損益分岐点って、どうやって計算すんだっけ・・・?
経営に携わる社長がそんなことを言っているようではいけません。大事な数字は、自分で扱うことができないと。
ということで。社長にとって、とくに重要な公式・計算式を5つ厳選してお話をしていきます。
社長に絶対必須の公式・計算式 ベスト5
仕事をするうえで、経営をするうえで。「数字を扱える」ことは大きな武器になります。
会計や経理の結果でてきた数字を、ただ見るだけではなく。数字を扱う。
すると、いままで見えなかった「なにか」が見えてくる。結果、あたらしい考え方・行動も生まれる。それが、「数字を扱える」ことの効果です。
数字の扱い方は多様であり、奥深い世界ではありますが。ここはハズせない、という数字の扱い方を見ていきます。
題して、社長に絶対必須の公式・計算式。具体的には次の5つです。
- 限界利益率
- 損益分岐点売上高
- 目標利益必要売上高
- 簡易キャッシュロー
- 債務償還年数
それでは、それぞれについてお話をしていきます。
《式1》儲けるチカラを表わす「限界利益率」
1つめの公式・計算式は、「限界利益率」です。いきなりの聞きなれない言葉に、思わず腰が引けたかもしれませんががんばって。まずは、算式を見てしまいましょう。
- 限界利益率=限界利益 ÷ 売上高
- 限界利益=売上高-変動費
変動費ってナンじゃい!?
限界利益率なる言葉に加えて、さらには「変動費」。もうすでにイヤになっちゃいましたか? まぁ、そう言わずにがんばって。
変動費とはカンタンに言うと、売上の増減に比例する費用です。典型例は「商品の仕入」。
モノを買って売る商売の場合。売上が増えれば仕入が増える。売上が減れば仕入も減る。仕入は売上の増減に比例するので変動費。そういうこと。
変動費に対して、「固定費」という言葉があります。これは、売上の増減とは関係の無い費用です。典型例は、「正社員の給料」。
売上が無いからといって、いきなり給料カットできませんよね。逆に、売上が増えたからといって、給料を増やす必要もない。だから、給料は固定費です。
困ったことに(と言うべきでしょう)、変動費がいくらあるか、固定費がいくらあるかは決算書のどこを見ても書いてはありません。
自社・自分の費用を見ながら、「これは変動費かな、固定費かな?」と思案をするところからはじまります。なんてメンドーな・・・というのが限界利益率を食わず嫌いにする理由です。
限界利益の意味するところ
変動費と固定費に分類することを「固変分解(こへんぶんかい)」などと言いますが。不慣れなうちは、固変分解に悩みもするでしょう。
どうしても迷ったら、決算書や試算表の「売上原価」で代用するのも一法です。売上原価には、仕入や外注費など、基本的に売上増減に比例する変動費が集まっているものです。
いっぽうで、チャレンジ精神に燃えるあなたには。Excelを使った固変分解として、こんな記事もおすすめです→変動費と固定費をまだ分類してるの?損益分岐点はエクセルに任せとこう
ようやく変動費を把握したところで。限界利益のハナシに移ります。限界利益の算式とは、次のとおりでした。
- 限界利益=売上高-変動費
この算式の表すところは、あなたの仕事・事業の「儲けるチカラ」です。
変動費である仕入や外注費に頼る仕事である場合には、限界利益は小さくなります。逆に、内製(自分で生産)であれば、限界利益は大きくなります。
どちらが良い悪いではありませんが。「儲けるチカラ」については、変動費の小さな会社に分がある。ということです。
限界利益率が意味するところ
まとめとして、限界利益率の公式がこちら ↓
- 限界利益率=限界利益 ÷ 売上高
この公式の意味を考えるにあたり、ポイントがあります。それは、固定費は限界利益からしかまかなうことができない、ということ。
限界利益があるから、固定費を負担できるのであって。限界利益が無い、少ないのでは、固定費を負担できず。最終的には赤字になります。
つまり。限界利益が大きいほど、固定費を負担できる、赤字になりにくい。
さらに言うと。同じ固定費であれば、限界利益率の高い会社は、低い会社よりも、より少ない売上で黒字を達成することができる。
これが、限界利益が「儲けるチカラ」と言われるゆえんであり、限界利益率が意味するところです。
《式2》損益トントンの売上を知る「損益分岐点売上高」
2つめの公式・計算式は、「損益分岐点売上高」です。限界利益率がわかっていれば、恐れるに足らず。
- 損益分岐点売上高=固定費 ÷ 限界利益率
現場の疑問に答えを出せるか?
「いったい、ウチの会社はいくら売り上げれば利益がでるんだ?」というのはよくあるハナシです。
にもかかわらず。その売上高の計算方法を知らない、という現場は少なくありません。これはけっこう致命的です。
たとえば。100万円かけて広告を出しましょう、というときに。いくら売れば、広告費100万円はペイするんだ? という疑問。
100万円売ればいいじゃん、という話でないことは当然にしても。限界利益を知らぬ者は、答えを導くことができません。ところが、限界利益率の考え方を知っていればだいじょうぶ。
100万円の広告費を固定費と見るのであれば、「100万円 ÷ 限界利益率」が疑問に対する答えになります。
このように。限界利益率や損益分岐点売上高は、いろいろな場面で役立つ重要な公式・計算式です。
《式3》欲しい利益に必要な売上を知る「目標利益必要売上高」
3つめの公式・計算式は、「目標利益必要売上高」です。目標にする利益を達成するには、いくらの売上が必要か? 損益分岐点売上高がわかれば、造作もない。
- 目標利益必要売上高=(固定費+目標利益) ÷ 限界利益率
100万円増益するのに必要な売上は?
