借入金返済が経費にならない理由&経費にならないからこそ利益必須である理由

借入金返済が経費にならない理由&経費にならないからこそ利益必須である理由

借入金返済は経費になるのか? 結論、「元金の返済は経費にならない」です。

その理由についてのお話とあわせて、経費にならないからこそ「利益が必須」である、というお話をします。

目次

結論だけで満足をしてもらっちゃ困る。

銀行融資の経理処理(仕訳)について、「借入金返済は経費になるのか?」という疑問を見聞きすることがあります。

結論は次のとおりです ↓

借入金返済は経費になるのか?
  • 「元金」の返済は経費にならない
  • 「利息」の支払は経費になる

上記のとおり、借入金返済(元金の返済)は経費にはなりません。以上、おしまい。

と、することもできますが。

なにごとも「どうやるか?(HOW)」だけではなく、「なぜ?(WHY)」を理解することが大切です。

というわけで。

借入金返済が経費にならないのはなぜなのか? つまり、借入金返済が経費にならない「理由」についてお話をしていきます。

また、経費にならないからこそ、借入をする会社は「利益が必須」であることは見逃せないポイントです。その理由についても押さえておくことにしましょう ↓

このあとの話の内容
  • 借入金返済が経費にならない理由
  • 経費にならないからこそ利益必須である理由 その1
  • 経費にならないからこそ利益必須である理由 その2

それでは、このあと順番にお話をしていきます。

借入金返済が経費にならない理由

冒頭、借入金返済(元金の返済)は経費にならない、と言いました。

これは、わかっている人にはなんてことのない結論なのですが。わからない人には「なぜ経費ではないのか?」と首をかしげるところです。

返済をするにあたっては「おカネを支払う」のに、それがどうして経費にならないのか? 同じようにおカネを支払ってモノを買うと経費になるのに。返済の場合には経費にならないのはおかしくない? みたいな。

たしかに、「おカネを支払う=経費」という見方をすると、「借入金返済が経費にならない」を不思議に感じるのもムリはありません。

そこで。「借入金返済をしたとき」から時間をさかのぼって、「借入をしたとき」のことを考えてみましょう。

もし、自社が銀行から 1,000万円の借入をしたら? この 1,000万円を「収入」だと考えることができるでしょうか。

できませんよね。1,000万円は借りただけであり、いずれ返さなければいけません。にもかかわらず収入にするのであれば、利益が増える分の税金も払わなければいけないことになります。

そんなのありえないっ! と、いうのが正しい感覚です。

いっぽうで、売上 1,000万円は収入です。売上も借入も「おカネを受け取る」という点では共通していますが、「おカネを受け取る=収入」ではない、ということがわかります。

ひるがえって、「おカネを支払う=経費」でもありません。

収入ではない借入 1,000万円について、返済するときには 1,000万円を経費にするのではおかしいですよね。借りたものを返すだけで経費になったら、借りまくって返済をすることが節税対策になってしまいます。

が、もちろんそんな節税はありません。借りたときには収入でもないし、返済するときには経費でもない。というのが、借入金の経理処理だからです。

じゃあ、いったいなにになるのか?

「負債」です。借りたときには「負債の増加」、返済したときには「負債の減少」として経理処理(仕訳)します。借入金返済は、借りたおカネ(負債)を返しただけ。だから、経費にはならないのです。

具体的な仕訳はこちらの記事をどうぞ ↓

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経費にならないからこそ利益必須である理由 その1

借入金返済(元金の返済)は経費にならないからこそ、見逃してはいけない重要なポイントがあります。

それは、借入金を返済するためには「利益が必須」である、ということです。具体例で考えてみましょう。

年間の利益が 500万円、年間の借入金返済が 600万円の会社があるとします。これを見て、考えるべきことは「返済ができないかも…」です。

借入金返済は経費にならないのですから、年間の利益 500万円を計算するときの経費として「借入金返済(600万円)」は含まれていません。

したがって、利益のなかから借入金返済をすることになります。けれども、この会社の場合100万円足りませんよね(利益 500万円 − 借入金返済 600万円)。

不足分の 100万円は手元のおカネ(現金預金)を取り崩して借入金返済することになります。おカネがあればよいですが、おカネが無ければ破たんです。

このことから、利益が不十分だと「返済ができないかも…」になることがわかります。利益が不十分とは、「利益 < 借入金返済」の状態です。

その状態が続けば、手元のおカネが目減りしてしまう。だから、借入をする会社は「利益 > 借入金返済」の状態でなければいけない。それが「利益が必須」の理由です

借入金返済を抱える会社は「利益 500万円」を見て、「黒字でよかった」では済まないことを覚えておきましょう。

ちなみに、ここまでお話をしてきた「利益」は、厳密には「税引後利益」です。つまり、税金を支払ってなお残る利益が、借入金返済を上回るかどうか? ということになります。

【参考】余裕資金の借入と返済について

いざというときのために手元に置いておくおカネ(余裕資金)の借入をした場合。その返済は、手元に置いてあるおカネで返済をすればよいだけです。

よって、余裕資金の返済については「利益が必須」ではありません。ただし、利息支払分の利益は必要です(このあとお話をします)。

経費にならないからこそ利益必須である理由 その2

借入金返済(元金の返済)は経費にならないからこそ「利益が必須」である。その理由として「利益 > 借入金返済」であるべきだから、とお話をしました。

加えて、「利益が必須」の理由としてもうひとつ。それは、利息支払いによる節税効果です。

借入金返済(元金の返済)は経費にならない、といういっぽうで。利息の支払は経費になる、という話を冒頭でしました。それを思い出したうえで、具体例で考えてみましょう。

銀行から金利3%で 1,000万円の借入をしている会社があるとして。年間の利息は 30万円です(1,000万円 × 3%)。

この会社に利益がある場合、利息 30万円が経費になることで節税効果がはたらきます。税率が 30%だとしたら、9万円の節税効果です(30万円 × 30%)。

であるならば。会社は実質的に金利 2.1%で借りられている、と考えることができます((利息 30万円 − 節税9万円)÷ 1,000万円)。これが、利息支払いによる節税効果です。

ところが。もしも、会社が赤字だという場合。赤字の会社はそもそも税金がありませんので節税効果もなにもありません。よって、実質的にも金利は3%のまま、ということになります。

節税できた場合の 2.1%と比べると、3%の金利は損をしていると言えるでしょう。ゆえに、借入をして金利を支払う以上は黒字であるべき。これが、「利益が必須」の理由になります。

なお、利息が経費になるのは「一方的」に出ていくおカネだから、と考えましょう。借りたおカネを返すという借入金返済(元金の返済)は、「相互的」なおカネのやりとりである点が異なります。

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まとめ

借入金返済は経費になるのか? 結論、「元金の返済は経費にならない」です。

いっぽうで。経費にならないからこそ、「利益が必須」であることは見逃せないポイントです。

借入に対する理解を深めるために、どちらの理由も押さえておきましょう。

借入金返済が経費にならない理由&経費にならないからこそ利益必須である理由

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