銀行から融資を断られる原因は、いろいろありますが。そのひとつが「取引先」です。というわけで、銀行が自社の取引先を調べることもある理由と、そのとき会社がとるべき対応についてお話をしていきます。
取引先のせい、ということもある。
融資を受けようとするときに、銀行から自社のことを調べられるのはあたりまえとして。自社の取引先についても調べられることがある、というのはごぞんじでしょうか。
結果として、取引先が原因で融資が受けられなくなる、受けにくくなることもありえます。と、銀行が教えてくれればまだよいですが、具体的に教えてはくれず、ただただ融資を断られるケースもあるでしょう。
すると、会社はワケがわからず困ってしまいます。ですから、銀行から融資を断られる理由のひとつとして、「取引先」があることを理解しておきましょう。
そこで本記事では、銀行が自社の取引先を調べることもある理由についてお話をしていきます。具体的には、次のとおりです↓
- アヤしい会社ではないか、を確認するため
- 業績に問題はないか、を確認するため
- 関連会社取引はないか、を確認するため
それではこのあと、順番に見ていきましょう。それぞれ「理由」だけではなく、そのときとるべき会社の「対応」についてもお話をしていきます。
銀行が自社の取引先を調べることもある理由とその対応
アヤしい会社ではないか
世の中には、アヤしい会社というものがあります。いわゆる「反社(反社会的勢力)」に関わる会社や、違法な商売をいとなむ会社など。
銀行は、こういった会社に対して直接はもちろん、間接的にもおカネを貸すわけにはいきません。法律や倫理、道徳面に加えて、銀行は「社会の公器」という立場もあるからです。
もしも、融資先の取引先がアヤしい会社となれば、銀行は融資先を通じて、間接的にアヤしい会社におカネを貸してしまう可能性があります。あるいは、融資先を支援することが、間接的にアヤしい会社の商売を助けることにもなりかねません。
ゆえに、銀行は「自社の取引先」を調べることもあるわけです。自社の「商売(ビジネスモデル)」がわかりにくい場合はとくに、でしょう。モノやおカネの流れが「不自然(一般的ではない)」ことから、取引先について調べられた事例があります。
このとき、銀行から求められたのが、「取引先」の会社案内や商品パンフレット、決算書のコピーなどでした。「自社」のではありません、あくまで、自社の「取引先」のものです。
銀行は、取引先のホームページを確認したものの、住所や代表者名、ごくごくカンタンな事業内容くらいしか記載がなく。会社の実態、事業の実態がつかめなかったことから、自社に対して情報提供を求めてきたわけです。
ところが、取引先では会社案内や商品パンフレットもつくっておらず。また、自社と取引先(売上先)とのチカラ関係から、決算書のコピーを求めることもできず。結局、その会社は融資が受けられず… という相談事例がありました。
こういったケースで、会社はどうすればよいのか?
まずは、銀行に対して「商流」をきちんと説明することです。商流、つまり「モノやおカネの流れ」を、絵に描いて説明するようにしましょう。これを「商流図」と呼びます。
言葉で説明するよりも格段にわかりやすく、銀行員としてもありがたい情報です。商流は、決算書を眺めているだけではわからないことでもありますから、会社は積極的に作成・提示するのがおすすめです。
商流図について、書式などくわしいことは別の記事にまとめました↓
また、前述したとおり、銀行は取引先のホームページを見ることもあります。自社でも、定期的に取引先のホームページの内容を確認して、銀行に情報提供できるようにしておきましょう。
あわせて、会社案内や商品パンフレットなどがあれば、それらをもらっておくのもよいでしょう。
業績に問題はないか
銀行は、融資先の取引先について、その業績に問題がないかも気にしています。
自社の売上先であれば、業績に問題があると、いずれ入金が滞るかもしれません。すると、自社の資金繰りが悪くなって、借入の返済ができなくなってしまうかもしれない… と、銀行は考えるからです。
また、自社の仕入先であれば、業績に問題があってつぶれてしまうようなことがあると、仕入ができなくなって、自社の売上に影響してしまうかもしれません。すると、やはり資金繰りが悪くなって、借入の返済ができなくなってしまうかもしれない… と、銀行は考えます。
そこで、とくに大口の売上先や仕入先については、銀行はその業績を調べているものです。
