取引銀行を選ぶなら、やっぱりメガバンクだよね?
って、ほんとうに? たしかに、メガバンクの信頼・安心はあるけれど。
会社や個人事業者の銀行選びにおいて、必ずしもメガバンクがベストだとは言えない2つのケースについてお話します。
メガバンクがベストではない「融資」と「決済」
会社や個人事業者の銀行選びについて、「取引銀行はメガバンクがいい」という話を耳にします。
たしかに。全国展開のメガバンクには、信頼感や安心感があるでしょう。
巨額の預金残高を持つ、巨大な銀行を総称して「メガバンク」と呼びます。現在、日本における3大メガバンクというと、「三菱東京UFJ銀行」「みずほ銀行」「三井住友銀行」です。
実際、会社案内や自社ホームページの「取引銀行」にメガバンクを記載すれば、対外的な信用を後押しするのかもしれません。
また、得意先からの入金口座として、メガバンクを指定することも同様です。
そのように考えると。メガバンクの口座を持つこと自体には、一定のメリット(=とくに対外的な信用)がある。と、言えるでしょう。
けれども。取引銀行として「メガバンクがベスト」かというと、そういうわけでもありません。ベストではないのは次のケースです↓
- 銀行から「融資」を受けようとするケース
- 銀行で「決済(振込支払)」をしようとするケース
このあと、上記2つのケースについて詳しく見ていきます。
銀行から「融資」を受けようとするケース
年商10億円未満(←だいたいの目安として)の会社・個人事業者が「融資」を考える際には、「メガバンクがベスト」だとは言えません。むしろ、不適当です。
結論として。年商10億円ていど未満の会社・個人事業者が融資を考えるのであれば、地方銀行や信用金庫・信用組合を選びましょう。
メガバンクの融資先は大企業が原則
なぜ、年商10億円ていど未満の会社・個人事業者は、地方銀行や信用金庫・信用組合を選ぶべきなのか?
メガバンクの融資先が、原則、大企業だからです。
巨大な組織・預金を背景に、世の中の信用を得ているメガバンクには、融資を求めて多くの会社・個人事業者が集まります。
よって、メガバンクが融資先を選ぶにあたっては「よりどりみどり」。メガバンクは、大企業を中心とした優良な相手先への融資が中心になります。
結果として、大企業に比べると業況が不安定である「小規模な会社・個人事業者」への融資をするには及びません。
言葉を選ばずに言えば。危険がある小規模な会社や個人事業者にちっちゃくおカネを貸さずとも、優良な大企業にでっかくおカネを貸せばいい。それがメガバンクです。
小さな会社・個人事業主が選ぶべきは信用金庫・信用組合
メガバンクの融資先が大企業であるならば。大企業の対極にある、小さな会社や個人事業者はどうしたらよいのか?
答えは、信用金庫・信用組合です。金融機関としての規模は小さいですが、地域密着、その地域の会社・個人事業者にやさしいのが信用金庫・信用組合です。
地方銀行については、メガバンクと信用金庫・信用組合のあいだ、という位置付けです。
目安として、自社の年商が3億円ていどまでは信用金庫・信用組合、3億円から10億円ていどまでは地方銀行、10億円超でメガバンク。そのようなイメージです。
融資における銀行選びのポイントは、自社の身の丈(年商など)にあった銀行を選ぶ、というところにあります。必ずしも「メガバンクがベスト」ではない、というのはそういう意味です。
中小企業・個人事業者が融資を相談すべき金融機関として、「日本政策金融公庫」も挙げられます。日本政策金融公庫は、政府系の金融機関です。
民間銀行が融資をしにくい(あるいは嫌がる)小さな会社や個人事業者への融資や、開業・創業融資などを積極的に行っています。融資の選択肢として覚えておきましょう。
メガバンクからの「お誘い」に浮かれてはいけない
メガバンクからの融資は、基本、大企業だとお話をしました。しかしながら、大企業ではなくとも場合によっては、メガバンクから融資の提案があるかもしれません。
「ウチもついに大企業並みかっ!?」と喜ぶその前に。その提案については、確認をすべきことがあります。
それは、「プロパー融資」なのか、それとも「信用保証協会の保証付融資」なのかということです。
プロパー融資とは、その金融機関が単独でリスク(融資先が返済不能になる)を負って貸し出しをする融資です。いっぽう、信用保証協会が銀行のリスクを一部(あるいは全部)肩代わりするのが、保証付融資です。
確認の結果、プロパー融資の提案なのであれば。それは、銀行が貸し出し先として「優良」だという評価をした証と言えます。メガバンクと取引するのもOKです。
しかし、保証付融資なのであれば。「併せてプロパー融資もお願いできますか?」と確認をしてみましょう。
そこでプロパー融資も検討してもらえるのであれば、やはり、相応の評価をしてもらえているということ。そのメガバンクと取引をするのもよいでしょう。
