なんでウチは融資が断られるんだ?
申し込んだ借り入れが断られる。その理由を銀行にたずねても、はっきりとした答えが得られない。ということは少なくありません。
ではなぜ、その借入は断られてしまうのか? 銀行融資を難しくする危険なサインについてお話しします。
借りたいときに貸してはくれない
おカネを貸すのが銀行の仕事だからといって。借りたいときに、いつでも借りれるわけではないのが銀行融資の難しさ。
借りたいときに貸して欲しい、というのは借りる側の「借り手の論理」でしかなく。貸す側の銀行には「貸してもだいじょうぶな相手にしか貸さない」という「貸し手の論理」があります。
そんな「貸し手の論理」として。こんな会社には銀行融資は難しい、という「危険サイン」をまとめてみます。危険度別に見ていきましょう。
《 危険度 ★ 》
- 直近の決算が赤字
- 決算書の信ぴょう性が低い
- 経営者が数字に弱い
《 危険度 ★★ 》
- 2期以上連続赤字
- 返済実績が乏しい
- 融資の使い道がアヤシイ
- 借入が多過ぎる
《 危険度 ★★★ 》
- 債務超過
- 返済原資が少ない
- 税金の未払がある
《 危険度 ★ 》の危険サイン
直近の決算が赤字
銀行は「債務者区分」というものを行っています。これは、債務者(貸し出し先)の状況・能力などを判定して、次の6つに区分するものです。
- 正常先
- 要注意先
- 要管理先
- 破たん懸念先
- 実質破たん先
- 破たん先
上記の区分は「下」に行くほど、借入が難しくなります。
この債務者区分について。直近の決算が赤字であると、少なくとも「要注意先」以下となります。貸し出し先として最も望ましいのは「正常先」であることから、借入がやや難しくなるわけです。
ただし、日本政策金融公庫や信用保証協会付の融資については。少々の赤字であっても、しっかりとした目的が確認できる場合には、融資されることも少なくありません。
つまり、「要注意先」で融資が難しくなるのは、民間金融機関の単独融資。いわゆる「プロパー融資」のケースです。
また、赤字だとしても。「その期限りの特殊要因」については、大目に見てもらうことができます。たとえば、固定資産の売却による損失など。この場合には、決算書上などでもしっかりアピールすることが欠かせません。
決算書の信ぴょう性が低い
当然のハナシですが。「この決算書、だいじょうぶかいな?」という場合には、銀行側は不安になります。たとえば、
- 減価償却をきちんとしていない
- 価値がないであろう資産が計上されている など
少々専門的な話になりますが。税務上、減価償却費の計上は任意とされており、減価償却費の未計上・過少計上は、利益の水増しの常套手段として使われます。
同じく、利益水増しを目的に、「はっきりしない仮払金」や「はっきりしない貸付金」などの資産が計上されることもあります。
いずれも税務上、つまり、税金計算上の問題は無い(あるいは少ない)ものの。銀行融資の観点からは問題ばかりです。ただしい決算書を作れない会社を信用できないのは「自然」でしょう。
そんな決算書であっても。銀行は銀行独自の視点と調査により、ただしいと思われる決算書に修正をしたうえで判断してはいるものの。過度な「利益水増し」で評価を下げないように。
経営者が数字に弱い
「弱さ」の程度によりますが。数字については、なんでもかんでも「わからない」「税理士に聞いてくれ」では、経営者の資質を問われることになりかねません。
金融機関との面談などでは「数字」についての会話も必要です。わからないのであれば事前に、税理士にポイントを教えてもらう。税理士に同席をしてもらい、うまくリードを求める。なども考えましょう。
また、毎月の試算表の出来上がりがあまりに遅いのもよくありません。半年前の試算表がまだ出来ていない、というのでは。経営者の経営感覚や経営管理能力を疑われてもしかたのないことです。
銀行からの資金調達が必要であるならば、毎月の試算表づくりにも注意しましょう。
《 危険度 ★★ 》の危険サイン
2期以上連続赤字
「危険度★」の「直近の決算が赤字」が、さらに悪化した状況です。債務者区分が、より引き下げられることとなり、借入はより難しくなります。
それでも借入を検討するのであれば。やはり、日本政策金融公庫や信用保証協会付融資を頼ることになります。
また、連続赤字の状態が重いときには。必要に応じて、「経営改善計画書」の策定も考えなければいけません。これは現状の課題・問題点を踏まえ、中長期にわたる改善への道筋を示した計画書です。
経営改善計画書となると、ノウハウやコツも必要なため。税理士などの専門家の力を求めるのが得策です。
