これ、自宅用だけど。ほかの贈答品と混ぜてしまえば・・・バレないよね。
そうでもない、そんなことでもありません。そのあたりの「よくある話」は、税務署も十分に承知しています。というわけで。
税務調査で要注意!中元・歳暮など贈答での経理ポイント、についてお話しします。
中元・歳暮など贈答で気を付けるべき経理のポイント
贈答品については、世間一般に不正が少なくありません。
ここで言う「不正」とは、平たく言うと、「ほんとうは経費じゃないけど、経費だということに・・・」とするような行いです。
もちろん、そんなことはしないに限りますが。してもいないのに、税務調査であらぬ疑いをかけられることがないように。
贈答品に向けられる税務署の視点と、それに対する経理のポイントについてお話をしていきます。内容は次のとおりです。
《税務署の視点》
- 親戚・友人などへの贈答が混じっていないか?
- 高額商品の領収書を、贈答だと偽っていないか?
- ほんとうに相手に渡したのか?
《経理のポイント》
- 贈答品リストを備える
- 郵送・配送する
- 役員報酬の中から贈答する(法人の場合)
それでは順番に見ていきましょう。
贈答に対する税務署の視点
税務署は、中元・歳暮などの贈答について、どのような見方をしているのか。
親戚・友人などへの贈答が混じっていないか?
中元や歳暮となると、贈答先の件数も多くなるもの。であれば、ちょっとくらい親戚・友人分が混じっても平気でしょ。ウッシッシ。
ところが、これはとってもベタな不正であり。「贈答先10件分の金額が一括ドーン!」みたいな領収書については、税務署も金額の明細を求めるところです。
よくよく勘違いをされるところですが、「領収書があればよい」というものでもありません。
言うなれば、領収書は形式的・儀礼的なものに過ぎず。場合によっては、領収書の中身について疑いがかけられる。そのことを理解して経理をしておく必要があります。
経理不十分がためにあらぬ疑いをかけられたまま、というのでは不本意にして不愉快ですからね。経理のポイントはのちほど。
高額商品の領収書を、贈答だと偽っていないか?
ブランド品、貴金属などの高額商品について。領収書を分割し、件数を水増しした贈答品に偽装する。という不正があります。
当のブランド品や貴金属は、自分用なのか、はたまた相手を明らかにできないような贈り物なのかどうなのか。
どちらにしても「経費ではない」というケースを税務署は疑っています。ですから、百貨店の領収書などはけっこう注目されるわけで。要注意です。
これもさきほどの親戚・友人などへの贈答と同じこと。やはり、領収書の金額の明細が求められることになります。
ほんとうに相手に渡したのか?
よく疑われるのは「商品券」です。中元・歳暮や謝礼などとして商品券を買う。その領収書はあるけれど、ほんとうに渡したのか。実は自分で使ったのではないか。
税務署はそのように見ています。商品券の購入が多い、金額が大きい場合にはとくに。実際、自分で使っていることが少なくないのを税務署は知っているんですね。
そこで税務署に相手先を示して見せたとしても。「じゃあ、相手先に確かめていいですか?」と返されてしまうことがあります。
これは、ウソをついていた場合には当然困るわけですが、本当であった場合にも困ることはあるでしょう。
だってそうですよね。いきなり税務署がやってきて、「あなた、〇〇さんから商品券もらいましたよね?」なんて聞かれたら・・・ 〇〇さんって脱税としかしてんのかな、と思われてしまうかもしれません。
大事な得意先で、それをきっかけにご縁を切られたらタイヘンなことです。
贈答に対する経理のポイント
税務署の疑いを晴らすため、あらぬ疑いをかけられないための経理のポイントとは?
贈答品リストを備える
贈答品については、「贈答代」の但し書きのみの領収書1枚で済まさないことです。
その領収書の金額の明細を示す、贈答品リストを作成し、一緒に保管しておきましょう。誰々さんに、いくらの、何々を贈った、ということをリストにしておきます。
百貨店などで中元・歳暮などを手配すると、「配送リスト(送付状)」が発行されますが、そういったものでもOKです。
領収書の金額のなかに親戚・友人に贈ったものが混じっていれば、リストで示し、経費からは除外する。とてもクリアな経理になり、税務署からは疑われずに済むでしょう。
高額商品の領収書偽装問題についても、これであわせて解決です。
「メンドーだな」と感じることをあらかじめやっておくことで、のちのちもっと多くのメンドーを被ることから逃れることができます。
郵送・配送する
これは、手渡しを避け、あえて郵送・配送するということです。
郵送・配送をすれば、郵便局や配送業者を通じて、「たしかに相手に渡した」ことの履歴を残すことができます。
手渡しの欠点は証拠が残らないことであり、その欠点を補おうというもの。
商品券を多くの件数渡さなければいけない、多額の商品券を渡さなければいけない、というときにはおすすめです。百貨店からの直送であれば、疑う余地もないでしょう。
役員報酬の中から贈答する(法人の場合)
贈答品リストを準備していたとしても、それが自作である場合。客観性に不足があることから、税務調査官の疑いが晴れないということがありえます。
「だから、相手先に確認する」と言われることはありうるでしょう。
もちろん、やめてくれという交渉はするものの。話は平行線をたどり、収拾がつかず。結局確認をしてもらうしかない、という事態も考えられないわけではありません。
そもそも。相手方を明示したくないような贈答品だってあるかもしれない。
そういう贈答品について、税務調査でのメンドーを覚悟するよりも。いっそ、社長への役員報酬とする方法も検討に値します。
つまり、贈答品代も含めて役員報酬を決定し、支給する。そして、役員報酬の中から贈答します。
役員報酬には所得税が課せられるものの、会社としては役員報酬が問題なく経費になり、贈答について疑いをかけられることはなくなります。
所得税分が損ではないか! という見方はありますが。税務調査でのメンドーとどちらを優先するのか、という話です。
ピッカピカにクリーンな贈答品代であることがベストですが、次善策としての「役員報酬支給」も覚えておくとよいでしょう。
まとめ
中元・歳暮など贈答について。税務調査での注意点、対策としての経理ポイントをお話ししてきました。
事実がなんの問題もない贈答品代であるからこそ。税務調査で疑われることがないように、そのつど万全の経理をしておくことです。
証拠資料を残すことに気を配りましょう。論より証拠がモノを言います。
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きょうの執筆後記
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