はい、質問。御社の銀行融資残高、そのうちいくらが「プロパー」で、そのうちいくらが「保証付き」かわかりますか?
「いや、わからない」というあなたや。「そもそもプロパーってなに?」というあなたにおすすめのお話をします。
その融資、プロパーですか? それとも保証付きですか?
銀行融資には、大きく分けて「プロパー融資」と「保証付き融資」があります。
どちらも銀行からおカネを借りるという意味では同じものですが、実は「借りやすさ」が違います。
裏を返すと、おカネを貸す側の銀行から見て「貸しやすさ」が違う。では、貸しやすい・借りやすいのはどっち?
答えは「保証付き融資」です。保証付き融資のほうが、圧倒的に貸しやすく借りやすい。これ大事(理由は後述します)。
ところが。「よしよし。それじゃあいつも保証付き融資で借りればイイ」というわけにはいきません。
保証付き融資には融資の金額に「枠(限度額)」があるからです。それ以上の金額は無理、という限度があります。
そこで、きょうのお話はこうなります↓
- そもそも、プロパーってなに?保証付きってなに?
- 自社の融資がプロパーか、保証付きかを把握しよう
- 保証付きはいざというときのために温存しよう
借りやすい「保証付き」だけれど枠がある。だからその枠は、いざというときのために温存しておこう。そんなお話です。
それでは順番に見ていきましょう。
本記事で対象にする銀行融資は、「民間」の金融機関による融資です。「国」の出資である日本政策金融公庫の融資については、本記事の対象ではありません。
そもそも、プロパーってなに?保証付きってなに?
プロパー融資と、保証付き融資について。「知ってるよ」というあなたは、この項目は飛ばし読みしていただければ。
信用保証協会が肩代わりする「保証付き」
まずは「保証付き融資」から説明します。
万が一、銀行から借りたおカネを会社が返済できない場合。会社の代わりに「信用保証協会」が肩代わり(保証)をしてくれるのが「保証付き」融資です。
と言っても、まったくの「チャラになる」わけではありません。銀行に返済をしなくてよい代わりに、信用保証協会に返済をしていきます。
とはいえ、信用保証協会が保証をしてくれることで、銀行は「貸し倒れ(貸したおカネが返してもらえないこと)」の心配をあまりしないで済むことになります。
ゆえに、銀行はおカネを貸しやすい。冒頭、保証付き融資が「貸しやすい」と言ったのはそういう理由です。
信用保証協会とは、「信用保証協会法」という法律にもとづき、設立・運営される「公的機関」です。
銀行がリスクを負って貸し出す「プロパー」
前述した信用保証協会の保証が無い融資、つまり、それぞれの銀行が単独で「貸し倒れ」のリスクを負うのが「プロパー」融資です。
貸し出したおカネを回収できなければ、丸々損失を被ることになるため、銀行の貸出姿勢としては「慎重」にならざるを得ない。
具体的には、融資審査がきびしくなります。業績の良い会社でなければ、プロパーで融資を受けるのは難しいというイメージです。
したがって、相対的に、保証付きよりも「貸しにくい」ということになります。
自社の融資がプロパーか、保証付きかを把握しよう
プロパー融資と、保証付き融資の違いを理解したところで。自社の既存の銀行融資について、プロパー融資がいくらか、保証付き融資がいくらかを把握してみましょう。
このあとお話する「保証付きはいざというときのために温存しよう」の大事な準備作業です。
銀行からの評価の証「プロパー」はあるの?
自社がいま銀行から受けている融資について、プロパーと保証付きとを区分してみましょう。
さて。プロパー融資はありましたか?
