決算書のなかでもとくに、銀行が関心を寄せている「売上高」について。社長が銀行に説明すべきことをまとめます。意外と説明せずにいる社長が少なくないところです。
意外と説明せずにいることが多い。
決算書について、社長が銀行に説明すべきことはいろいろありますが。なかでもとりわけ、銀行が関心を寄せている「売上高」について、社長が銀行に説明すべきことをまとめます。
おもなところではぜんぶで5つ、こちらです↓
- ビジネスモデル
- 営業力
- 回収条件
- 増減の原因
- 在庫の増減
意外と説明せずにいることが多いものでもありますので、確認をしてみましょう。説明が不足すると、融資が受けにくくなったり、融資条件が悪くなったりしてしまいます。
売上高について社長が銀行に説明すべきこと5選
ビジネスモデル
ビジネスモデルとは、言い換えるなら「商売」です。自社がどのような商売をしているのか、売上高の「金額」の話とあわせて、「商売」の話もしましょう。
なぜなら、銀行は融資先の商売をわかっているようでわかっていないからです。ちなみに、ビジネスモデルとは、「だれに・なにを・どのように売るか」であり、決算書からはわかりません。
ゆえに、あらためて説明する必要があります。ビジネスモデルがわからなければ、銀行は融資先の「将来性」をはかることができず、決算書の良し悪しに終始してしまうのが問題です。
決算書の良し悪しはもちろん、自社の将来性もふまえて評価してもらうことができるように、ビジネスモデルを説明しましょう。銀行に、将来性を理解してもらえれば、中長期的に安定した資金調達ができる可能性が高まります。
なお、ビジネスモデルは「言葉(文字)」だけではなく、「絵(図解)」にすると、いっそう伝わりやすくなります。「商流図」と呼ばれるものです。詳しくはこちらの記事もどうぞ↓
営業力
売上高の話をするときには、「営業力」のアピールもしたいところです。営業力の高さは、事業の持続・成長に寄与するものであり、銀行も注目しています。
では、どのようにアピールすればよいのか? わかりやすいのは、「売上先」の開示です。たとえば、売上先に名のしれた大企業などがあれば、自社に信用があることが伝わるでしょう。
また、売上先の数が多い、その数が増え続けているのであれば、営業力の高さをあらわしていると言えます。リスク(売上先の倒産)を分散できているということでもありますから、安全性の評価にもつながるところです。
なお、売上金額を増やせばいい、売上先を増やせばいい、というわけでもありません。売上代金を回収できなければ意味がないからです。
この点で、各売上先の「与信情報」についても説明できると、銀行は「管理能力が高い会社だ」との評価をすることでしょう。少なくとも、大口の取引先については、定期的に「信用情報(帝国データバンク・東京商工リサーチなどから)」を取得・確認しておくのがおすすめです。
回収条件
さきほど、売上先の開示をしましょう、と言いました。あわせて、売上先ごとの「回収条件」の情報についても提示できるとよいでしょう。「月末締め・翌月末入金」といった情報です。
これにより銀行は、決算書に記載された「売掛金」の額が適正かどうかを検証できるようになります。売掛金のなかに「架空債権」や「不良債権」があれば、売上高もアテにはできないのですから、銀行にとって売掛金の検証は重要事項です。
その検証がままならないなかで、売掛金の額が同業他社と比べて多いとなると、どうしても「架空債権」や「不良債権」を疑われてしまうことになります。すると、融資が受けにくくなるのは問題です。
したがって、まずは売上先ごとの回収条件を、一覧にまとめて整理すること。銀行に対してのみならず、社長が自社の資金繰りを考えるうえでも、大事な情報になります。
売掛金が増えれば、その分、資金繰りは悪くなる。売掛金が回収できなければ、資金繰りはもっと悪くなる。そうならないように、回収条件を把握・管理しなければなりません。
増減の原因
売掛金の額とは別に、売上高そのものの額についても銀行は注目しています。なぜなら、売上高は「利益」のみなもとだからです。
銀行にとっては「利益=返済原資」であり、利益を生み出すもとになる売上高が減っているようでは、将来の返済を心配することになります。なので、売上高は「増加」が基本です。
とはいえ、増加し続けることがベストか? といえば、そうでもありません。いくら売上高が増えても、利益率が下がっていたらどうでしょう。売上はかえって減ってしまった… ということもありえます。
ですから、売上高と利益(率)はセットで考える必要があるのです。そのうえで、銀行に対しても、売上高と利益はセットで説明するようにしましょう。
そう考えると、あえて売上高は維持、あるいは減らしてでも、利益率を高めて利益額を増やす、というのも1つの財務戦略です。そのような戦略があるのなら、やはり銀行に説明するようにしましょう。
たまたまそうなったのと(戦略なし)、狙ってそうなったのと(戦略あり)では、銀行からの評価は変わるものです。当然、戦略を持っている会社のほうが高い評価をえられます。
在庫の増減
売上高に関連して、ぜひとも説明すべきことに「在庫」があります。モノを売っているような商売であればとくに、在庫はツキモノです。
その在庫が増えるほど資金繰りが悪くなる、というのはよく耳にするハナシでしょう。当然、銀行もまた、そのような見方をしています。在庫が多い会社は要注意です。
また、架空の在庫を計上することで利益を水増しする会社もあります。銀行にとっては、それも警戒すべきところであり、在庫はなにかと注目される金額であることを覚えておきましょう。
それだけに、在庫の額に増減があれば、その「理由」を説明することが重要になります。売上が減っているのに在庫が増えているような場合であればとくに、です。
一般的には、売上が減れば在庫も減ります。にもかかわらず在庫が増えるのであれば、架空の在庫や不良在庫が疑われるところです。であれば、銀行は融資をしづらくなります。
大口の売上受注に備えて、まとめて仕入をした。まとめて仕入れると値引きがあるので、一時的に在庫が増えている。といった理由であれば、銀行に納得してもらえるはずです。
まとめ
決算書のなかでもとくに、銀行が関心を寄せている「売上高」について。社長が銀行に説明すべきことをまとめました。意外と説明せずにいる社長が少なくないところです。
銀行に決算書を渡すときには、事前に、説明内容をまとめておくと漏れがありません。また、その内容を文書にして渡すことができると、銀行員からは喜ばれますし、融資の受けやすさにつながるはずです。
- ビジネスモデル
- 営業力
- 回収条件
- 増減の原因
- 在庫の増減