会社の「利益」は、過去の利益、未来の利益、現在の利益、の3つに分けられます。これらの利益を銀行はどのように見ているのか? どの利益を重視しているのか? というお話です。
利益と言っても、3つある。
融資を受ける会社が、銀行から見られているものとして「利益」があります。利益とは、端的に言えば「収入 − 費用」のこと。その利益については、「過去か、未来か、現在か」という見方があります。
つまり、実績としての「過去の利益」なのか、計画や予測としての「未来の利益」なのか、それとも、いま時点における「現在の利益」なのか。ひとくちに「利益」と言っても、3つあるのです。
では、それら3つの利益を、銀行はどのように見ているのか? 3つある利益のうち、銀行はどの利益を重視しているのか? 銀行の見方を知ることは、融資の受けやすさにつながるものです。
というわけで、3つの利益に対する銀行の見方を押さえておきましょう。具体的には、次のようなお話をしていきます ↓
- 本来見るべきは未来の利益
- それでも見るのは過去の利益
- 現在の利益も過去しだい
それではこのあと、順番に見ていきましょう。
本来見るべきは未来の利益
そもそも銀行は、会社の「利益」を、「貸したおカネの返済原資」だと見ています。
利益とは、「収入 − 費用」であることは、すでに話をしました。このうち、「費用」に「返済」は含まれません。返済とは費用ではなく、返済は利益のなかから、ということになります。
ここは若干、会計的なハナシでもあり、「よくわからない…」ようであれば、こちらの記事も参考にどうぞ ↓
それはそれとして、返済原資が利益なのだとすれば、本来見るべき利益は「未来の利益」だとわかるでしょう。なぜなら、返済という行為は未来にあるからです。
銀行は融資審査をするにあたって、「はたして、この会社は貸したおカネを返せるだろうか?」と考えます。これはまさに、「未来」に焦点をあてた見方です。では、その「未来の利益」はどこを見ればわかるのか?
書類としては、「経営計画書」です。会社が、未来の利益を予測・計画して、数字に落とし込んだ書類が経営計画書になります。
たとえば、いま、返済期間5年、1,000万円の融資を銀行が検討しているとして。毎年の返済額は、200万円です。このとき、経営計画書に記載された「未来の利益(1年後の利益)」が 200万円以上あれば、返済原資が足りているということになります。
では銀行が、会社がつくった経営計画書を 100%信用して融資をするかといえば、けしてそんなことはありません。むしろ、経営計画書には疑いを持っていると言ってよいでしょう。言うまでもなく、計画は「いくらでも好きにつくれる」ものだからです。
事実、「絵に描いた餅」と言われる経営計画書は少なくありません。これまでの実績からはありえないほど右肩上がりの売上などは、その典型です。そんな売上にもとづく未来の利益を、銀行が疑うのは当然でしょう。
もっとも、絵に描いた餅とまでは言えないにしても、経営計画書にしるされた未来が実現するかどうかはわかりません。未来のことは、だれにもわからないのです。融資審査にあたって、銀行が本来見るべきは「未来の利益」ではあるものの、信じるに足る情報はない… ということになります。
また、経営計画書をつくっていない会社も少なくありません。だとすれば、未来の利益に関する情報はそもそもない、とも言える状況です。では、どうするか?