返済実績が乏しい
銀行は、「返済をした実績」を高く評価します。借りたら返すが当たり前なのですが、その当たり前がきちんとできたことを評価します。はじめての融資は別にして。2度目以降の融資については「返済実績」が重要になるのです。
その返済実績について、一般に「半年以上は必要」と考えます。ですから、「このあいだ借りたばかり」という状況での融資は非常に難しいといえます。
このようなことから、借入する場合には。近い将来必要な資金を、「いちどでしっかり借りる」ようにしなければいけません。
なんとなくで借りて、やっぱり足りなかったから追加借入。というのはムリだということを覚えておきましょう。
融資の使い道がアヤシイ
融資には「融資を受けるための目的」が必要です。設備投資、売上拡大による運転資金など。なぜ借りるのかを、銀行は必ずみてきます。
その目的について、基本的に「赤字の穴埋め」や「生活費の穴埋め」というのは認められません。
このような目的に見られないよう、「資金繰り表」などを準備して、銀行に説明することが重要になります。使途不明確な資金を銀行が貸し出すことはありません。
借入が多すぎる
すでに受けている融資がある場合。借り過ぎていないか、は融資のポイントになります。「債務償還年数」や「借入金月商倍率」が、その目安になります。算式は次のとおりです。
- 債務償還年数 = 銀行借入額 ÷ (税引後利益+減価償却費)
- 借入金月商倍率 = 銀行借入額 ÷(年商 ÷ 12)
債務償還年数は、おおむね10年以内。借入金月商倍率は、業種・業態にもよりますがおおむね3~6倍以内が「ギリギリ」の目安になります。
いずれにしても目安であり、最終的には「資金繰り表」により、具体的な返済計画をしっかり示すことが肝要です。
《 危険度 ★★★ 》の危険サイン
債務超過
資産の総額よりも負債の総額の方が多い状態を「債務超過」と言います。言い換えるならば、決算書で「純資産の部がマイナス」。
銀行が貸し出し先について、もっとも嫌う状況のひとつがこの「債務超過」です。債務超過は、毎期毎期の積み重ねの結果。決算時には、「債務超過にならないかな?」という注意を払いましょう。
ちなみに、銀行が言う債務超過の判断は「実質」です。決算書を「形式」ととらえる場合の「実質」で判断します。
たとえば、決算書に「架空在庫の計上」があると見れば。その分、資産の総額から減額します。「不良債権」があれば、それも金額を削られます。
銀行融資を求めるのであれば、「実質」の債務超過を意識した決算書を考えなければいけません。
返済原資が少ない
前述の「債務償還年数」の算式で出てきた「税引後利益+減価償却費」が返済原資にあたります。
税引後利益が返済の元手になることはわかると思いますが。減価償却費は「おカネが出ていかない経費」として利益に足し戻される、というしくみです(詳しくは下記の過去記事に譲ります)。
この返済原資が大きければ大きいほど「返済力」が高く、より多くの借入ができると評価されるわけです。
減価償却費が足し戻されると言っても。返済原資のベースは税引き後利益であり、「黒字」であることがたいせつになります。
必要以上に納税を嫌って、過度な利益圧縮を図ったツケは、銀行融資の難易度に跳ね返る。おカネを借りたければ、利益を出すのが鉄則です。
税金の未払がある
払うべきものも払っていない会社に、銀行はおカネを貸せません。各種税金に加え、社会保険料、家賃、公共料金なども対象になります。
未払がマイナス要因になるのに加えて、支払遅延もまたマイナス要因になりえます。融資の直前までに「キレイにしておけばいいや」という考え方は危険です。
融資を受ける半年以上前には、そのような状況を解消しておくことが望ましいと言えます。
本来、日常的に資金繰り予測を行い、上記のような未払や遅延を起こす前に資金手当しなければいけない。というのは、言うまでもないことですが。
まとめ
銀行融資を難しくする10の危険サインについて見てきました。
サインが出ているからといって、絶対に借りれないというわけでもなく。また、上記のサインが出ていなくとも借りれないケースはあるのですが。目安としては参考になるものです。
貸すのは銀行。
どうにもこうにもならない、となってからの借入は「借り手」の論理であり。そんな相手に、「貸し手」である銀行は、はどうしようもできないのであることをくれぐれもお忘れなく。
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きょうの執筆後記
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