コロナが収束に向かえば、いよいよ本格化するであろう事業性評価について。意外と、社長が勘違いしていることを確認していきます。
もはや、他人事ではいられない。
銀行から融資を受ける会社が考えるべきこととして、「事業性評価」が挙げられます。
事業性評価とは、財務データや担保・保証に依存せずに、事業の内容や成長可能性を評価すること。金融庁が銀行に対して、強く求めている考え方です。
事業の内容や成長可能性だなんて、あたりまえじゃないか? と、思われるかもしれません。そのとおりです。ところが、そのあたりまえが求められるようになった背景があります。
ざくっと、お話をすると。バブル崩壊にともなう不良債権処理の過程で、金融庁から「金融検査マニュアル」という「融資審査の指針」となるものが示されました。
各銀行が、これを「偏重」した結果、画一的・機械的な融資審査が浸透。財務データ(決算書)や、担保・保証に依存する融資審査が定着しました(おかげで不良債権処理は進んだわけですが…)。
かくして銀行は、かつてはあたりまえだった、融資先の事業の内容や成長可能性を見極めるための「目」を失うことになります。
そこで銀行は、本来あるべき「目利き(=事業性評価)」を取り戻し、独自性をもって融資に取り組みましょう。でなければ、銀行業界をとりまく厳しい経営環境を乗り切ることができませんよ。
というわけで、事業性評価があらためて求められるにいたりました。
2019年末には、金融検査マニュアルも廃止されています。コロナが収束に向かえば、いよいよ、各銀行の事業性評価も加速するものと想像します。銀行から融資を受ける会社は、他人事ではいられません。
そんな事業性評価について。意外と、社長が勘違いしていることがあるのが、こちらになります↓
- 決算書の内容が悪くてもだいじょうぶ
- 銀行に任せておけばだいじょうぶ
- ローカルベンチマークは役に立たない
これらの勘違いをしていると、今後の銀行融資が受けにくくもなるところです。そういったことがないように、このあと順番に確認していきましょう。
銀行融資の事業性評価について社長が勘違いしている3つのこと
【勘違い1】決算書の内容が悪くてもだいじょうぶ
冒頭、事業性評価とは「事業の内容や成長可能性を評価すること」だと言いました。これを聞いて、決算書の内容が悪くてもだいじょうぶなのか、と考える社長がいますが。
それは、勘違いです。
事業性評価では、「決算書に依存をするな」と言われていますが、「決算書は必要ない」とは言われていません。したがって、これまでもこれからも決算書は必要ですし、決算書の内容は良いに越したことはありません。
決算書の内容に加えて、事業の内容や成長可能性も評価される。と、理解をしておきましょう。
担保や保証についても同じことです。事業性評価では、担保や保証がいらないということではなく、必要であれば、やはり担保や保証を要求されることはあります。
ですから、決算書の内容を良くする。できるだけ利益を出すのはだいじ。これは、いままでと変わりありません。そのうえで、「あわせて事業性評価」という位置づけになります。
とはいえ、現状、決算書の内容が悪い会社にも、融資のチャンスが広がるのはたしかでしょう。
事業の内容が良ければ、成長可能性があれば、いずれ決算書の内容も良くなるはず。そういう会社であれば、いま決算書の内容が悪くても、融資を受けられる可能性があるということです。
【勘違い2】銀行に任せておけばだいじょうぶ
では、事業の内容が良い会社、成長可能性が良い会社は、待っていれば融資が受けられるようになるか? というと。そんなことはありません。
事業性評価は、銀行に任せておけばだいじょうぶ。そう考えている社長がいますが、勘違いです。
なぜなら、銀行は「会社の協力」がなければ、事業性評価はできないからです。事業の内容や成長可能性を評価するには、いままで以上に、銀行は情報を必要とします。
すくなくとも決算書だけでは不十分です。決算書をどれだけ眺めたところで、その会社が「だれに・なにを・どのように売っているか?」さえわかりません。事業の内容すら、よくわからないのです。
にもかかわらず、成長可能性などわかるはずもないでしょう。
したがって、「事業性評価」をしてもらいたいのであれば、会社のほうから情報提供する。協力することがたいせつです。その協力が無いことが、事業性評価がなかなか進まない理由にもなっています。
ややもすると、融資審査は「銀行が勝手にするもの」との見方もあるようですが。銀行が、じゅうぶんな審査をするためには、情報が必要であり、その情報も持っているのは会社のほうであることを理解しておきましょう。
銀行もまた、事業性評価を進めるべく、会社からの情報収集(訪問する・ヒアリングするなど)をしようとしています。とはいえ、それは手間と時間のかかる作業です。
いま銀行では、生き残りをかけた「業務効率化」が進んでいます。この点で、手間と時間がかかる事業性評価は相反すると言っていいでしょう。それでも事業性評価を進めるとしたら?
