融資を受けられたらゴール、ではありません。銀行融資は借りてからが本番。というわけで、会社が銀行融資を受けるときに目標にしたいこと、についてお話をしていきます。
借りたらゴール、ではない。
銀行から融資を受けている会社であれば、「これを目標にしたほうがいい」と考えていることが3つあります。ずばり、こちらです。
- 預金残高>平均月商6ヶ月分
- プロパー融資
- 簡易キャッシュフロー>年間返済額
融資を受けるというと、借りるのがゴールのようになっていることがあります。
もちろん、完済というゴールもあるわけですが。事業を続けている限りは、「借り続ける」のがだいじ、かつ、必要なことでもありますので。すると、「借りた」や「完済」が、ゴールになりがちです。
が、銀行融資は借りてからが本番だ、といっても過言ではありません。借りておしまいではなく、どう借りられたか、どう借りているかが、その後の会社の命運を分けることさえあるからです。
というわけで、銀行から融資を受けている会社が目標にしたいことを3つ、このあと順番に確認していきましょう。
会社が銀行融資を受けるときに目標にしたいこと3選
【目標1】預金残高>平均月商6ヶ月分
ひとつめの目標は、預金残高を平均月商(年間売上高÷12ヶ月)の6ヶ月分にすることです。それだけの額の預金を持つのは、「自力」では難しいものがあるため、融資を受けて預金を増やすのが現実的だと言えます。
けれども、そこまでたくさんの預金をもつ必要があるのか? しかも、借りてまで… と、思われるかもしれません。借りれば、利息を支払う負担もあるのだからもったいない。
たしかに、そういった考え方もあるでしょう。が、預金が少ないと、いざというときに「持続する」ことができません。いざというときに「成長する」ことができません。
大震災やコロナのような不足の事態には、売上・利益が激減する会社があったのは周知の事実です。そのときに、手元のおカネが少ないと、会社はつぶれやすくなります。
銀行も混み合いますから、なにかが起きてから借りようとしても間に合わない。というリスクがあることは覚えておきましょう。だから、あらかじめ借りてでも預金を増やしておくことです。
結果として、平均月商6ヶ月分くらいの預金があれば、いざというときにもあるていどの時間をかせぐことができます。すると、会社は持続できる可能性が高まるはずです。
また、目の前にチャンスがおとずれたときに、おカネが必要になる場面は少なくありません。将来の売上・利益を増やすために、いま、設備投資が必要、人材の採用・育成が必要になることはあるでしょう。
そのとき、必要になるのがおカネです。おカネがなければ、チャンスを逃し、成長が遠のいてしまいます。急いで借入をしようにも、融資審査の時間がかかりますから、そのあいだもチャンスが待ってくれているとは限りません。
ですからやはり、あらかじめ借りてでも預金を増やしておくことにメリットはあります。平均月商6ヶ月分くらいの預金があれば、資金繰りに余裕をもってチャンスに投資することもできるはずです。
そのうえで、預金残高が平均月商6ヶ月分を上回るようになってきたら、預金残高が維持できる範囲で、借入残高を減らしていくのもよいでしょう。
「預金残高>借入残高」となれば、いわゆる「実質無借金」です。借入残高をまったくのゼロにする「完全無借金」を目標にする必要はありません。
この先、ぜったいに融資を受けないのであれば、完全無借金もよいですが、いずれ融資を受けるかもしれないのであれば、銀行との関係を切らないことが大切です。「融資を受けていない会社」は、「融資を受けられない会社」だと見られることもあります。
まずは、借りてでも預金を増やす。平均月商6ヶ月分の預金残高を目標にする。そのあと、預金残高を維持しつつ、借入残高を減らす。というように、考えてみましょう。
【目標2】プロパー融資
銀行から融資を受けている会社を見ていると、プロパー融資をまったく受けていないケースがあります。プロパー融資ではない融資、つまり、信用保証協会の保証付き融資ばかり受けている。
そういった会社は、プロパー融資を受けることを目標にしてみましょう。
いやいや、別に融資を受けられているのだからいいじゃないか。と、思われるかもしれませんが。受けられる融資の額を増やすためにも、融資条件をより良くするためにも、プロパー融資は重要です。
そもそも、保証付き融資には「限度額(枠)」があります。無担保であれば、一般枠として 8,000万円が限度です。それも制度上の限度額ですから、実際には会社の規模や状況によって、8,000万円よりも少ないことはあります。
