会社が事業を続けていれば、必要になるのが運転資金です。その運転資金について、自己資金で用意するよりも、銀行から借入したほうが良い理由についてお話をしていきます。
自己資金で用意するか、借りるか。
会社が事業を続けていれば、おカネが必要になります。そのおカネについて、大きく2つに分けるのであれば、「設備資金」と「運転資金」です。
設備資金とは、設備投資をするためのおカネを言います。いっぽうで運転資金は、設備資金以外に必要となるおカネです。たとえば、仕入代金や諸経費の支払いなど。
このうち運転資金は、さらに細かく分かれますが、最たるものは「経常運転資金」です。算式であらわすと「売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産(在庫)ー仕入債務(買掛金・支払手形)」になります。
くわしい説明は別記事に譲るとして、「事業を続けるには、経常運転資金分のおカネが必要」であることを覚えておきましょう。そのためには、自己資金でおカネを用意するか、おカネを借りるかです。
この点で、経常運転資金は銀行から借入するのがよい、その理由をお話していきます。具体的には次のとおりです。
- いざというときのおカネを残せる
- 返さなくてもいいおカネだから
- 銀行とのつながりができるから
それではこのあと、順番に確認していきましょう。
経常運転資金は銀行から借入したほうがよい理由
いざというときのおカネを残せる
たとえば、経常運転資金が 1,000万円の会社があったとして。そのおカネを銀行借入で用意すれば、手元の自己資金は「別」に使うことができます。
事業を続けていれば、いつなんどき、なにが起きるかはわかりませんから(自然災害、新型コロナなど)、将来の業績悪化・資金繰り悪化に備えて、おカネを温存しておきたいものです。
とはいえ、「借入をすれば利息がかかる、借金を背負いたくない」とのおもいから、銀行借入を嫌う社長も少なくありません。また、「必要になってから借りればいい」と考える社長もいます。
が、いまは低金利ですから、1,000万円の借入にかかる利息は「月額1万円ていど」に抑えられる状況です。月1万円のコストで、1,000万円のおカネを余分に持てると考えれば、将来に備えるコストとして高すぎることはないでしょう。
それに、必要になってから借りるのでは遅すぎます。コロナ禍では、必要になってから借りようとする会社が殺到して、銀行の窓口がパンクしたことは記憶にあたらしいところです。
ゆえに、いざというときのおカネを手元に残しておきたいのであれば、あらかじめ借入をしておくことを考えてみましょう。
ちなみに、銀行借入を嫌って、社長個人のおカネを会社に貸し付ける社長もいます。それも1つの方法ですが、やはり、いざというときのおカネがなくなってしまうのは問題です。
経常運転資金は銀行借入で用意して、社長個人のおカネは温存しておけば、いざというときに社長個人のおカネを投入することができます。会社が危機を乗り切る可能性が高まるでしょう。
ここでもまた、「いざとなったら銀行に借りればよい」と考える社長もいますが、いざとなった会社(=危険な会社)への銀行の対応は厳しいものです。
結果として、融資が受けにくくなる。受けられたとしても、銀行の窓口が混み合っているので、融資を受けられるまでに時間がかかる… これでは、会社がつぶれてしまいます。
返さなくてもいいおカネだから
繰り返しになりますが、銀行借入を嫌う社長は少なくありません。そこには、「借りたものは返さなければいけない」という思いがあると聞きます。
この点で、経常運転資金分の借入は「返さなくてもいいおカネ」であることを理解しておきましょう。これを聞いて、「そんなバカな」とおもわれるかもしれませんが事実です。
経常運転資金の算式を思い出してみましょう↓
決算書で計算した上記の金額が、銀行から借りられる運転資金の目安になります。
それはそれとして、算式のうち、売上債権とは「いずれ回収されて、おカネになる金額」です。棚卸資産は「いずれ販売されて、おカネになる金額」です。
ということは、もしいま事業をやめたとしても、売上債権と棚卸資産の分のおカネは入金されるのですから、そのおカネで借りた経常運転資金を返済することができます。
したがって、経常運転資金分の借入については、返済の心配をする必要がないわけです。
銀行もそれをわかっていますから、経常運転資金分のおカネについては積極的に融資をします。つまり、経常運転資金分のおカネは借りやすくもある、ということです。
返さなくてもいいおカネであり、そのうえ、借りやすくもある。だとすれば、借りない理由がありません。という、考え方もあるでしょう。
銀行とのつながりができるから
さきほど、「銀行は、経常運転資金分のおカネを積極的に融資する」と言いました。
が、「条件」があります。それは、「売上債権や棚卸資産のなかに、不良資産や架空資産が混じっていない」という条件です。この条件が満たせなければ、経常運転資金であっても銀行は融資をしません。
不良資産も架空資産も、いずれおカネになることはないからです。不良資産も架空資産も、実質的には価値がない資産であり、その分まで、おカネを貸すわけにはいかないのは当然でしょう。
そこで銀行は、経常運転資金の融資をするときはもちろん、融資をしたあとも、融資先の「経常運転資金のなかみ」を精査し続ける必要があります。
精査とは、具体的には、必要な資料の提出を求めたり、社長にヒアリングをしたり、現場・現物(倉庫・工場、商品など)の確認をしたり、といった具合です。
その精査を通じて、銀行と会社は「コミュニケーションを深める」ことになります。結果として、銀行とのつながりができるのは、会社にとってメリットだと言ってよいでしょう。
銀行とのつながりができ、そのつながりが強化されれば、中長期的に・安定的に資金調達がしやすくなるからです。逆に、経常運転資金を自己資金で用意していると、そのメリットは得られません。
中小企業にとってはとくに、銀行借入は「唯一無二の資金調達手段」でもありますから、あえて借りることも検討していくとよいでしょう。
まとめ
会社が事業を続けていれば、必要になるのが運転資金です。その運転資金について、自己資金で用意するよりも、銀行から借入したほうが良い理由についてお話をしてきました。
自己資金で用意できるとしても、あえて借りることも検討してみましょう。
- いざというときのおカネを残せる
- 返さなくてもいいおカネだから
- 銀行とのつながりができるから