黒字倒産が起きるのはなぜなのか? 粉飾決算のほかにも、5つの原因があるので気をつけましょう。という、お話をしていきます。
黒字倒産の原因いろいろ。
黒字倒産、なんとも不気味な言葉です。黒字、つまり、利益が出ているのにもかかわらず、倒産をしてしまう… 知らぬ人からすれば、「そんなことあるの?」というハナシではありますが。
あるんです。その典型として言われる原因が「粉飾決算」になります。
ほんとうは利益が出ていないのに、利益が出ているかのように決算書を「加工」して黒字にする。ところが、資金繰りのほうは火の車で、見かけ上は黒字を出しながらも倒産してしまう…
倒産する会社の半分は黒字、とも言われますから。実は、粉飾決算をしている会社が多いのではないか? と、勘ぐりたくもなるものです。まぁ、それはそれとして。
「ウチの会社は、粉飾なんてしないからだいじょうぶ」と、思われたのであれば。それはちょっと違います。粉飾決算は、黒字倒産の原因の1つに過ぎず。ほかにも原因はあるからです。
というわけで。気がついたら黒字倒産… などという憂き目にあわないように。黒字倒産が起きる「原因」を確認しておきましょう。ぜんぶで5つ、こちらになります↓
- 売上が急激に伸び過ぎ
- 無借金経営をしている
- 売上不振で在庫が多い
- 売上代金の回収不能
- 投資を急ぎ過ぎる
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
黒字倒産が起きる原因(粉飾決算以外)
1.売上が急激に伸び過ぎ
売上が伸びると、基本的には利益も伸びて黒字になります(利益率が下がらない限りは)。そのいっぽうで、気をつけなければいけないのが「資金繰り」です。
この点で、よく言われるのが「利益とおカネは別モノ」というハナシ。利益が増えたからといって、おカネも増えるとは限らない、との意味です。それどころか、おカネが減ることさえある。
売上が増えると、ふつうは「売掛金(売上代金の未回収)」や「棚卸資産(在庫)」の金額も増えます。売掛金も棚卸資産も、「現金化が保留されている」というのが共通点です。
この状況で、仕入代金や経費の支払いが先行すれば、資金繰りはたちまち厳しいものになります。したがって、売上が伸びるときには「先に資金を手当てしておく」のが財務のセオリーです。
売上の伸びが急であればあるほど、資金繰りは厳しくなるのにもかかわらず、その「資金手当」ができずにいる会社は少なくありません。「利益が出ているので、おカネもあるはずだ」と勘違いをしているからですね。
すると、黒字倒産に近づいてしまいますから。売上が伸びるときには、先に資金を手当てする。具体的には、「増加運転資金」として銀行から融資を受ける。伸びてからでは遅いので、伸びる前から手当てができるようにしましょう↓
2.無借金経営をしている
無借金経営を目指している! という社長もいるでしょう。ですが、黒字倒産には気をつけなければいけません。無借金ではあっても、おカネは全然ない… という会社もあるからです。
すると、ちょっとした損失や出費でも、資金ショートを起こしやすくなります。「そのときになったら、銀行からおカネを借りればいい」と考えているかもしれませんが。
それは、ちょっと「甘い」です。銀行には、「無借金の会社を警戒する」という一面があります。借金がないのは、借金をしたくてもできない会社なのではないか? 借金をできるだけの「信用」がない会社なのではないか? という見方です。
実際に、有名企業でも、無借金が原因(と推察される状況)で、銀行からの融資が受けられずに、資金繰り破たんを起こしてしまった例がありました。
無借金経営自体は、けして悪いものではありませんが。おカネもないのに無借金経営をしようとすると、黒字倒産の可能性があることは理解しておきましょう。
また、無借金経営まではしていなくても、ちょっとおカネがあるとすぐに「繰上返済」をしてしまう。これも、似たようなことです。やはり、資金ショートを起こしやすく、黒字倒産の原因になりえます。
3.売上不振で在庫が多い
決算書を見たときに、「棚卸資産」の金額が多い。つまり、在庫が多いというのも、黒字倒産の原因のひとつになります。
在庫は、売れればおカネになりますが、売れなければおカネになりません。いっぽうで、その仕入にはおカネがかかっているのですから、売れなければ資金繰りに悪影響なのはあきらかです。
売上不振の会社では、この状況が起こりやすくなります。「売れるはずだ」と仕入れた商品が思いのほか売れず、倉庫に山積み… という状況です。
仕入をしたとしても、売れるまでのあいだは、会計上、費用にはなりません。売れたときにはじめて、仕入の金額が費用になるしくみです。よって、決算書は黒字、でも在庫がたくさん、資金繰りは厳しい… ということは起こりえます。
対策はいくつかありますが。あたりまえのことで言えば、販売予測をきちんとしたうえで仕入をすること。それができれば苦労はしないわけですが。
これに対して、意外とできていないのが、「そもそも在庫を持たない」ようにすることでしょう。在庫を持つ商売をする以上、在庫リスクをゼロにすることはできません。だったら、在庫を持たない商売(部分的にでも)を考える、というのが有効です。
また、いざ不良在庫を抱えてしまったのであれば、はやく見切りをつけて、二束三文だとしても「現金化」をすることも重要になります。不良在庫を持ち続けることにメリットはありません。
4.売上代金の回収不能
売上が増えれば、利益が増えます。ところが、その売上の代金を回収できないとしたら… おカネは増えません。前述したとおり、「利益とおカネは別モノ」なのです。
この点で、売上代金(売掛金)の管理が甘い会社があります。期限に入金されているかどうかの確認もしない、入金されていなくても催促をしないような会社です。
こういう会社の「未回収」は、どんどんとたまりがちになる傾向があります。未回収が増えれば増えるほど、資金繰りは悪くなる。いっぽうで、売り上げていさえすれば、利益は増えていきます。
黒字倒産まっしぐら、です。新型コロナをへて、資金繰りが厳しい売上先もあるでしょう。だからこそ、売上代金の管理はしっかりとおこなう必要があります↓
売上代金の管理が甘い会社は、銀行が見ればわかります。すると、融資が受けづらくなるのも問題です。入金はない、融資も受けられないでは、ますます資金繰りは悪くなります。
売上を増やすのもだいじなことですが、入金を増やすのもセットであることを忘れないようにしましょう。
5.投資を急ぎ過ぎる
先行投資、という言葉があります。文字どおり、売上に先行して投資をすることです。この結果、なにが起きるかは、もう想像がつくでしょう。
具体的には、立て続けに新規事業の立ち上げに投資をする(おカネを使う)、立て続けに新店舗出店に投資をする(おカネを使う)、といったケースがあります。
いずれも、売上が増えるまでには時間がかかることが多く、それまでのあいだは、入金よりも支払が先行する点には気をつけなければいけません。
会社の持続・成長にあたって、「投資」をするのはだいじなことです。が、投資を急ぎすぎれば、資金繰りはとても厳しいものになります。意思決定が速く、フットワークが軽い社長の会社に起こりがちな状況です。
投資をするのであれば、そのペースに気をつける(段階をふんで、少しずつ進めていく)。あるいは、投資をする前に、じゅうぶんな資金調達(≒銀行融資)をすませておくようにしましょう。
まとめ
黒字倒産が起きるのはなぜなのか? 粉飾決算のほかにも、5つの原因があるので気をつけましょう。という、お話をしてきました。原因を知り、そのうえで「対策」を講じましょう。
- 売上が急激に伸び過ぎ
- 無借金経営をしている
- 売上不振で在庫が多い
- 売上代金の回収不能
- 投資を急ぎ過ぎる