それらの売上先や仕入先が、その銀行の融資先であれば調べるのは造作もありません。が、融資先でない場合にはどうするのか? おもなところでは、「信用調査情報の確認」が挙げられます。
具体的には、帝国データバンクが提供している信用調査情報です。これを利用することで、財務情報(決算書の数字)に加えて、非財務情報(経営者の資質、社員や取引先、取引銀行のようすなど)を確認することができます。
また、それらの情報にもとづく「評点」も、銀行にとっての参考情報です。評点は、100点を満点とする評価指標であり、50点を超えるようであれば合格点といえます。いっぽうで、40点台前半以下は問題あり、といえるでしょう。
評点をはじめ、帝国データバンクが提供する信用調査情報は、自社でも確認をすることができます(有料)。そう考えると、本来、自社こそ確認をしておくべき情報です。
大口の売上先や仕入先のを中心に、定期的に信用調査情報を確認して、問題の早期発見につとめている。そういったことができる融資先に対して、銀行は安心をするものです。
そこで、売上先や仕入先一覧表をつくり、情報のひとつとして、帝国データバンクの評点を掲載しておくとよいでしょう。その一覧表の情報を定期的に更新したうえで、銀行に提示していくのがおすすめです。
なお、売上先や仕入先一覧表には、「取引シェア」も記載しましょう。売上先であれば、売上全体から見て、何%くらいの取引量(金額)か? ということです。取引シェアが高いほど、なにか問題があったときに受ける影響は多いのですから、ふだんから注意深く、ようすを確認しておく必要があります。
関連会社取引はないか
銀行は、融資先の関連会社取引にも注目をしています。融資先の子会社や、同一社長の会社をはじめとした、融資先との関連性が高い会社との取引です。
なぜ、そういった取引に注目をするのか? それは、融資先に貸したおカネが、関連会社に流れてしまう可能性があるからです。たとえば親会社の業績が悪く、親会社で融資が受けられなくなると、業績が良い子会社のほうで融資を受けて、そのおカネを親会社に貸し付けよう、といったことはありえます。
また、直接的なおカネのやりとりではなくとも、商品の売買といった取引を通じて、結果的におカネのやりとりをすることもできるでしょう。
だから、銀行は関連会社取引に注目をしているのです。銀行は融資先におカネを貸すのであって、関連会社におカネを貸すのではありません。いかなるカタチであれ、融資先に貸したおカネが関連会社に流れるのでは困ります。
そこで、自社に関連会社がある場合には、積極的に、関連会社の情報を銀行へ提供していきましょう。関連会社の決算書を提示するのは当然として(銀行からも求められますが)、関連会社との取引(商品の売買、資金のやりとりなど)があれば、その内容をまとめた書類も提示します。
たとえば、親会社から子会社への売上があるのなら、その売上はいくらになるのか。この取引が「合理的」であればかまいませんが、他社への販売価格に比べて高すぎる・安すぎるといったことだと、銀行としては融資がしづらくなるところです。
また、親会社から子会社へのおカネの貸し付けといった、資金取引についても情報開示しましょう。ただし、対銀行ということで言えば、関連会社間の資金取引は好ましくありません。繰り返しになりますが、融資先に貸したはずのおカネが、関連会社に流れる可能性があると見られるからです。
このあたりもふまえて、少なくとも決算時点では、関連会社間の貸し・借りはゼロにしておくのがよいでしょう。つまり、決算書に、関連会社への貸付金や関連会社からの借入金が載らないようにする、ということです。
もし、どうしても貸し・借りが残ってしまうのであれば、「今後の貸し・借りはしない」ということを銀行に説明するようにしましょう。その根拠として、関連会社それぞれの資金繰り予定表を提示します。
資金繰り予定表のなかで、関連会社間の貸し・借りがなくても、資金繰りが回ることを説明できれば、一定の納得をえられるはずです。
まとめ
銀行から融資を断られる原因は、いろいろありますが。そのひとつが「取引先」です。取引先が原因で融資が受けられなくなる、受けにくくなることもありえます。
ですから、銀行が自社の取引先を調べることもある理由と、そのとき会社がとるべき対応とを押さえておくようにしましょう。
- アヤしい会社ではないか、を確認するため
- 業績に問題はないか、を確認するため
- 関連会社取引はないか、を確認するため