キャッシュフローってどうやって計算するの?
う~ん、それは知っておいたほうがいいですね。なにしろ。融資を受けようというのであれば、銀行は必ず見ていますから。
融資の可否を左右するキャッシュフロー。銀行と話をするその前に、まずは自分で計算してみましょう。
銀行に必ず見られている指標「キャッシュフロー」
この人・この会社に融資をしてもだいじょうぶかなぁ。それを銀行が判断する要素のひとつに「キャッシュフロー」があります。
あなたに返済するチカラはある?
キャッシュフローの意味合いを、ひとことで言うのであれば「返済能力」です。
借りたおカネについて、どれだけ返済するチカラがあるのか。それをはかるのが「キャッシュフロー」という指標の役割。
おカネを貸せるかどうか、いくら貸せるかどうかは。このキャッシュフローにかかっている、と言っても過言ではありません。
返済能力のない人・会社におカネは貸せないし。ということで、銀行に融資の話をするその前に。ひとまず自分で、キャッシュフローを計算してみましょう。
法人の場合の計算方法
まずは、法人(会社)の場合の計算方法から。
キャッシュフロー計算書をつくるのはメンドウだ
キャッシュフローを計算するにあたって、財務書類の1つに「キャッシュフロー計算書」なるものがあります。
「厳密な」キャッシュフローを計算するのであれば、そのキャッシュフロー計算書に依ることになります。が、それはそれで作るのに少々手間がかかってめんどうです。
だからまずは、「簡易的に」キャッシュフローをはじき出します。簡易的なキャッシュフローで、簡易的に返済能力を検討するわけです。
厳密なキャッシュフローについては必要に応じて、「第二段階」としての扱いということになります。
キホンは「税引後利益+減価償却費」
それでは、キャッシュフローを簡易的に計算してみます。算式としてはとってもシンプル。次のとおりです。
簡易キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費
返済能力として「税引後利益」が採用されるのは理解できるとしても。減価償却費を加算することには面食らうかもしれません。
これは「キャッシュアウト(現金の支出)を伴わない経費」という、減価償却費が持つ特性に理由があります。会計上のテクニックとして計算される減価償却費は、経費でありながらおカネの支出はないのです。
話せば長くなる減価償却費の話はこのへんで別に譲ることにして。
損益計算書1枚で済むハナシ
で、税引後利益と減価償却費はどこを見ればわかるの? はい、まずは直近の決算書を用意します。その中に「損益計算書」があるはずですので、そちらを見てください。
税引後利益は、その損益計算書の末尾から拾うことができます。減価償却費は、経費科目がズラッと並んでいるなかに、見つけることができるはずです。見つかったら、2つの数字を足してみましょう。
たとえば。税引後利益 1,000万円、減価償却費 300万円の会社であれば。キャッシュフローは、「1,000万円+300万円」で1,300万円です。
あらたに借入をするとして。年間で最大1,300万円までならば返せそうだな、ということが簡易的にわかります。
社長の給料は妥当かどうか、という問題
ところで。税引後利益というのは、「社長の給料(役員報酬)」をマイナスしたあとの金額です。では、もしもその社長の給料が「安すぎる」としたら?たとえば、年間で120万円とか。
そんなこと言われる筋合いはねぇ!と突っぱねてもかまいませんが。融資を受けたい、というのであればそうはいきません。
社長の給料を少なくすることで出している利益であれば。その利益は、返済能力としては過大評価になってしまいます。第一、そんな少ない給料で生活できてんの?そういうハナシになります。
場合によっては、銀行サイドで「120万円ではなく360万円くらいが妥当だろ」と修正をかけていることでしょう。すると、さきほどの簡易キャッシュフローはその分目減りします。
結果、融資を受けられる可能性が減る、あるいは融資可能額が減る、ということが起こりえます。
こういった銀行側の「修正」を避けるには。「社長の給料が低額でもやっていける理由」を銀行に提示することです。たとえば、もともと資産家だとか、奥さんに別の稼ぎがあるとか・・・
社長の給料が妥当か、という点については逆もあり得ます。社長の給料、高すぎじゃない?ということです。
