「できる」ことと、「わかる」こととは違います。
日々の経理。
できていても、わかっていないことはありませんか?
「経理がわかる」についてお話します。
経理は自分でできる、という方へ
「経理は自分でできている」
「これから経理を自分でやろうとしている」
という方へのお話です。
前回、前々回で、「トクする経理」についてお話をしてきました。
「明日がかわる」ほどのトクをする経理の公式です。
– トクする経理の公式 – 経理ができる×経理がわかる=明日がかわる |
これによれば「明日がかわる」には、「経理ができる」「経理がわかる」必要があるということでしたね。
今回は「経理がわかる」とはどういうことか、についてお話します。
「できる」と「わかる」のちがい
前回のおさらいも含めて、「経理ができる」と「経理がわかる」の違いについて考えてみます。
トクする経理では、「経理ができる」について次のように定義しました。
自分で、よりラクに、より速く、より正しく、「もうけ」と「おかね」がどれだけあるかを計算できる。
これをもとに、「経理がわかる」との違いをまとめます。
キーワード | 進化のポイント | |
経理ができる | 処理、基本 | ラクに、速く、正しく |
経理がわかる | 理解、応用 | これまでを、いまを、これからを |
「できる」というのは、動作でいえば「処理」、内容でいえば「基本」です。
これを能力に置きかえるなら、「日常の基本動作を継続する能力」といったところです。
一方、「わかる」というのは、動作でいえば「理解」、内容でいえば「応用」。
こちらも能力に置きかえるなら、「あたらしい変化にも対応する能力」といったところでしょう。
上記表中の「進化のポイント」とは、能力向上をはかる際の目標というべきものです。
「経理ができる」では「ラクに、速く、正しく」できることが求められていました。
この点「経理がわかる」ではどうかというと、「これまでを、いまを、これからを」という目標が掲げられています。
「わかる」ための3つのポイント
「これまでを、いまを、これからを」わかるとはどういうことか、はじめに結論として表にまとめます。
主な成果物 | 明らかにすること | 機能 | |
これまでを | 決算書 | 推移・傾向 | 記録 |
いまを | 試算表 | 状態 | 予測 |
これからを | 計画書・資金繰り表 | 意思・判断 | 予報 |
では、順番にお話します。
あって当然の過去
事業をしていて、経理をしていて、決算書がないということはありません。
あって当然。
ただ、「経理がわかる」という場合には、決算書があるだけではいけません。
決算書から、これまでの推移や傾向といった「流れ」をつかんでいるか、というのが大事なポイントになります。
流れを知るために「前年との比較」ということはやっていても、5年比較や10年比較までやっているということはおそらくまれでしょう。
そんなに「古い」ものに意味があるのか、と思われるかもしれません。
ですが、そんな古いものも含めての「いま」。
過去は自分の歴史であり、自分の体質をしめすものです。
それを知らずに、「いま」や「これから」を語るには心細いものがあります。
たとえ話として、事業を「凧揚げ」ととらえるなら。
「過去」の天候、風の強さ・向きなどを調べて、凧を揚げるのにふさわしい場所を考えるのがよいとは思いませんか。
過去これまでの「記録」をわかっておこう、というお話です。
「いま」が無い「いま」
「いま」を知る手段をたずねたとき、なにを想像するでしょう?
「試算表」という答えが多いのではないかと推測します。
試算表とは、事業の利益や財産の「状態」をあらわす経理書類です。
「経理ができる」という方なら見慣れたものでしょう。
ですが、「試算表でいまがわかる」というのは理屈上の話といえます。
なぜなら多くの場合、試算表は「後日」作成されているからです。
前月末の試算表が今月10日ごろまでにできていればよいほう。
場合にによっては今月末近く、ということもあるでしょう。
多くの場合、「いま」がわからない「いま」なのです。
ふたたび、凧揚げのたとえを持ち出します。
いざこれから凧を揚げようというときに、風向き・風の強さをとらえたい。
そのときに前月の風向き・風の強さを教えられても困ります。
必要なのは「いま」の風向き・風の強さですよね。
これは、試算表で「いま」をわかろうとするのであれば、瞬間風速を「計測」できることが理想であることを意味しています。
瞬間風速を計測する術が「経理ができる」ということ。
前回お話したところです。
意思のない凧揚げ、否、未来なんてありえない
さいごに「これから」について。
事業について「これから」を考える際の経理書類といえば、真っ先にあがるのが「計画書・資金繰り表」でしょう。
ところが、これを持っているかという話になると別。
持っていないと答える割合のほうがずっと多いはずです。
みたび、凧揚げの話。
「さてさて、いつどこで凧を揚げようか」となったなら、天気予報を知りたいとは思いませんか?
相当乱暴な表現であることは前置きしたうえで、「計画書・資金繰り表」は「予報」に近いものといえます。
「予報」を「先行き」ととらえるならば、事業をおこなううえでも「先行き」についての理解は重要です。
さきほど「乱暴な表現」と言ったのは、天気予報は単なる予測というべきものですが、計画書や資金繰り表については、「意思・判断」が加えられるべきものだからです。
残念ながら、単なる予測として作られる経営計画書もありますが、それは本来あるべき計画書とは似て非なるもの。
「意思・判断」が加えられていない計画書は、地面に垂れた糸を持ち棒立ちする凧揚げみたいなもの。完全に風任せの状態です。
しかしほんとうに凧を揚げるなら、風上に向かって走り出す「意思・判断」があるはず。
「意思・判断」を持って目標に向かうことは事業とて同じです。
「経理がわかる」と身につく3つのチカラ
「経理がわかる」ことのポイントとして、「これまで」「いま」「これから」の話をしてきました。
その3つが総合的にわかることでどうなれるのか、というお話で締めくくります。
「これまで(過去)」「いま(現在)」「これから(未来)」に作用する、3つのチカラが身につきます。
1.未来に作用する 判断力
2.現在に作用する 説得力
3.過去に作用する 信用力
過去を知り、現在をとらえ、未来を語ることができるからこそ身につくチカラ。
さいごまで、たとえ話を使います。
判断力でいえば、「どう凧を揚げればよいか」を知っているということです。
手段や方法が明らかであれば、目標達成の確度は上がっていきます。
説得力でいえば、「凧を揚げるんだ。凧は揚がるんだ」と伝えることができるということ。
意思と根拠とを備えた声は、聴く者に共感をもたらすはずです。
信用力でいえば、「なぜ凧は揚がったのか(揚がらなかったのか)」がわかるということです。
過去を示し、分析できることは身上を明らかにし、信頼につながります。
さいごに
計画書やら資金繰り表やら、「経理がわかる」も盛りだくさんだな・・・
と思われたかもしれません。
「経理ができる」と同じで、はじめから完璧になんてできませんし、その必要もありません。
少しづつ変化をしていけばよいことです。
なんどもお話をしてきたことですが、「変化」をするにも意思が必要です。
「かわるんだ」という先立つ意思があってこその手段や方法。
意思があるけど、手段や方法が・・・という方は税理士などの専門家にご相談を。
当事務所でも支援サービス「自分・de・経理」やってます!
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きょうの執筆後記
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なにごとも「意思」ありきだと考えています。
それは大切なことだと思う反面、ときにうまくないこともありえます。
考えるよりもまず動け、みたいな・・・バランスですね。