それでも見るのは過去の利益
未来の利益が信じられない、あるいは、未来の利益に関する情報がない以上、銀行はほかの利益に目を向けるほかありません。それが、「過去の利益」。具体的に言うと、「決算書」に記載された利益です。
決算書は、過去の数字をまとめた書類であり、そこに記載された利益は、まさに過去をあらわしています。決算書は、会社が1年に1度、作成を義務付けられた書類です。また、会計や税法といったルールにもとづいて作成する必要があります。
そういう意味では、信頼のおける書類だと言えるでしょう。そこで銀行は、「粉飾決算」には注意を払ったうえで、決算書に記載された利益を重視して、融資審査をしています。
よって、決算書が赤字の会社の社長が「これからは、売上も増えて利益も出ます!」と言うのは、銀行から見ると、説得力に欠けたハナシであることを覚えておきましょう。
銀行から見た「未来」は、「現在」の延長線上にあります。現在がよければ、未来もよいだろう。現在が悪ければ、未来も悪いだろう。あるいは、そうカンタンにはよくならないだろう。これが、銀行の基本的な見方です。
うがった見方におもえるかもしれませんが、そうではなく。銀行は、慎重かつ保守的なのです。貸したおカネを「回収する」のが銀行の商売ですから、当然の見方でしょう。
だとすれば、社長がすべきは「決算書の黒字にこだわること」だとわかるはずです。黒字が大きくなると納税額が増えるため、黒字を少なくしようと考える社長がいます。が、それは銀行融資を行けにくくする考え方だと、理解しておかなければいけません。
繰り返しになりますが、返済原資として本来見るべきは「未来の利益」。それでも、実際に銀行が見ているのは「過去の利益」です。
とはいえ、銀行が「未来の利益(経営計画書)」をまったく見ていない、というわけではありません。融資審査をするにあたって、ひとつの情報としては見ています。ただし、「過去の利益(決算書)」から見て、未来の利益があまりに「かけ離れている」と信用はされません。
融資審査の「材料」として、銀行に経営計画書を提示するのは有効ですが、絵に描いた餅が過ぎると効果もなくなってしまいます。
現在の利益も過去しだい
ここまで、「未来の利益(経営計画書)」と「過去の利益(決算書)」について見てきました。もうひとつ、「現在の利益」が残っています。具体的には、「試算表」に記載された利益です。
もっとも、試算表もまた、いまこの瞬間をとらえた情報ではありませんから。厳密には、「過去の利益」に分類されることになるでしょう。ですが、1年に1度つくる決算書よりも、ひと月に1度つくる試算表のほうが、より現在に近いとは言えるはずです。
実際に銀行も、「足元」の状況を把握するために、会社に対して試算表の提示を求めます。では、その「現在の利益」を、銀行はどのように見ているのか?
過去しだい、だと見ています。つまり、決算書しだいです。この点で、直前の決算書が赤字だった場合には、その後の試算表をネガティブに見られます。たとえば、試算表では利益が出ていても、「ほんとうに黒字なのか? ほんとうは、引き続き赤字なのではないか?」という見方です。
試算表は、文字どおり「試算」であり、いうなれば「仮」の書類であり、あとから修正されてしまうことがあります。結果、試算表では黒字だったのに、決算書では赤字だった… という会社はあるものです。
銀行は、そういった会社をいくつも見ていますから、試算表を決算書ほどには信用していません。
ならば、直前の決算書が黒字ならいいのか? というと、けしてそういうわけでもなく。「決算では黒字だったけど、そんなに調子は続かないのでは? これから赤字になるのではないか?」と保守的に見るのが銀行です。
もちろん、決算書が赤字よりも黒字のほうがよいのは間違いありませんが。いずれにしても、現在の利益は疑いをもたれて、赤字を心配されることは覚えておくとよいでしょう。そのうえで、過去の利益(決算書)をもとに、現在の利益(試算表)について、銀行へ説明をすることが大切です。
過去の利益が黒字であれば、黒字の「原因」をあきらかにして、それがいまなお続いていることを説明できれば、試算表の利益に説得力が増すでしょう。
いっぽうで、過去の利益が赤字であれば、赤字の「原因」をあきらかにして、問題の解決に取り組んでいること(あるいは問題が解決したこと)を説明できれば、やはり、試算表の利益に説得力が増すはずです。
まとめ
会社の「利益」は、過去の利益、未来の利益、現在の利益、の3つに分けられます。これらの利益を銀行はどのように見ているのか? どの利益を重視しているのか? というお話をしてきました。
それぞれの利益に、それぞれの重要性はありますが。いちばんは、過去の利益が重視されること。未来の利益、現在の利益を銀行がどう見るかは、過去の利益しだいであることを覚えておきましょう。つまり、決算書がだいじだ、ということです。
- 本来見るべきは未来の利益
- それでも見るのは過去の利益
- 現在の利益も過去しだい