情報提供に協力的な会社を、銀行は優先するはずです。「銀行に任せておけばだいじょうぶ」では、事業性評価はしてもらえないものと考えておきましょう。
【勘違い3】ローカルベンチマークは役に立たない
では、銀行に対して、会社はどのように情報提供をすればいいのか? 結論は、ローカルベンチマークを利用することです。
ローカルベンチマークとは、経済産業省が提供するツール(Excelファイル)で、だれでも無料で利用できます。ネットで「ローカルベンチマーク」と検索をしてみましょう。
そのローカルベンチマークに沿って、必要な情報を入力していくと、「財務面」と「非財務面」の両面から、会社の経営状態を可視化することができるようになります。
非財務面については、商流図や業務フローにくわえて、経営方針や事業の強み・弱み、事業環境、内部管理体制など、まさに事業性評価に必要な情報が網羅されたものです。
そのローカルベンチマークを、経済産業省は「事業性評価の入口」と位置づけています。
ところが、いちぶの社長のなかには、「ローカルベンチマークは事業性評価の役に立たない」との見方があるようです。聞けば、「情報が薄すぎるから」と。たしかに、ローカルベンチマークはぜんぶでA4用紙3枚におさまる分量です。
そんな「少量」で、事業の内容や成長可能性をじゅうぶんに伝えることはできない。そこで、コンサルタントや税理士などに高い報酬を支払ってでも、分厚い資料を作成してもらおうとする社長がいます。
が、言うまでもなく、分厚い資料をだれかに作ってもらうことが、事業性評価の「本質」ではありません。
事業性評価の本質は、銀行と会社(社長)との「対話」にあります。対話を通じて、お互いの理解を深めた先に、事業の内容や成長可能性が伝わるものと考えておきましょう。
であるならば、ローカルベンチマークでじゅうぶんです。ローカルベンチマークは役に立たない、というのは勘違いです。
むしろ、A4用紙3枚という「少量」であることから、社長自身がとりくみやすいものになっています。また、情報提供された銀行のほうも、「少量」であることから目を通しやすいものでしょう。
これが、いきなり分厚い資料となれば、銀行だって嫌気するはずです。読み込むのには時間がかかりますから、前述の「業務効率化」にまたしても相反してしまいます。
というわけで。まずは、ローカルベンチマークから。ローカルベンチマークのWEBサイトには、ていねいなマニュアルもありますし、対話方法を解説した動画まで用意されています。さっそくとりくんでみましょう。
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まとめ
コロナが収束に向かえば、いよいよ本格化するであろう事業性評価について。意外と、社長が勘違いしていることを確認してきました。
勘違いしたままでいると、今後の銀行融資が受けにくくもなるところです。そういったことがないように、事業性評価に対する理解を深めておきましょう。
- 決算書の内容が悪くてもだいじょうぶ
- 銀行に任せておけばだいじょうぶ
- ローカルベンチマークは役に立たない