設備資金で借入するのはメンドーだからね。そこは運転資金で・・・
って、それはやめておきましょう。気持ちはわかりますが、のちのち困ることになりますよ。
ということで。設備投資に必要な借入は「設備資金」でしましょうね、というお話をしていきます。
「設備投資」をするのに「運転資金」で借入をしてはいけない
クルマを買う、機械を買う、備品を買う。あるいは、事務所を借りるにあたっての初期費用を払うなど。
これらいわゆる「設備投資」をするときに。銀行からおカネを借りよう、ということはあるでしょう。手元のおカネだけでは難しいので、ということですね。
このときに「おカネの借り方」を誤ると、あとで困ることになるかもしれない。そういうお話です。話の全体像は次のとおりです。
- 【予習】設備資金ってなに? 運転資金ってなに?
- 【本題】「設備投資」をするのに「運転資金」で借入をしてはいけない理由
- 【補足】そもそもどうして、運転資金での設備投資を考えるのか?
【予習】設備資金ってなに? 運転資金ってなに?
はじめに、少々「予習」をします。設備資金と運転資金についてです。
そんなことは「知っている」というあなたは、どうぞ読み飛ばして次の「本題」へとお進みください。「よくわからない」というあなたは、この予習からはじめましょう。
おカネを借りるには「理由」が必要
そもそも、銀行からおカネを借りようという場合には、おカネを借りる理由が必要です。
当たり前と言えば当たり前のお話ではあるのですが。「どうしておカネが必要なのか?」を、借りる側が説明をしなければいけません。
この「どうして」という借入理由のことを、「資金使途(しきんしと)」と言います。
おカネを貸す側の銀行は「資金使途はなんですか?」と聞くし、借りる側は「資金使途は〇〇です」と答える。というのが、銀行融資におけるマナーです。
2つの資金使途、「設備資金」と「運転資金」
おカネを借りる「理由」を詳細に語ればいろいろありますが。その理由を大きく分けようとするならば、2つに分かれます。
それがこの予習でのテーマである、「設備資金」と「運転資金」です。
さきほど、「おカネを借りる理由=資金使途」だとお話ししました。つまり、設備資金も運転資金も、資金使途を表す言葉だ。ということになります。
では、その設備資金と運転資金とは、具体的にどういうモノなのか?
設備を買うための「設備資金」
設備資金とは、文字通り、設備をするためのおカネです。
- 新社屋、新工場を建設する
- 営業用のクルマを買う
- 製品をつくる機械を買う
- 社内のIT環境を整備する
- あたらしい事務所を借りるための初期費用(保証金など)を払う
などのために、必要なおカネを借りる際の資金使途が「設備資金」になります。
この設備資金の特徴は、返済期間が長いことです。設備は長く使うことを前提に、紐づく借入金の返済期間も長くなる。というしくみです。
その長さは設備によって違いますが、イメージとしては10年前後、場合によってはそれ以上というカンジです。
設備資金以外の「運転資金」
資金使途のもうひとつ「運転資金」。これは、設備資金以外の理由によるもの。ということになります。
具体例を挙げるといろいろあるのですが、
- 商品を買って、売る。その売却代金が現金化されるまでのおカネが足りない(経常運転資金)
- 季節性のある商品を大量に仕入れる(季節資金)
- 賞与を支払う(賞与資金)
- 黒字で法人税を納める(決算資金)
などなど。設備資金以外の資金使途を総称して、「運転資金」と呼びます。
返済期間は、短いものは1年未満。長いものでも7年。フツーは1年から5年くらいと、設備資金に比べると返済期間はだいぶ短い。ということをアタマに入れておきましょう。
以上で予習はおしまいです。
【本題】「設備投資」をするのに「運転資金」で借入をしてはいけない理由
なぜ、設備投資に必要なおカネを、運転資金で借りてはいけないのか? 理由は2つあります。
- 《理由1》資金繰りが悪くなる
- 《理由2》運転資金での借入の「ワク」を失くしてしまう
では、それぞれについて見ていきましょう。
《理由1》資金繰りが悪くなる
ひとつめの理由は、「資金繰りの問題」です。運転資金で借入をして、そのお金で設備投資をすると資金繰りが悪くなります。
特に難しいハナシではありません。たとえば、次のケースで考えてみましょう。
