いまは低金利の時代、もはや銀行相手に借入金利の引き下げを求めるものでもない。とのハナシもありますが、必ずしもそうとは言えない会社があるのも事実です。借入金利が高くて、支払利息が多い会社の問題点と悪循環について、お話をしていきます。
もうすでにじゅうぶん低金利、とは限らない。
きょうは、2022年4月13日。ごぞんじのとおり、いまは「低金利」の時代、「低金利」の世の中です。多くの会社では、銀行借入の金利はかつてないほどに低く、利息支払いの負担も小さくなっているものと推測します。
が、それでもなかには、金利が低いとはいえない、利息支払いの負担も小さくはない、という会社があるのも事実です。金利が高止まりしている理由は、おもに2つあります。「自社の業績が悪いから」、あるいは、「銀行に金利の交渉をしていなから」です。
それはそれとして、本記事では、「低金利の時代なのに、借入金利が高くて支払利息が多い会社の問題点と悪循環」についてお話をしてみます。
もうすでにじゅうぶん低金利なのだから、もはや銀行相手に金利引き下げを求めるものでもない。とのハナシを耳にすることもありますが、必ずしもそうとは言えない。金利の引き下げをはからねばいけない会社もあります。金利が2%よりも高い会社はとくに、です。
悪循環を断ち切るためにどうするかもふまえて、このあと確認をしていきましょう。
借入金利が高くて支払利息が多い会社の問題点と悪循環
銀行は売上高との対比で見ている
会社の決算書(損益計算書)には、「支払利息」という勘定科目があります。そこに記載されている金額が、会社が1年のあいだに支払った利息の金額です。
その支払利息について、銀行が確認をしている「指標」があります。売上高支払利息率、という指標です。算式で言うと「支払利息 ÷ 売上高」、つまり、売上高に対する支払利息の割合はどれくらいなのかをあらわしています。
結論として、売上高支払利息率が1%を超えると、銀行は「支払利息が多いなぁ」と考えるものです。実際に、売上高支払利息率が1%を超えると、債務不履行を起こす会社が増えるとのデータもあります。銀行は、それもわかっているわけです。
では、支払利息が売上高に対して多くなると、どうして債務不履行を起こすのか? 債務不履行を起こさないまでも、銀行から「支払利息が多い」と問題視されるのはなぜなのか? このあと考えてみましょう。
返済原資が少ないと借入が減らない
支払利息の金額が増えると、関連して減る金額があります。ずばり、「経常利益」です。損益計算書を見ると、途中に「営業利益(売上高 ー 売上原価 ー 販売管理費)」があり、そこから支払利息を差し引いた金額が「経常利益」になります。
よって、支払利息が増えるほど、経常利益は少なくなるのです。その経常利益が、銀行借入を返済するときの「原資」になります。経常利益が少なくなるとは、返済原資が少なくなるということ。銀行にとっては困った状態です。
だったら、売上高支払利息率をわざわざ計算せずとも、はじめっから経常利益を見ればいいだろう? と、おもわれるかもしれませんが。営業利益と経常利益とのあいだに、「雑収入」という勘定科目の金額を増やすことで、経常利益をふくらまそうとする会社があります。
そういった影響をとりのぞくのに、売上高支払利息率は役に立つ指標です。
それはそれとして、支払利息が増えるほど、経常利益が少なくなる。経常利益が少なくなるということは、返済原資が少なくなるということ。結果として、借入の返済が進まない… という問題が起きることを理解しておきましょう。
借入が増えると利息も増える
さて、借入の返済が進まないとどうなるか? 借入残高が減らないわけですから、金利が変わらないという前提であれば、利息の支払いも多いままになります。
その状態であっても、資金繰りがまわればまだよいのですが。そもそも、返済原資が少ないところで、ちょっと業績が悪くなったような場合はどうでしょう? さらに経常利益が減りますから、返済原資が少なくなることで、資金繰りがいっそう厳しくなります。
そこでやむをえずなされるのが、「返済をするための借入」です。業績が悪くて銀行が貸してくれるのか? 貸さずに融資先がつぶれてしまうのも困るので、意外と借りられてしまったりもするものです。
では、返済が進まないうえに借入をすればどうなるか? 当然、これまでよりも借入が増えるので、支払う利息も増えることになります。業績が悪いということは売上も減っているでしょうから、売上高支払利息率はさらに悪化する… という悪循環です。
ちなみに、年間売上高が1億円の会社が、金利2%で 5,000万円の借入をすると、売上高支払利息率は1%になります。「借入金額が年間売上高の半分を超えると危険」との見方もあるので、売上高支払利息率が1%というのは、やっぱり危ない水準なんだとわかるところです。
業績が悪化すれば金利は上がる
借入が増えると利息も増える、という話をしました。このとき、返済原資としての経常利益が減るわけですから、銀行としては「回収不能リスク」が高まることを感じます。
その結果、なにが起きるか? 借入金利の引き上げです。回収不能リスクが高くなった分、金利で回収をはかろうということになります。すると、会社が支払う利息はますます増えることとなり、売上高支払利息率は、さらに高まることになる… 悪循環に次ぐ悪循環です。
ちなみに、これ以上の借入をしないとしても、金利が高まる可能性はあります。業績が悪すぎて、これ以上の融資を受けられない場合、1つの手段が「リスケジュール(返済の減額・猶予)」です。そのリスケジュールを銀行が容認することと引き換えに、金利の引上げを求められることもあります。こうなると、リスケジュールから抜け出すのも困難なほどの悪循環です。
悪循環を断ち切るためにどうするか?
ここまで、借入金利が高くて支払利息が多い会社の問題点と悪循環について見てきました。このような悪循環を断ち切るためにはどうしたらよいのか?
はっきり言って、重度の悪循環に陥ってしまうと、断ち切ることはかなり難しいと言ってよいでしょう。ですから、いかに早い段階で悪循環を断ち切るか、そもそも悪循環に陥る前に対応することが大切になります。
では、会社はどのような対応をすればよいのか? まずは、業績を良くすること。これが第一です。そのうえで、業績が良いときに、金利を引き下げられるように銀行と交渉をすることです。
業績は山あり谷あり、という会社は少なくないでしょう。だからこそ、業績が良いときの対応が重要になります。にもかかわらず、業績が良いときには対応をせず、業績が悪くなってからあわてて対応をしようとする会社は少なくありません。
が、それでは遅すぎます。業績が悪くなってからでは、銀行は、回収に動くばかりであり、会社にとって良い融資条件を引き出すことはできないからです。
それから、もうひとつ。金利は交渉しなければ下がらない、ということを覚えておきましょう。銀行の商売は、おカネを貸して利息収入を増やすこと。できるだけ利息収入を増やすために、金利を高くしようとするのはあたりまえです。
会社がなにもせず黙っていれば、金利は勝手に下がるものではありません。では、具体的に「なにを材料にして交渉をすればよいのか?」については、こちらの記事もどうぞ↓
まとめ
いまは低金利の時代、もはや銀行相手に借入金利の引き下げを求めるものでもない。とのハナシもありますが、必ずしもそうとは言えない会社があるのも事実です。
世の中が低金利であるにもかかわらず、借入金利が高くて、支払利息が多い会社の問題点と悪循環について理解をしておきましょう。そのうえで、自社の金利が高いようなら、悪循環は断ち切らねばなりません。