固定資産を中古で買う、捨てる、売却する、プライベートで使っていたものを仕事で使うことにする…など。
フリーランスが使っている固定資産について、ちょっとイレギュラーなケースをまとめてみます。
中古、廃棄、売却など…フリーランスが使う固定資産の経理まとめ
フリーランスの確定申告・経理で、アタマを悩ませることのひとつに「固定資産」の取扱いが挙げられます。
標準的な減価償却の計算ならまだしも、ちょっとイレギュラーなことが起きると… あぁ、もうどうしていいかわからないっ!
というわけで。フリーランスの固定資産について、ふつうとはちょっと違う「イレギュラー」なケースをまとめてみました ↓
- 年の途中で買ったとき
- プライベートでも使うとき
- 中古で買ったとき
- プライベート用から仕事用にしたとき
- 捨てたとき
- 売却したとき
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
年の途中で買ったとき
固定資産を年の途中で買った場合には、買ったとき以降の減価償却費しか経費にはできません。
つまり、「1年分まるまる」の減価償却費を経費にしてはいけませんよ。ということです。たとえば、
【問】4月に購入したクルマ 300万円(耐用年数6年)の、今年の減価償却費はいくらか?
【答】減価償却費 = 3,000,000 × 償却率 0.167 × 9/12 =375,750円
- 上記の償却率は「定額法」の場合です。「定率法」の場合には 0.333です
ポイントは、「9/12」をかけるところです。1年(1月〜12月)のうち、4月からの9ヶ月間の使用ですから、「9/12」です。
なお、使用期間にひと月未満の端数がある場合にはひと月として計算します。
プライベートでも使うとき
買った固定資産を、仕事だけではなく「プライベートでも使う」というときには、プライベート分を除いた分だけが経費です。具体例で見てみましょう ↓
【問】仕事用7割、プライベート用3割として使っているクルマ(年間の減価償却費 50万円)について、経費にできる金額は?
【答】経費にできる金額 = 500,000 × 事業専用割合 0.7 = 350,000円
- 事業専用割合の考え方については、こちらの記事を参考に ↓
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ポイントは、仕事用に使っている割合(事業専用割合と言います)である「7割(0.7)」をかけることです。
なお、これを仕訳にすると次のとおりです ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
減価償却費 事業主貸 | 350,000 150,000 | 車両運搬具 | 500,000 |
プライベート分(3割)は、「事業主貸」として経費からは外します。
中古で買ったとき
固定資産を「中古」で買ったときには、通常の減価償却とは「耐用年数」が異なります。
中古であることを考慮して、新品の場合よりも耐用年数が短くなる(より経費を多く計上できる)ように、「中古耐用年数」を計算します。具体例で見てみましょう ↓
【問】3年落ち(初年度登録から3年)のクルマ(新品の場合の耐用年数 6年)を買った場合の耐用年数は?
【答】中古耐用年数 =(新品の場合の耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%
=(6年 − 3年)+3年 × 20%
= 3.6年 → 3年(1年未満の端数切り捨て)
- 新品の耐用年数よりも経過年数が大きい場合には、「中古耐用年数=新品の場合の耐用年数 × 20%」で計算
- 経過年数に1年未満の端数がある場合には、月数に換算して上記算式に当てはめる
ポイントは、中古の場合には、耐用年数を計算する算式があること。算式で計算したあとの1年未満の端数は切り捨てること、です。
プライベート用から仕事用にしたとき
たとえば、クルマやパソコンなど。これまで「プライベート用」として使っていたけれど、これからは「仕事用」で使うことにしよう、という場合です。
「いま」の価値で帳簿に計上する
固定資産を買ったときから「いま(仕事用にしようとしたとき)」までのあいだ使ってきたことで、その固定資産の価値は減っているはずですよね。
そこで。減ってしまった価値を計算し、「いま(仕事用にしようとしたとき)」の価値を求めます。具体例で見てみましょう ↓
【問】プライベート用として 1年5ヶ月前に買ったクルマ(当初購入金額 300万円・耐用年数6年)を仕事用にするときの「いま」の価値は?
【答】「いま」の価値 = 当初購入金額 3,000,000 − 1年5ヶ月で減ってしまった価値
というわけで、「1年5ヶ月で減ってしまった価値」が問題になります。ここがちょっと難しいのですが、具体的には次のように計算をします。
- 耐用年数 ・・・ 6年 × 1.5 = 9年 → 旧定額法償却率 0.111
- プライベート用として使った期間 ・・・ 1年5ヶ月 → 1年(6ヶ月以上は1年、6ヶ月未満は切り捨て)
- 1年5ヶ月で減ってしまった価値 = 3,000,000円 × 0.9 × 償却率 0.111 × 1年 = 299,700円
ポイントが盛りだくさんでおなかいっぱいになりそうですが、がんばって。
プライベートで使用中の耐用年数は「1.5倍」で計算すること。償却率は「旧定額法」の償却率を使うこと。期間は、6ヶ月を境に端数処理があること。
さいごに、減ってしまった価値を計算する際には、途中で「0.9」をかけること。で、結論がこちら ↓
【問】プライベート用として 1年5ヶ月前に買ったクルマ(当時購入金額 300万円・耐用年数6年)を仕事用にするときの「いま」の価値は?
