税金を払うために借入?やだよ、そんなの!
って、それ間違いです。会社の成長過程には、おカネを借りてまで税金を払う局面も必要です。
「借入=よくないこと」という良識一辺倒の考えが、会社の成長のジャマをする。ということについてお話しします。
利益がホンモノであるならば、借入をしてでも税金を払え
利益が出ているのにおカネが無い。税金を払うおカネが無い。だから、アノ手コノ手で利益を圧縮・・・よく聞くハナシです。
”利益が出ていて、おカネが無い”なんてことはない
そんなことはないだろう。黒字倒産の話も聞く。利益が出ていても、おカネがないことはあるんだ! と言われることでしょう。
たしかに。「短期的には」、そういうこともあり得ます。
ですが。
「長期的には」そういうことはあり得ません。
利益は”化けモノ”
決算書に記された利益の分だけおカネがあるかというと。そんなことはないでしょう。だから、利益が出ているのにおカネが無いと騒ぐわけです。
でもそれは、ほんとうにおカネが無いのではなく。違うものに姿を変えているだけです。
たとえば、掛売上(ツケによる売上)。売り上げた瞬間に「利益」が計上されますが。おカネが入ってくるのは「先」の話です。
このような、掛売上で未回収の状態を「売掛金」と言います。つまり、この売上による利益は、おカネではなく売掛金に化けているということ。
利益が化けるのは売掛金だけに限りません。商品在庫やら、固定資産やら・・・利益はいろいろなものに化けています。
”化けモノ”はいずれおカネに還る
売掛金はいずれ現金として回収されます。商品在庫も売れればおカネになります。固定資産は本来、使うことで売上に貢献するものですが、売っぱらえばおカネにすることは可能です。
利益は化けるものの、いずれおカネに還る。
それがわかっていれば。ほんとうにおカネが無いのではない、ということを理解できるはずです。
計上されている利益がホンモノである以上、必ずおカネはある。おカネに還るモノはあります。
そう考えれば、”借入をしてまで税金を払う”ことを恐れることはありません。嫌うことはありません。
”借入をしてまで税金を払う”とはどういう姿か
そんなこと言うけどさ、化かされてるだけなんじゃ・・・と不安な人のために。具体例で見てみましょう。
全額掛売り、即決算
具体例の前提は次のとおりです。
- 今期の期首に持っていた現金は、14,000
- 今期の商品仕入は10,000、すべて現金仕入
- 仕入れた商品のうちの半分は、決算日間際に10,000で売上。入金サイト2か月の掛売上
- 仕入れた商品の半分は在庫
- 固定費は毎月300
おカネは借りない、と言うのなら
では、今期の利益を計算してみましょう。
- 売上 10,000-(仕入10,000-在庫5,000)-(給料 300 × 12か月)=利益 1,400
在庫分は、コストとして売上からマイナスすることはできません。売れたときにコストとして対応させます。よって、利益は1,400。
税率が30%だと仮定した場合の税金は、520(1,400×30%)になります。
いっぽうで、期末の現金残高はどうでしょうか。
- 期首 14,000-仕入 10,000-(固定費 300 × 12か月)=期末 400
ふぅー、なんとか乗り切った。なんて言っていられません。売上の入金は2か月後。にもかかわらず、決算の翌月、翌々月には固定費を払わないと。翌々月には税金の支払期限もやってきます。
当然、それまで追加の仕入もできないし、あたらしい投資なんてできる状態ではありません。利益は出ているのにおカネが無い、の典型です。
よっしゃ借りてやろうじゃないか、と言えるなら
ここで、”借入をしてまで税金を払う”という発想が必要になります。たとえば、翌期の期首で1,000を借りることにしようとしたならば。翌期の現金の動きは次のとおりです。
- 前期末 400
- 翌期の期首 400+借入 1,000=1,400
- 1,400-翌期1か月目の固定費 300-翌期2か月目の固定費 300-税金 520=280
こんどは固定費、税金の支払いまで乗り切れました。
おいおい、でもおカネ借りちゃったよ・・・借りたおカネは返さなきゃいけないじゃないか。おカネが無くなってしまうじゃないか。と嘆くのかもしれませんが。
このあとすぐに、売掛金 10,000が入金されます。借りた1,000を返済したって、9,000の現金はしっかりと手元に残るのです。
”おカネなんて借りない、節税するんだ”というあなたへ
それでもやっぱり借りるなんてイヤだ。節税するんだ、と言うのなら。こうなります、というハナシをしておきます。
もうおカネは借りられない、と覚悟する
さきほどの例で。今期の利益は1,400でした。では、アノ手コノ手(どんな方法かは秘密!)を使って利益を圧縮。利益をゼロにできたとしたのなら。
やったね、税金もゼロ!
と喜んだ代償は覚悟してください。今度はおカネを借りたくても借りられないかもね、ということです。
モノを仕入れて売るような商売であれば特に。仕入資金が必要になります。先に仕入れるためのおカネが必要になります。売上拡大の局面では、必要なおカネが大きくなることを想像してください。
自己資金がなければ借りるしかありません。言い換えれば、おカネを借りることで大きくなるビジネスモデル。借入を上手くテコに仕入をして伸びていく商売だということ。
税金ゼロで、おカネを借りることを放棄するというのであれば。それは会社の成長を放棄することと「同義」だと言えます。
”税金がゼロで、おカネも借りる”なんてワガママは通用しない
税金ゼロなら、おカネは借りられない。そう言ってきました。なぜか?
銀行は「返済原資」がある会社にしかおカネを貸さないからです。返済原資とは、貸したおカネを返すための元手のこと。つまるところ、会社の「利益」です。
利益がでる商売だから、その利益を信用して銀行はおカネを貸します。おカネが無いから、おカネを貸して欲しいから、おカネを貸してくれるわけではありません。
さきほどの例で「おカネが無い」のに借入することができるのは、利益を出していたからです。おカネが無くても、利益が化けているだけであることがわかっていたからです。
ここを勘違いしてはいけません。だいじなことなので繰り返します。
銀行は、「おカネが無いから」おカネを貸してくれるわけではありません。
利益があるから、おカネを貸してくれるのです。
利息に文句を言うのなら
銀行はタダでおカネを貸してくれるわけじゃないだろう。と、「利息」に文句を言うのなら。利息を計算してみましょう。
さきほどの例をもういちど。1,000を借りて、年利3%だとしたら。利息は年間 30(1,000 × 3%)です。では、それが利益率に与える影響を考えてみてください。
- もともとの利益率=税引前利益 1,400 ÷ 売上 10,000=14%
- 借入後の利益率=(税引前利益 1,400-利息30)÷ 売上 10,000=13.7%
実に0.3%。年商の10分の1にあたる借入 1,000をしておきながら、利益率に与える影響は0.3%です。
これで、資金繰りの苦労や不安、忙しさから経営者が解放されるのであれば。いちがいに「利息が高い」とは言い切れない、そういうことです。
むしろ、「たったの0.3%」という考え方もあるでしょう。
まとめ
”借入をしてまで税金を払う”ことについてお話をしてきました。
借入はあるより無いほうがいい。それはその通りです。でも、必要な借入もある。しておいたほうがいい借入もある。
唸るほどのおカネがあるんだ、という人はそう居ません。いざという時のことを考えれば、おカネを持っていることは「リスク回避」への手段になります。
利益率への影響を受容しながら「あえて借入」という選択肢も検討してみましょう。
少なくとも。必要以上の節税に走り、不用意に「借入余力」を潰すことなどありませんように。
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きょうの執筆後記
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