銀行融資・銀行対応について。中小企業の社長が、大企業の財務部長などにアドバイスを求めることがありますが。そのアドバイスは間違えているかもしれませんよ、というお話です。
間違えたアドバイスに気をつけろ。
中小企業の銀行融資・銀行対応について。社長が第三者にアドバイスを求める・第三者からアドバイスされる、というケースもあるでしょう。
中小企業の社長が、知人・友人である「大企業の財務部長」などにアドバイスを求めることがありますが。「大企業」における知見をもとにしたアドバイスには注意が必要です。
これはけして、アドバイスする相手を非難しているわけではありません。そうではなく、「そもそも中小企業の銀行融資・銀行対応と、大企業のそれとは別モノなんだ」という話です。
なので、大企業の財務部長などによるアドバイスは、中小企業の社長にとっては間違えたアドバイスだった… ということにもなりかねません。では、具体的にどの部分が間違いといえるのか? それがこちらです↓
- 決算書が評価される
- 社長と会社は別モノ
- いつでも融資が受けられる
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
大企業の財務部長が間違える中小企業の銀行融資・銀行対応
決算書が評価される
大企業の決算書は、中小企業に比べると、そのまま銀行に評価されるものと考えてよいでしょう。つまり、大企業の決算書は、銀行に信用されているということです。
この点、大企業と同じ感覚で、中小企業の決算書をうのみにしてアドバイスをする人がいます。ところが、中小企業の決算書は基本的に、大企業の決算書ほど信用できるものではありません。
第一に、「社長=大株主」であることから、利益の最大化がはかられていないケースがあります。大企業であれば業績がふるわないと株主のお叱りを受けるわけですが、「社長=大株主」であればお叱りはありません。
ゆえに、節税(=税金を払うのはイヤ)という観点から、経費を増やして利益を減らしている中小企業があります。ヒドい場合には、社長個人の生活費を経費と偽るケースもあるほどです。
また、大企業であれば監査法人の監査を受けなければいけません。誤解を恐れずにいえば、監査法人の監査は、中小企業における税理士の監査に比べて「より厳格」です(税理士が悪いというのではなく、税理士と監査法人に求められている役割の違い)。
結果として、「中小企業の決算書には多かれ少なかれ「粉飾(利益の水増し)」がある」というのは銀行の見方になります。つまり、「中小企業は融資を受けるために、実際よりも利益をよく見せていることがあるよね」という見方です。
なんにせよ、中小企業の決算書は大企業の決算書ほど、銀行には信用してもらえないことを理解しておきましょう。そのうえで、少しでも信用してもらうためにできることはあります。具体的には…
- 経理処理が正しいことをアピールする
- 粉飾しないこと、粉飾がないことをアピールする
- 黒字は続く・赤字は続かないことをアピールする
といったことが考えられます。くわしくはこちらの記事もどうぞ↓
社長と会社は別モノ
さきほど、中小企業は「社長=大株主」だという話をしました。ところが、大企業は必ずしもそうではありません。いわゆる「所有(株主)と経営(社長)の分離」です。
そういう意味で、中小企業は所有と経営が分離されておらず、むしろ一体となっています。だとすれば、「会社と社長個人とを一心同体」と考えるのが銀行の見方です。つまり中小企業は、会社の決算内容ばかりではなく、社長個人の財産状況まで見られることになります。
実際、会社の資金繰りが厳しくなると、中小企業の社長の多くは、個人の資産(おカネ)を会社に投入してなんとかしようとするものです。だから銀行は、社長個人の財産にも注目しています。
と聞いて、「イヤだなぁ」とおもう社長もいるでしょうが、会社にとってはメリットにもなるところです。会社の業績がふるわない、会社の信用力が乏しいとしても、社長個人に財産があれば、会社が融資を受けられることにつながるからです。
したがって、中小企業の社長は、自身の財産状況をみずから積極的に、銀行へ開示することも検討してみましょう。具体的には、社長個人名義の預金や不動産、有価証券などの情報を一覧にして、銀行に提示・説明をします。
所有と経営が分離している大企業では考えにくいことですが、中小企業では「あたりまえ」です。会社の銀行借入について、ときには社長が連帯保証人にならねばならないこともあります。このあたりは、大企業の知見によると見逃されるところです。
見逃せば、融資が受けにくくもなりますから気をつけましょう。ちなみに、銀行へ担保を提供しろ、連帯保証人になれ、ということではありません。
個人の財産状況を提示することと、担保に提供することとは別の話です。担保提供を求められても断ることはできます。担保提供するかどうかはともかく、個人の財産状況(いざというときにどれだけのおカネを出せるのか)をあきらかにすることがだいじなのです。
また、いまは社長の連帯保証をなくそうという方向に動いています。金融庁が銀行に対してはたらきかけていることもあり、徐々にではありますが着実に、社長の連帯保証は減っているところです。
どうしたら連帯保証をなくせるのか? というのは、中小企業ならではの論点でしょうから、あわせて理解を深めておくとよいでしょう。そのあたり、こちらの記事も参考にどうぞ↓
いつでも融資が受けられる
大企業では、中小企業に比べると、いつでも融資が受けられる環境にあります。いうまでもなく、大企業の信用力が、中小企業の信用力よりも高いからです。
では、中小企業はどうかといえば。当然、いつでも融資が受けられるわけではありません。むしろ、融資が受けられる場面は限られているといってよいでしょう。基本的には、業績がよいときでなければ融資を受けるのは困難です。
ところが、業績がよいときばかりではありませんから。業績が悪くて資金繰りが厳しいときに、融資が受けられずに困ってしまう… ということが起きてしまいます。
ですから、中小企業の財務戦略は「借りられるうちに借りられるだけ借りておく」ことだと考えておきましょう。具体的には、利益が出ているとき・おカネ(預金残高)があるときほど、銀行に融資の依頼をすることです。
これが、大企業の知見によると、「手元におカネを余らせておくなどもったいない」ということになってしまいます。たしかに、おカネを借りれば利息の支払いも必要だからです。
が、中小企業がいつでも融資を受けられないことは話をしました。いざというときのために、あらかじめ融資を受けておく、おカネを蓄えておく。そのために支払う利息は「必要コスト」と割り切る考え方も大切です。
利益が出ているときほど、おカネがあるときほど、融資を受けずにすませたり、逆に繰り上げ返済をしてしまう中小企業もありますが。それは、中小企業の財務戦略にはそぐわない行為であることを理解しておきましょう。
まとめ
銀行融資・銀行対応について。中小企業の社長が、大企業の財務部長などにアドバイスを求めることがありますが。そのアドバイスは間違えているかもしれませんよ、というお話をしてきました。
そもそも中小企業の銀行融資・銀行対応と、大企業のそれとは別モノです。同じ銀行融資・銀行対応でも、中小企業と大企業とではどこが違うのかを理解しておきましょう。
- 決算書が評価される
- 社長と会社は別モノ
- いつでも融資が受けられる