【答】
- 「いま」の価値 = 当時購入金額 3,000,000 − 1年5ヶ月で減ってしまった価値
- 「いま」の価値 = 3,000,000 − 299,700 = 2,700,300円
よって、この「2,700,300円」にて、クルマを帳簿に載せることとなります。仕訳にするとこうですね ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
車両運搬具 | 2,700,300 | 事業主借 | 2,700,300 |
当初 3,000,000円で買ったクルマは、これから「毎年の減価償却」によって、合計 2,700,300円を経費にできる。ということになります。
では、毎年の減価償却費はいくらになるのか?
経費にできる減価償却費を計算する
経費に計上することができる「毎年の減価償却費」を計算してみましょう。仕事に使うことにした1年目のケースがこちら ↓
【定額法の場合】
毎年の減価償却費 = 当初購入金額 3,000,000 × 定額法償却率 0.167 = 501,000円
【定率法の場合】
毎年の減価償却費 = 「いま」の価値 2,700,300 × 定率法償却率 0.333 = 899,199円
- 償却率は、当初購入時期が平成24年4月1日以降であることを前提にしています(償却率は当初購入時期によって異なります)
- 仕事に使うことにした時期が年の途中である場合には、「月数あん分」が必要です
- 定率法を使って計算する場合には、事前に税務署への届出が必要です ↓
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捨てたとき
使わなくなった固定資産を捨てた場合には、その時点で残っていた価値分の金額(まだ減価償却されていない金額)を経費にします。具体例で見てみましょう ↓
【問】5年間仕事で使ってきたクルマ(まだ減価償却されていない金額 30万円)を廃車にした場合に経費にできる金額は?
【答】「固定資産廃棄損」として、300,000円が経費
これを仕訳にすると ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
固定資産廃棄損 | 300,000 | 車両運搬具 | 300,000 |
これで、車両運搬具の金額はゼロになる、ということです。
ちなみに、このクルマが「仕事7割・プライベート3割」の利用だった場合、固定資産廃棄損として経費にできるのは「仕事7割」分だけですからご注意を ↓
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
固定資産廃棄損 事業主貸 | 210,000 90,000 | 車両運搬具 | 300,000 |
売却したとき
いままで使っていた固定資産を売却したときには、2つの点に注意が必要です ↓
- 売却による利益・損失は「譲渡所得」の計算が必要
- 売却について仕訳をする
順番に見ていきます。
売却による利益・損失は「譲渡所得」の計算が必要
固定資産を売却した場合の利益・損失は、「事業所得(フリーランスの仕事による利益)」の計算とは別にしなければいけません。
所得税では、「所得(利益のようなもの)」を10種類に区分しているのです。所得の内容に応じて別々に計算しなさい、ということです。
なお、固定資産を売却したときの利益・損失は、「譲渡所得」という区分になります。これを「事業所得(フリーランスの仕事による利益)」に混ぜてはいけません。
では、「譲渡所得」はどのように計算するのか、について。ここではあまり深追いをせず、カンタンにお話をしておきます ↓
- 譲渡所得 = 売却金額 -(売却時にまだ減価償却が済んでいない金額+譲渡するのにかかった費用)- 特別控除額 50万円
- 特別控除額は、控除後にマイナスになる場合には、ゼロになるまでの金額しか控除できません
- 所有していた期間が5年を超える場合には、上記の「譲渡所得」の金額をさらに2分の1します
- 確定申告では、「譲渡所得の内訳書(総合譲渡用)」を添付して、上記の譲渡所得金額の計算をします
売却について仕訳をする
「事業所得」と「譲渡所得」の計算は別、と言いましたが。固定資産を売却したことについての仕訳は必要です。
でなければ、売却してなくなったはずの固定資産が帳簿に残ってしまいますので。具体例で見てみましょう ↓
【問】クルマを売却した際の仕訳は?(まだ減価償却が済んでいない金額 30万円、売却金額50万円)
【答】
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
普通預金 | 500,000 | 車両運搬具 事業主借 | 300,000 200,000 |
ということで、売却利益にあたる「200,000」円は、「事業主借」として仕訳をすることで、「事業所得」の計算上は利益から外れます。
代わりに、「譲渡所得」として、利益を計算するわけです。
では、売却した結果、利益ではなく損失になる場合はどうなるか? こちらです ↓
【問】クルマを売却した際の仕訳は?(まだ減価償却が済んでいない金額 30万円、売却金額20万円)
【答】
勘定科目(借方) | 金額 | 勘定科目(貸方) | 金額 |
普通預金 事業主貸 | 200,000 100,000 | 車両運搬具 | 300,000 |
こちらも、売却による損失を「事業所得」の計算から外すために、売却損失にあたる金額は「事業主貸」として仕訳をします。
まとめ
フリーランスが使う固定資産の経理について、イレギュラーなケースをまとめてみました。
通常の減価償却などとは異なる経理が必要であることを覚えておきましょう。
- 年の途中で買ったとき
- プライベートでも使うとき
- 中古で買ったとき
- プライベート用から仕事用にしたとき
- 捨てたとき
- 売却したとき
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