「領収書ください」と言われたら。
りょ、領収書・・・?と慌てている場合ではありません。
モレなく、ヌケない領収書を発行できるよう。領収書の書き方を押さえておきましょう。
領収書発行は、お金をもらう側の義務
今回は、領収書を発行する側のお話。おカネを「受け取る側」は、民法の定めにより、領収書の発行義務があります。
領収書の発行を依頼された場合、「メンドーだから、イヤだ」とは言えないのです。
それでも領収書を発行しないのであれば、おカネを支払う側は、その支払いを拒否できます。おカネをもらえないのは困りますよね?
そもそも。領収書は「おカネのやりとり」があったことを証明する大事な書類。税金の計算にも使われます。
間違いがないよう、書き方のポイントを押さえておきましょう。ポイントは3つです。
- モレ・ヌケのない内容
- 金額の書き方
- 事実の記載
《書き方のポイント1》モレ・ヌケのない内容
領収書について、「決められた書式」はありません。市販されている領収書つづりでも、自分でつくるでも構いません。
ただし、記載しなければいけない「内容」はあります。特に、領収書を自作する場合には、内容の不備に気を付けましょう。
領収書に記載が必要な内容は次のとおりです。
- 宛名
- 日付
- 受領金額
- 但し書き
- 領収書発行者
- 収入印紙・割り印
- 発行番号(領収書つづりの場合)
宛名
「上様」の慣行もありますが、正式名称が望ましいのは言うまでもありません。特に金額が大きい場合には、正式名称の記載に努めましょう。
日付
「おカネを受け取った日」を記入します。したがって、銀行振込の領収書を発行する場合は「入金日」を記入します。領収書の発行日ではありません。
受領金額
受け取った金額を記載しますが、記載方法には注意点があります。「書き方のポイント2」でお話しします。
但し書き
「品名」を記載します。「お品代」は品名にはあたらず、相応しくありません。一品一品の詳細までは必要ありませんが、「飲食代」「文具代」ぐらいの具体性で書きましょう。
相手に聞く前に、こちらから「○○代でよろしいですか?」と聞いてしまうのがポイントです。何にするかと聞くから、「お品代」と言われてしまうことが多いものです。
また、クレジットカード払いの領収書である場合、「カード払い」などとその旨を記載します。このあと説明する「印紙」に関わりますので注意しましょう。
領収書発行者
おカネを受け取った側の会社名(屋号)・住所を記載します。角印など押印があればベストですが、必須ではありません。
収入印紙・割り印
5万円以上の領収書には「印紙」が必要です。5万円以上100万円以下の領収書には、200円の印紙です(詳しくは、国税庁のHPへ)。
印紙を貼る位置に決まりはありませんが、貼ったあとに「割り印(消印)」することを忘れないように。社印、担当者の認印など、印鑑の指定はありません。
また、クレジットカード払いの領収書に印紙は不要です。誤って、貼らないように注意しましょう。
銀行振込についての領収書には、印紙が必要です。
通帳記帳や振込明細書などがあるため、実務的には銀行振込についての領収書発行を省略するケースが少なくありません。
発行番号(領収書つづりの場合)
市販の「領収書つづり(複写式)」などの場合には、連番による発行番号を記載しておきましょう。連番の番号が飛んでいる領収書がある場合、不正発行の可能性を確認するためです。
おカネを受け取り、領収書を発行。おカネはポケットにしまって、領収書控えはゴミ箱へポイ。というような従業員の不正防止・不正発見の助けになります。
《書き方のポイント2》金額の書き方
続いて、受け取った「金額」の書き方について。金額が書いてあれば、それで良いは良いのですが。実は、気を配るべき細かな注意点があります。
- スペースを空けずに詰めて書く
- 算用数字で書く場合の「¥マーク、カンマ、ハイフン」
- 漢数字で書く場合の「金、也」
スペースを空けずに詰めて書く
領収書を受け取った側が、改ざんすることを防止するためです。スペースが空いていると、「ひとケタ」増やすことなどもカンタンです。そのようなことがしにくいように、なるべく詰めて書きましょう。
ちなみに、金額を改ざんすると。文書偽造で刑法違反の罪に問われます。「受け取った領収書」のスペースが空いていても、改ざんしちゃダメですよ。
算用数字で書く場合の「¥マーク、カンマ、ハイフン」
これも改ざん防止です。算用数字(1,2,3など)で書く場合には、金額の頭に「¥」マークを。数字には3ケタごとのカンマ。金額の後ろには「-(ハイフン)」を記載します。
漢数字で書く場合の「金、也」
算用数字と同じく、漢数字(壱、弐、参など)で書く場合にも注意します。金額の頭には「金」、金額の後ろには「円也」と書くようにします。
《書き方のポイント3》事実の記載
さいごは税理士らしく、おカタい話をさせてもらいます。ウソは書いてはいけません、そういうことです。
領収書のウソとは
当たり前のことなのですが、それがムズカシイ。なぜなら、領収書はお客さまに対して書くものである以上、お客さまからの「ご要望」に対しては葛藤が生じます。
たとえば。大量の漫画本について、「但し書きは実用書で」と言われると。うーん、と唸ることになります。めっちゃウソじゃない?みたいな。
「金額多めで」とか、「金額は空欄で」なんていうのも同様です。どれも事実とは異なる領収書になってしまいます。
繰り返しになりますが、領収書はおカネを受け取る側が発行するもの。ただしい領収書の発行義務は、おカネを受け取る側にあるのです。
お客さまの「ご要望」をどう考えるか
お客さまあっての仕事です。とはいえ、ウソに応えるというのは別のことです。
ウソの領収書を欲しがるということは、まず間違いなく、何かしらの「不正」に使われています。あなたのお客さまが「不正」をしているということ。
たいせつなお客さまであるからこそ、そのようなことはして欲しくない。そういう思いから、ご要望であったとしても「ウソ」には応えないという姿勢が生まれます。
さらに。やむなく「ウソ」に応えるのであれば、あなたもその「不正」の巻沿いを食うことになります。脱税、横領・・・不正のたぐいまではわかりませんが、ヘタをすれば共犯扱い。
「実際と違うことを書くな、って顧問税理士から強く言われててさぁ」など、なるべくお客さまを直接的に責めないカタチで説得を試みましょう。
お客さまを守るためにも、自分自身を守るためにも、がんばりどころです!
まとめ
領収書の書き方について、3つのポイントをお話ししました。
領収書を受け取る側になった際にも、間違いがない領収書であるかどうかのチェックポイントにしてみましょう。
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きょうの執筆後記
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領収書発行は、「現金管理」のキホン業務のひとつ。領収書発行がイイ加減だと、現金管理そのものを疑いたくなります。
現金管理がアヤシイと、経理そのものがアヤシイ目で見られます。税務調査で。ゆえに領収書発行はモレなく、ヌケなく、粛々と。