リスケの失敗とは、はじめてのリスケに失敗をすることではありません。はじめてのリスケがうまくいったとして、その後のリスケが継続できないことが、「ほんとう」のリスケの失敗です。
では、リスケが継続できなくなるのはどんなケースなのか? について、お話をしていきます。
ほんとうの失敗とは?
会社の銀行融資におけるリスケジュール(以下、リスケ)について。ちなみに、リスケとは「当初の融資条件を変更する」ことを言います。おもには、銀行に「毎月の返済額を減額・猶予してもらう」のがリスケです。
そのリスケをするのはカンタンだ、というハナシがあります。事実、中小企業におけるリスケの実行率(申込みに対する実行割合)は 99%です(金融庁公表『貸付条件の変更等の状況について』より)。リスケを断られることを「失敗」というのであれば、失敗をすることのほうが難しい状況だと言ってもよいでしょう。
ところが、リスケの失敗とは、リスケができないことではありません。はじめてのリスケがうまくいったとして、その後のリスケが継続できないこと。これが、「ほんとう」のリスケの失敗です。
会社にとって、リスケがゴールではありません。会社が目指すべきは、改善であり再起です。それまでのあいだは、リスケの継続が必要になることもあるでしょう。通常、リスケは「ひとまず6ヶ月〜1年」を対象に実行されるものであり、ずっと実行を約束されるものではありません。
その後もリスケを継続できるかどうかは、会社の状況・会社の対応を見た「銀行の判断しだい」です。では、リスケが継続できなくなるのはどんなケースなのか? おもなところでは、こちらです↓
- リスケのタイミングが遅すぎた
- 計画が無い・計画がずさん
- リスケのルールに違反した
これらについて、このあと確認をしていきましょう。
リスケが継続できなくなるケース
リスケのタイミングが遅すぎた
はじめてのリスケがうまくいった、つまり、毎月の返済額を減額・猶予してもらうことができたとしても、リスケが継続できなくなるケースがあります。
それは、「リスケのタイミングが遅すぎた」というケースです。もしも、リスケによって毎月の返済額をひとまずゼロにできたとしても、おカネの支出が完全に止まるわけではありません。言うまでもなく、仕入代金や経費の支払いなどがあるからです。
したがって、リスケをした時点で「手元のおカネ(預金残高)」が少ないと、リスケをしても、その後の資金繰りがもたなかった… ということはありえます。これが、「リスケのタイミングが遅すぎた」ケースです。
だれだってリスケはしたくないものであり、タイミングが遅くなる傾向があります。タイミングが遅すぎれば、次のリスケの継続を待つまでもなく、会社はつぶれてしまうのですから、気をつけなければいけません。
対策としては、ただひとつ。リスケのタイミングを見誤らないことです。端的に言えば、「手元のおカネ(預金残高)」があるうちにリスケをする。少なくとも、月の固定費の1〜2ヶ月分はあったほうがよいでしょう。
そのうえで、次の2つの条件両方を満たすときが、リスケを検討すべきタイミングです↓
- 税引後利益 + 減価償却費 < 年間返済額
- 銀行が融資に応じてくれない。あるいは、応じてくれても少額であり、すぐに資金ショートが見込まれる
まず、税引後利益の改善は大前提です。改善してもなお、「税引後利益 + 減価償却費 < 年間返済額」となるようならリスケ、という順序になります。
また、年間返済額の圧縮も前提のひとつです。「借り換え」や「一本化」によって返済額の圧縮をはかります。それでもなお、「税引後利益 + 減価償却費 < 年間返済額」となるようならリスケ、という順序です。
計画が無い・計画がずさん
通常、リスケは「ひとまず6ヶ月〜1年」を対象に実行される、ということはすでにお話をしました。では、その後もリスケを継続できるかどうか? 目安のひとつになるのが、「計画の達成率」です。
リスケをしなければいけないほど状況が悪い会社は、「経営改善計画書」を策定するのが当然。そこで、本来は「経営改善計画書」の内容をもとに、銀行はリスケの可否を検討します。
が、はじめてのリスケにあたっては、「急ぎ」という事情もあって、必ずしも計画書がなくてもリスケが実行されるケースはあるものです。これに安堵している会社もありますが、問題が起きるのはこのあと。リスケの継続が必要になるタイミングです。
ひとまずの6ヶ月〜1年を経過したあと、「まだリスケが必要(返済額の減額や猶予が必要)だ」というときには、リスケの可否を銀行は検討することになります。
ここでの検討材料として重要なのが、「経営改善計画書」です。今後、リスケを解消できるまでの「道すじ」は立っているのか? その「道すじ」を可視化するツールが、計画書です。計画書が無ければ、「口先だけ」になってしまいます。銀行としては、リスケの継続を認めづらくなるところです。
また、経営改善計画書があったとしても、その内容が「ずさん」であれば、当然ながらリスケの継続は難しくなります。ここでの目安は、「計画の達成率8割以上」です。計画に対して、実績が8割以上かどうか。8割未満は「計画がずさんだった」と見られることになります。
これに関連して、計画の達成率を把握することができない会社も問題です。たとえば、毎月の試算表をつくっていないために、実績の数字を把握できていないとか。行動計画に挙げた行動の進捗管理をしていないとか(計画つくりっぱなし状態)。
こういった、計画が無い・計画がずさんな状況だと、リスケの継続ができないことが多くなります。「リスケの実行」と、「計画の策定・管理運用」はセットだと考えておきましょう。
リスケのルールに違反した
リスケの実行にあたっては、ひとつ大事なルールがあります。それは、「全銀行一律同条件」というルールです。文字どおり、すべての銀行が同じ条件でリスケをしましょう、というルールになります。
リスケをしている会社が、このルールに違反をすると、リスケの継続ができなくなることがあるので注意が必要です。
たとえば、A銀行、B銀行、C銀行、3つの銀行と取引をしている会社があったとして。A銀行だけは返済を続けて、B銀行とC銀行の返済はゼロにしてもらう。これはルール違反にあたります。B銀行、C銀行からすれば「不公平」なハナシですから当然です。
同じように、A銀行だけは金利の引上げに応じる。これもいけません。リスケにあたっては、銀行のほうから「リスケに応じる代わりに、金利を上げてほしい」といった要求がありえます。ですが、「ルールに反する」として断るようにしましょう。でなければ、B銀行やC銀行がリスケに応じない… ということになってしまいます。
さらに、追加の担保を要求されたり、預金の積み立てを要求されたり、ということもあるものです。これを特定の銀行に対して応じてしまうと、やはり、ルール違反となります。
全銀行一律同条件のルールは、はじめてリスケをするときだけではなく、リスケを継続するときにも適用されるものであることを理解しておきましょう。うっかり違反をすれば、リスケの継続ができない… ということになりかねません。
なお、借入残高が少なくなった銀行からは、「まとめて返済してもらえませんか?」と言われることがあります。これに対して、「金額も少ないから、まぁいっか」と返済をしてしまうのもいけません。やはり、全銀行一律同条件に違反することになるからです。
まとめ
リスケの失敗とは、はじめてのリスケに失敗をすることではありません。はじめてのリスケがうまくいったとして、その後のリスケが継続できないことが、「ほんとう」のリスケの失敗です。
では、リスケが継続できなくなるのはどんなケースなのか? これを押さえておくようにしましょう。会社にとって、リスケがゴールではありません。ひとまずのゴールは、改善・再起であり、それまではリスケを継続してもらう必要があります。
- リスケのタイミングが遅すぎた
- 計画が無い・計画がずさん
- リスケのルールに違反した