これから先、会社はこれまでよりも、銀行融資が受けにくくなるものと考えておくのがよいでしょう。その理由と対策について、お話をしていきます。
甘んじて受け入れている場合ではない。
きょうは、2022年8月8日。これから先、会社はこれまでよりも、銀行融資が受けにくくなるものと考えておくのがよいでしょう。その理由がこちらです↓
- コロナ禍で銀行が貸しすぎた
- コロナ後の倒産企業の増加
- 上記による銀行の業績悪化懸念
では、銀行融資が受けにくくなるのはしかたがないことなのか? 会社は甘んじて受け入れるしかないのか? といえば。けして、そういうわけでもありません。
上記の「理由」を理解したうえで、会社にできる「対策」はあるものと考えます。今後も銀行融資を活かして、自社の資金繰りの安定をはかるために、このあと確認をしていきましょう。
これから銀行融資がなぜ受けにくくなるのか?とその理由と対策
コロナ禍で銀行が貸しすぎた
これから銀行融資が受けにくくなる理由の1つめが、「コロナ禍で銀行が貸しすぎた」です。コロナは未曾有の事態であったがために、銀行融資については国の後押しがありました。
緊急かつ大規模な融資が実行され、「実際に融資を受けた」という会社も多いことでしょう。ただし、通常の融資に比べると「貸しすぎ」といえるものでもあり、信用保証協会の保証付き融資には融資量の低下が見られます。
コロナ禍の融資の多くは保証付き融資でした。保証付き融資には限度額もありますから、「すでに限度額いっぱいまで借りている」のだとすれば、融資が受けられなくなるのは当然です。
また、限度額までいくらかの余力があるとしても、全体としては「貸しすぎ」の傾向もあることから、最近ではとくに、信用保証協会の審査も厳しい状況にあります。以前に比べて、融資が受けにくいのです。
この点で、対策は「返済をする」ことになります。返済をすることで、限度額までの余力ができるため、次の融資が受けやすくなるからです。返済をするということは、それだけの返済力があるということでもありますから、やはり融資が受けやすくなるでしょう。
逆に、いつまでも返済を据え置いていたり、リスケジュールによって返済を猶予しているようだと、融資は受けられなくなってしまいます。
いまはまだ据え置き期間にある会社は、据え置き期間の終了後に「きちんと返済を開始できるだけのおカネがあるか」を確認しておくようにしましょう。具体的には、資金繰り予定表を作成して、将来の資金繰りを確認することです。
また、あらたに融資を受ける場合にも、据え置き期間を安易に設定しないようにしましょう。繰り返しになりますが、据え置きしているあいだは融資が受けにくくなるからです。
コロナ後の倒産企業の増加
コロナを経て、倒産する企業が増えているデータもあれば、これからもっと増えるというハナシもあります。前述したとおり、コロナ禍では多くの会社が融資を受けましたが、コロナ後も業績が戻らずに返済できない会社が少なくないと推測されるからです。
ゆえに、銀行は融資を躊躇する状況にあり、プロパー融資については顕著な傾向があらわれています。これまでであれば、折り返し融資(返済した分をまた借りる融資)ができていたのに、このごろは断られてしまう… というような話を見聞きするようになりました。
この点で、対策は「利益を出す」ことです。銀行融資を受けるにあたっては、これまでも利益がだいじでしたが、これからはいっそうだいじになるものと理解しておきましょう。
銀行にとって、融資先の利益とは「返済原資」です。利益があってはじめて、貸したおカネを返してもらえる、というのが銀行の見方になります。
倒産する会社の背景には、利益減少(赤字)があるものです。倒産企業が増えると推測されるのであれば、銀行が融資先の利益に注目するのは当然でしょう。
そこで、まずは決算書で出せる利益を出すことです。税金を減らすために、利益をあえて減らそうとする(経費を増やそうとする)社長がいますが、融資が受けにくくなるので気をつけなければいけません。
また、いま利益が出ていたとしても、将来にわたって利益が出ることを示すために「経営計画書」を銀行に提示するのがおすすめです。「管理能力が高い社長」との見方にも繋がりますから、融資が受けやすくなる効果があります。
いっぽうで、いま赤字だという場合には、「経営改善計画書」の提示が必須です。赤字の原因をあきらかにし、黒字にするための行動計画と、黒字までの道筋を示した数値計画とを作成します。
そういったものがなければ、赤字で倒産するかもしれない会社に、銀行は融資をすることができません。場合によっては、リスケジュール(返済の猶予)さえ断られてしまいます。
銀行が、融資先の倒産を懸念していることを理解し、その懸念を払拭するためにはどうすればよいかを考えましょう。
上記による銀行の業績悪化懸念
ここまで、「コロナ禍で銀行が貸しすぎた」「コロナ後の倒産企業の増加」という話をしました。これらを受けて銀行は、銀行自身の業績の悪化も懸念しています。
ここ最近は、銀行の好業績が伝えられているものの、いわゆる「ゼロゼロ融資(コロナ禍の保証付き融資)」に支えられたものであり、このあと融資量が減ったり、融資先が倒産するようなことがあれば、すぐさま業績悪化に転じます。
この点で、対策は「銀行のメリットも考える」ことです。言い換えると、銀行の業績が良くなるような取引を増やす、ということでもあります。
たとえば、金利。これまでは取引銀行どうしを競わせて、少しでも金利を引き下げようとしていたかもしれませんが、これからはあえて「金利が少々高くてもかまわない」との姿勢をとることが考えられます。
これにより、銀行が融資をしやすくなって、良い関係性を維持しやすくなるのであれば、割りに合ったコストだといえるでしょう。また、いまはそもそも低金利なのですから、少々高くなったとしてもそれほど大きな負担でもないはずです。
融資以外にも、「あずける預金を増やす」といった対応もあります。融資をしている銀行にとって、預金が増えると「実質金利が上がる」のはメリットです↓
すると、業績アップに繋がりますから、融資がしやすくなるでしょう。預金は、銀行にとって「担保」のようなものでもありますから、その点でも融資がしやすくなります。
さらに、預金口座のなかで「入金・支払の取引」が増えれば、それらに伴う振込手数料収入が増えるのも、銀行にとっては魅力です。金利では稼ぎづらい銀行は、手数料収入をいかに増やすかを考えています。
ですから、入金・支払の取引が複数の銀行に分散しているのであれば、メインの銀行に集めることで、融資を受けやすくすることも考えてみましょう
まとめ
これから先、会社はこれまでよりも、銀行融資が受けにくくなるものと考えて、その理由と対策についてお話をしてきました。
今後も銀行融資を活かして、自社の資金繰りの安定をはかるために、本記事の内容を押さえておきましょう。
- コロナ禍で銀行が貸しすぎた
- コロナ後の倒産企業の増加
- 上記による銀行の業績悪化懸念