算式のとおり。損益分岐点売上高の式に、ひとつ加えたのみです。分子の固定費に、目標利益を足しただけ。
実務の現場では、「損益トントン」に加えて、「目標利益」に対する売上高についてもよく議論されます。
にもかかわらず。やはり、「どうやってその売上高を求めるんだっけ?」という話になりがちです。
もはや言うまでもありませんが。あと100万円、利益を増やすぞ! というときに。増やすべき売上は100万円ではありません。限界利益率しだいです。
彷徨える実務の現場に、終止符を打つカギはいつも「限界利益」です。
《式4》おカネがいくら増えたかを知る「簡易キャッシュフロー」
4つめの公式・計算式は、「簡易キャッシュフロー」です。さきほどまでは利益の話、こんどはおカネの話です。
- 簡易キャッシュフロー = 当期利益(最終利益)+減価償却費
利益とおカネの動きは一致しない
商売をしていると利益の金額も気になりますが、おカネの増減も気になります。利益がいくらあろうと、手元のおカネが無ければ明日の支払いに困ります。
そんなわけで。この1年間で、おカネをいくら増やすことができたのか? は、社長が押さえておくべき数字です。それが「簡易キャッシュフロー」。
算式を見ると、当期利益からスタートしています。当期利益の分だけおカネも増えているはず、という前提です。
問題はそのあと、当期利益に「減価償却費」を足しています。これは、そもそも当期利益は減価償却費をマイナスしたあとの金額ですが、それを足し戻しているわけです。
どうしてそんなことをするのかというと、減価償却費とはおカネの支払いを伴わない費用だからです。
へ?
という方のために、サクッとお話をしておくと。たとえば、300万円のクルマを購入しても、会計・経理のルールではいちどに経費にはできません。
300万円を4年間で、分割して経費にします。だって、クルマは1年だけ使うものではありませんよね。フツーは、何年か乗り続けます。だから、費用も何年かに分けるのです。
このように300万円を分割するしくみを「減価償却」と言い、分割された費用を「減価償却費」と言います。
ここでおカネの動きを考えてみると。おカネはクルマを買ったときに支払済みなので、毎年の減価償却費を計上する際にはおカネの動きはありません。
これが、当期利益に減価償却費を足し戻す理由です。いまいちわからん、というあなたはコチラの記事もどうぞ。 → カンタンに知りたい・説明したい人のための減価償却の考え方
厳密には、利益とおカネはもっとズレる
さらに言うと、利益とおカネのズレはこんなものではありません。
商売をしていると、信用取引というものが欠かせません。売掛金(ツケによる売上代金)、買掛金(ツケによる仕入代金)などです。
これらは、売上や経費に計上されるタイミングと、おカネが入金・出金されるタイミングとが異なります。結果的に、利益とおカネの動きとがズレます。
であるならば。当期利益の分だけおカネが増える、というのも厳密には違います。
厳密にやるのであれば、「キャッシュフロー計算書」なるツールを用いるわけですが。そこまでやってられるか! ということでの「簡易キャッシュフロー」であることを申し添えます。
《式5》銀行借入には欠かせぬ指標「債務償還年数」
5つめの公式・計算式は、「債務償還年数」です。簡易キャッシュフローにも関係する重要公式・計算式です。
- 債務償還年数 = 銀行借入金残高 ÷ 簡易キャッシュフロー
借金はあと何年で返せるのか?
さきほど見た「簡易キャッシュフロー」は、1年間でどれだけのおカネを増やすことができたかを表わすものでした。
「債務償還年数」とは、銀行借入金の残高を、その簡易キャッシュフローで割るというもの。
つまり、いまある銀行借入金を、何年で返済するチカラがあるかを見るのが「債務償還年数」の意味するところです。
銀行融資を受けている、これからも銀行融資を検討する、というのであれば。債務償還年数は常に注意を払うべき数字です。
銀行は、「融資をできそうかどうか」を検討するにあたり、債務償還年数 10年以内を目安にしています。
ですから、10年を超えていれば「借り過ぎだから貸したくない」、10年以内であれば「もう少し貸せるかな」という具合。
利益が無ければ借りられない
当然のこととして、当期利益が小さいと、簡易キャッシュフローも小さくなります。
結果として、債務償還年数は長くなってしまう。銀行からの借入は難しくなる。そういう話の流れです。
銀行から融資を受けたい、というのであれば。当期利益を出すことが大事だ、ということは十分に理解をしておくべきポイントです。
「節税、節税」と利益を圧縮しすぎると融資は厳しいものになるばかりです。
まとめ
社長に絶対必須の公式・計算式についてお話をしてきました。次の5つです。
- 限界利益率
- 損益分岐点売上高
- 目標利益必要売上高
- 簡易キャッシュロー
- 債務償還年数
経営分析指標など会計・経理にまつわる公式・計算式は多々ありますが。
まずはこの5つから、自在に扱えるようにしてみましょう。
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きょうの執筆後記
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