のあらわれ」です。試算表をタイムリーにつくっている会社に対して、銀行は「管理能力がある会社だ」という見方をしています。逆に、試算表をつくるのが遅れていたり、つくっていない会社に対しては、「管理能力がない会社だ」という見方をしています。
どちらの会社が、より融資を受けやすいかと言えば。言うまでもなく、試算表をタイムリーにつくっている会社のほうです。
また、その試算表の「精度」についても、銀行は注目しています。たとえば、毎月、たな卸をしているかどうか、減価償却費は計上されているか、売掛金・買掛金の計上は適正か(現金主義になっていないか)、などなど。
そのうえで、精度が高い試算表であれば、銀行は「試算表も」評価をするようになります。試算表もまた「確定」した数字とみなして、決算書に対する比重が高まるということです。
試算表の比重が高まれば、試算表の数字をもとにして、融資を依頼しやすくなります。つまり、期の途中でも、試算表の数字が良いことを理由に、融資を受けやすくなります。
というわけで。試算表はタイムリーにつくること、そして、精度を高めるようにしましょう。
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まとめ
いまさら聞けない、なぜ銀行融資では決算書が重要なのか? 3つの理由についてお話をしてきました。知っているようでも、「理由までは知らない」ということはあるものです。
銀行融資の受けやすさにも影響するところですから、ぜひとも確認をしておきましょう。
- 金融検査マニュアルが浸透したから
- 実績が大事だから
- 確定した数字だから