- 銀行から運転資金として、500万円を借りました。返済期間は2年です
- その 500万円で製品づくりのための機械を買いました。製品売上などにより生み出される利益は毎年 50万円です
これによると、銀行への返済は毎年 250万円(500万円 ÷ 2年)です。1年で 250万円のおカネが出ていきます。
いっぽうで、借入して買った機械から生み出される利益は毎年 50万円。入ってくるおカネは1年で 50万円です。
出ていくおカネが 250万円、入ってくるおカネが 50万円。差引 200万円ものおカネが不足することになります。
設備資金として返済期間10年くらいで借りていれば、そんなことにはならなかったのにね。というのが「資金繰りの問題」です。
一般に。設備は長く使うことにより、長い時間をかけて、その投資の効果(利益、おカネ)を得ていくものです。
にもかかわらず、その設備に紐づく借入の返済期間が短いのであれば。例示のとおり、おカネのバランスを崩すことになります。資金使途に合ったおカネの借り方がいかに大事か、というお話です。
《理由2》運転資金での借入の「ワク」を失くしてしまう
おカネを貸す側である銀行からすると。「運転資金」という資金使途には限度があるはずだ、という考え方があります。
どういうことかをちょっと説明しますと。
運転資金の典型である「経常運転資金」の金額は、次のような算式により求めらます。
- 在庫+売掛金-買掛金
商品を買って在庫のあいだは、その分のおカネが手元から無くなります。売れたとしても、ツケ(売掛金)にしているあいだは、やはりおカネにはなりません。
したがって、「在庫+売掛金」の分のおカネが足りなくなります。いっぽうで、買掛金(ツケでの仕入)を売掛金(ツケでの売上)の逆と考えれば、買掛金分だけ手元のおカネは増えることになります。
かくして、その事業の経常運転資金(不足するおカネ)は、理論的には「在庫+売掛金-買掛金」で計算されます。
では、たとえば。経常運転資金を計算した結果が 1,000万円でした、というのなら。経常運転資金を資金使途として「2,000万円貸して」というお願いはどうでしょう?
銀行からすれば、「そりゃムチャだ!」ということがわかりますよね。ですから、運転資金という資金使途には「ある程度のワク」があると考えるべきです。
話を戻して、設備資金で借りるべきところを運転資金で借りてしまうと。この「ワク」をいたずらに潰してしまうことになりかねません。
ほんとうに運転資金でおカネを借りたいときに「ワク」が無い。これは困ります。だからと言って、「設備資金で貸して」というわけにもいきません。設備資金は、設備投資をするときにしか借りられないのです。
やはり、設備投資をするときは設備資金で借りる。それがセオリーです。
【補足】そもそもどうして、運転資金での設備投資を考えるのか?
さいごに補足として。設備投資をするのに、なぜ運転資金で借りてしまうのか? について触れておきます。
設備資金での借入はメンドーだ
ひとことで言うと、設備資金での借入はタイヘンなのです。借入に手間がかかる。
具体的には、銀行への提出書類が増える。これがタイヘンでありメンドー。だから運転資金で借りてしまえ、ということになります。
ところで、設備資金による借入で、提出が要求されるモノとは? たとえば、次のようなものです。
- 設備の見積書、契約書、請求書、領収書
- 設備のパンフレットなど内容がわかるもの
- 設備の投資効果を反映した資金シミュレーション
これらのメンドーを嫌い、運転資金で設備投資ということがありえます。
しかし、それはのちのち問題を引き起こす。というのが、さきほどの【本題】でのお話です。
まとめ
「設備投資」をするのに「運転資金」で借入をしてはいけない、ということについて見てきました。話の全体像は次のとおりです。
- 【予習】設備資金ってなに? 運転資金ってなに?
- 【本題】「設備投資」をするのに「運転資金」で借入をしてはいけない理由
・《理由1》資金繰りが悪くなる
・《理由2》運転資金での借入の「ワク」を失くしてしまう - 【補足】そもそもどうして、運転資金での設備投資を考えるのか?
資金使途に合わない借入のデメリットをよく理解するようにしましょう。
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