個人の場合の計算方法
続いて、フリーランス・個人事業者の場合の計算方法です。上記の「法人の場合」もぜひ一読しておいてください。考え方のベースは同じなので。では、そのうえで。
考え方は会社と同じ、なんだけど
個人でも、会社の場合と考え方として大きく変わるところはありません。やはり、「税期後利益+減価償却費」です。
ところが個人の場合には、「税引後利益」の計算にはひと手間必要です。税引後利益を、書類から一発で拾うことができないのです。結論として、算式は次のようになります。
簡易キャッシュフロー = 所得金額 +減価償却費 - 所得税・住民税 - 社会保険料 -生活費
やれやれ、といったカンジですが。ひとつづつ、金額を拾い上げていくことにしましょう。
所得金額 + 減価償却費
まずは、直近で申告した際の確定申告書を準備しましょう。
青色申告であれば、その中に「損益計算書」がありますのでそれを。白色申告であれば、「収支内訳書」があるのでそれを見ます。その損益計算書あるいは収支内訳書から「所得金額」と「減価償却費」を拾い出します。
それぞれ、下図のようになります。
所得税・住民税、社会保険料
こんどは、確定申告書の1枚目を見ます。所得税・住民税、社会保険料の金額は次のように拾います。
所得税と社会保険料は、直接金額を拾えます。住民税については、便宜的(※)に「課税される所得金額」に住民税率10%を乗じて計算します。
※ 正確には住まいの市区町村から届く「住民税の納税通知書」の金額を拾うことになります
生活費
これで最後、生活費です。これはもう、あなたに計算してもらうしかありません。家計簿をつけているのであれば、特に問題なく計算できるでしょう。
家計簿なんてつけてません!という人は。住居費、食費、教育費などなど、毎月どれくらいかかっているかを計算しましょう。
余談ではありますが。「事業」と同じく、「家計」もまた大事な生活の柱です。事業よりも、より「生きること」に近い部分が家計です。家計が潰れることは、生きることの困難を意味します。
過去・現在はもちろん、将来に向けて「家計」が健全であるために。家計簿をつけることをおすすめします。
家計簿のつけ方はいろいろあります。それこそ「事業の帳簿」ではありませんので、1円単位までを求めるものでもありません。できるところからでもつけてみる、いかがでしょうか。
生活費をどうみるか
金額は拾えた、ということで算式を再掲します。
簡易キャッシュフロー = 所得金額 +減価償却費 - 所得税・住民税 - 社会保険料 -生活費
ポイントは生活費です。法人の場合も、社長の給料が問題になりましたが個人の場合でも同じです。個人の場合には「給料」がないため、生活費として別途計算して考える必要があります。
生活の背景、環境は人それぞれです。実家に同居している人、奥さんの稼ぎで家計の大半を賄っている人は、上記の生活費が相対的に小さくてすむはずです。
ところが、銀行のほうではそんなことまでわかりません。何も言わなければ、「こんなもんかな、フツーは」という標準的な生活費の金額が採用されることになるでしょう。
生活費は少なくてもだいじょうぶなんだ、というような事情がある場合。融資を受ける銀行には、その点をアピールすべきだと言えます。
そうでなければ、あなたの簡易キャッシュフローは「過小評価」されることになりかねませんから。
まとめ
銀行融資の際のキャッシュフローについて、その計算方法を見てきました。
おカネを貸そうかどうか、というときに。銀行はいろいろなポイントを見ているわけですが、キャッシュフローは最重要ポイントに位置しています。
銀行とスムーズにコミュニケーションするためにも、キャッシュフローの計算方法と見かたは押さえておきましょう。
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きょうの執筆後記
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銀行とのコミュニケーションは苦手だ、という経営者の方は多くいらっしゃいます。
その理由のひとつに、「銀行はどこを見ているのかわからない、なにを言っているのかわからない」というものがあります。そのような悩みへの解決策として。
当事務所では、当事務所が会社の「財務部長」として資金繰りや資金調達を支援する「財務・融資コンサルティング」もおこなっています。