けれども。「いや、プロパー融資は無理です」と言われたら。それは、一定の評価を得られていないということです。プロパーのリスクを推してまでは融資をしない、ということです。
この場合、保証協会が付いているから貸してくれるだけの話なので、そのメガバンクからの融資はやめておきましょう。
それよりも、身の丈にあった信用金庫などで、保証付融資とあわせてプロパー融資を相談すべきです。身の丈にあった金融機関であれば、プロパー融資を検討してもらえる可能性は上がるからです。
保証協会の保証付融資には「枠」があります(無担保・無保証融資で8,000万円)。その「枠」は、プロパーのリスクを負ってくれる銀行に対してこそ提供すべき。と、覚えておきましょう。
平時はできるだけプロパー融資を引き出すことで保証協会の枠を温存し、会社がきびしいときに保証協会の枠を使う(プロパーよりは融資の可能性大)のが鉄則です。
銀行で「決済(振込支払)」をしようとするケース
預金口座からの振込支払などの「決済」については、「メガバンクがベスト」だとは言えないケースがあります。
結論として、決済に関してはネット銀行(リアルの店舗を持たない銀行)や、振込手数料削減サービスも検討しましょう。
窓口に行く手間、高い振込手数料
お客さまからの入金用口座がメガバンクだからという理由で、支払用口座も同じメガバンク。というケースがあります。
この場合、次の点を確認してみましょう↓
- 窓口で支払手続きをするために時間をかけていないか(店舗が遠い、窓口・ATMがいつも混んでいる、など)
- 振込手数料が高くないか(インターネットバンキングでの振込も含めて)
上記はメガバンクに限ったことではありませんが。窓口やATMに行く時間、そこで待つ時間、その手間やコスト(人件費)は、決して小さくありません。
「決済」における銀行選びの際には、そのあたりのことを考慮する必要があります。「銀行に行くのも仕事」という考え方は見直す必要があります。
すると、いつも窓口やATMが混んでいるイメージがあるメガバンクよりは、地方銀行、信用金庫などのほうがよさそうという考え方もあるでしょう。
そもそも、店舗まで行くことがムダだと思えば、インターネットバンキングの選択肢もあるはずです。
そのときにもうひとつ。振込手数料についても検討を加えましょう。窓口での手続きによる振込手数料はもちろんですが、ATMもインターネットバンキングでの振込手数料も割高です。
何に対して割高なのかというと、「ネット銀行」や「振込手数料削減サービス」に対してです。
ネット銀行の振込手数料
たとえば、某メガバンクの窓口で、他行に3万円以上を振込する場合。1件あたり864円(税込)の振込手数料がかかります。
これに対して、某ネット銀行での振込手数料は、1件あたり258円(税込)です。このときのメガバンクとネット銀行における振込手数料の差は、1件あたり606円(税込)になります。
たかが606円と思われるかもしれませんが。仮に月10件の振込があれば、年間で7万円以上の金額差が生じます。
振込手数料について言えば、取引先への支払いのほか、従業員への給与振込もありますから。大企業でなくとも、年間10万円単位での金額差が生じることは少なくありません。
ゆえにこの金額差を考えると、支払用口座としての銀行選びは、「メガバンクがベスト」だとは言えないのです。
振込手数料削減サービスの振込手数料
とはいえ、メガバンクに支払用口座を持ちながらもなんとかならんのか、と言うのであれば。振込手数料削減サービスというものもあります↓
- 弥生の一括振込サービス
- オリックスの振込サービス「Flico」
振込の事前に、専用口座へ資金移動をする(指定日に専用口座から各振込先に振込をするしくみ)などの制約はありますが、ケースによっては振込手数料を大幅削減することが可能です。
たとえば、オリックスの振込サービス「Flico」は、給料以外の振込手数料が一律 260円(税抜)です。初期の導入費用もなく、はじめることができます。
また、弥生の一括振込サービスでは、給料振込手数料が他行宛でも103円(税込)が強みです。弥生の会計・給与・販売ソフトなどを使っているような場合には、検討してみるとよいでしょう。
メガバンクを支払用口座にしたいのであれば、このような振込手数料削減サービスの導入が選択肢になります。
まとめ
『取引銀行はメガバンク』が間違っている2つのケースとは、についてお話をしてきました。
全国展開のメガバンクには、信頼感や安心感がありますが。全てのケースにおいて、「メガバンクがベスト」ではありません。
「融資」と「決済」については、他の銀行選びの視点を持ちましょう。
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きょうの執筆後記
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