目安として、年間売上高の3〜5割くらいが限度です。したがって、保証付き融資ばかりだと、いずれ限度額に達してしまいます。前述した「持続」や「成長」に影響が出てしまうことでしょう。
保証付き融資は、会社が返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりをしてくれるため、銀行にとってはリスクが小さく、貸しやすい融資です。会社にとっては借りやすい。
なので、銀行は保証付き融資を貸したがるし、会社は保証付き融資ばかりを借りてしまいがちです。
保証付き融資をプロパー融資に切り替えることで、保証付き融資の限度額に「空き」をもたせるようにしましょう。すると、いざというときにも、借りやすい保証付き融資という選択肢を温存できることになります。
では、どうしたらプロパー融資を受けられるのか? 大前提は、業績を良くすることです。プロパー融資は、銀行にとってリスクがあるのですから、そのリスクをできるだけ減らすこと。それには、会社の業績を良くするのがいちばんです。
ほかにも、プロパー融資を受けるのに良いタイミングはあります。くわしくは、こちらの記事をどうぞ↓
プロパー融資を受けられるくらい、良い会社になれば、金利をさらに引き下げたり、経営者保証を解除することができたり、と融資条件を良くしていくことも可能です。
融資を受けられればいいや、というのではなく。プロパー融資を受けることを目標にしてみましょう。
【目標3】簡易キャッシュフロー>年間返済額
さいごの目標は、「簡易キャッシュフロー>年間返済額」です。簡易キャッシュフローとは、「税引後利益+減価償却費」のことであり、借りたおカネの返済原資にあたるものと考えます。
減価償却費はさておき、税金を支払ったあとに残った利益(税引後利益)があって、はじめて返済ができる、ということです。
そう考えると、「簡易キャッシュフロー>年間返済額」は当然ではありますが、実際には、「簡易キャッシュフロー<年間返済額」と逆転している会社は少なくありません。
この点で、利益が出ている会社でさえも、「簡易キャッシュフロー<年間返済額」はありうることに注意が必要です。するとなにが起きるか?
「年間返済額ー簡易キャッシュフロー」の分だけ、手元のおカネが減っていくことになります。手元におカネ(預金)があればよいですが、なければ会社はつぶれてしまうのですから問題です。
そこで、銀行融資を受けている会社は、なんらかのカタチで「簡易キャッシュフロー>年間返済額」を目指すことになります。
では、なんらかのカタチとは、どのようなことが考えられるのか? ひとつは、簡易キャッシュフローを増やすこと。言い換えると、利益を増やすことです。
ただ、それもすぐにはできなかったり、できたとしても限度がある、ということはあるでしょう。次に、考えられるのが、年間返済額を減らすことです。
年間返済額を減らす方法は、いくつかあります。具体的には、こちらです↓
- 手元の預金で返済
- 折り返し融資
- 資産売却・私財投入
- 短期継続融資
- 一本化
これらについて、くわしくはこちらの記事もご参考にどうぞ↓
いずれにせよ、まずは「簡易キャッシュフロー<年間返済額」になっていないかを確認しましょう。そのうえで、なってしまっていれば、なんらかのカタチで解消をはかることです。
ちなみに、借りたおカネを使わずに手元に置いているという場合。借りたおカネを返しているだけですから、その分の年間返済額を気にする必要はありません。
たとえば、税引後利益が 550万円、年間返済額が 700万円の会社があるとします。すると、「簡易キャッシュフロー 550万円<年間返済額 700万円」ですからマズいように見えますが。
もし、年間返済額のうち 200万円は、手元のおカネを増やすために借りた 1,000万円の借入によるものであれば、1,000万円のなかから返済をすればよいだけです。
なので、この場合には、「税引後利益 550万円>年間返済額 700万円ー200万円」と考えられれますから、とくに問題はありません。
まとめ
会社が銀行融資を受けるときに目標にしたいこと、についてお話をしてきました。融資を受けられたらゴール、ではありません。銀行融資は借りてからが本番だ、と考えておきましょう。
- 預金残高=平均月商6ヶ月分
- プロパー融資
- 簡易キャッシュフロー>年間返済額