「あったよ」ということであれば。それは、その銀行からの評価・信用が高いということを表しています。銀行単独でリスクを負ってまで貸すプロパー融資とはそういうものです。
逆に「保証付きしかない」ということならば。おつきあいをしている銀行からは、プロパーで融資をできるほどの評価・信用を受けていないということになります。
ですからもし、銀行が「借りてください」「貸します、貸します」と言っても。それが「プロパーなのか、保証付きなのか」で、その意味合いはぜんぜん違うのです。
銀行からの評価・信用を確認するためにも、自社が受けている融資については、プロパーと保証付きの区分をして把握をするようにしましょう。
保証協会付き融資の枠は 8,000万円
ここで、保証付き融資の「枠(限度額)」について触れておきます。信用保証協会の保証付き融資には、枠が設けられているという話です。
具体的には、無担保については 8,000万円。有担保については 2億円。
つまり、担保は無しで融資を希望するのであれば、8,000万円までは「保証協会付き」の枠があるということです。
もっとも、この「8,000万円」は「最大」という意味ですから、絶対に8,000万円までOKということではありません。
いずれにせよ大事なのは、無担保融資で利用できる「保証付き」には枠(最大8,000万円)があるということです。保証付き融資は無限ではなく、有限だということ。
であるならば。銀行からして貸しやすい保証付き融資は、なるべく温存しておくに限ります。自社の業績悪化時など、プロパーがきびしいときのために保証付きは温存するのです。
融資を受けるのであれば、まずはプロパーを狙い、どうしてもダメならしかたなく保証付き、という考え方を持ちましょう。
上記で触れた「枠」は「一般枠」と呼ばれるものです。この一般枠とは別に「特別枠」もあります。特別枠は、非常に状況がきびしい会社の救済や、優れた企業の支援のためなどに準備されています。
保証付きはいざというときのために温存しよう
保証付きに限度があるのはわかった。じゃあ、どうやったらプロパーで融資を受けられるのか? というお話をしていきます。
おつきあいすべき銀行を間違えない
まずは、おつきあいをしている銀行に間違いはないかを確認しましょう。
「銀行」とひとことで言ってもいろいろです。これを大きなくくりで分けると、「都市銀行」「地方銀行」「信用金庫・信用組合」という3つのグループに分けられます。
これらのグループは、それぞれ役割分担されているという理解が必要です。
イメージで言えば、都市銀行は大企業向けの融資担当、信用金庫・信用組合は小規模零細企業向けの融資担当、地方銀行はその中間。そんなイメージです。
これをプロパー融資に置き換えてみると。都市銀行でプロパー融資の検討対象になるのは、年商10億円ていど以上の企業です。
地方銀行はどうかというと、年商3億円ていど以上の企業です。信用金庫・信用組合は、年商1億円ていど以上の企業。このあたりが、プロパー融資を狙えるかどうかの目安です。
上記のとおり、企業の規模感などによって、プロパー融資が期待できる銀行は異なります。
ですから、プロパー融資を狙うのであれば、自社の身の丈に合った銀行を選びましょう。背伸びをしていたのでは、プロパー融資は難しくなるばかりです。
「数字」をよくする
身の丈に合った銀行選びができたなら。あとは、「数字」をよくすること。
ありきたりな話ではありますが、やはり「数字」は大事です。銀行のいちばんの評価対象は「数字」なのですから。
具体的には、「決算書をどれだけ良い状態にできるかどうか」です。
このとき、銀行融資という観点から見た「良い決算書」とは次のとおり↓
- 簡易キャッシュフロー(税引後利益+減価償却費)がプラス
- 債務超過(資産より負債が多い)ではない
- 債務償還年数(融資残高÷簡易キャッシュフロー)が10年以下
いろいろ細かい話はあるとしても、大きなところでは、上記の3点をクリアできる決算書が「良い決算書」です。
また、クリアの度合いが大きければ大きいほど、「銀行融資に強い決算書」になります。最終的には、「いかに利益を出すか」が決算書を強くするポイントです。
利益を抑えて、納税を減らしたい気持ちと戦いながら、どれだけ利益を出せるかにかかっている。と言ってよいでしょう。
まとめ
自社の銀行融資が『プロパー』か『保証付き』かわかってる?、ということについてお話をしてきました。
融資を受けていることはわかっていても、それが「プロパーか保証付きか」をわかっていないケースは少なくありません。
まずは、その状況を把握して。できるだけプロパー融資を狙っていきましょう。保証付き融資は、いざというときのために温存です。
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きょうの執筆後記
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