” 無借金経営はいいよね ”
って、言われますけど。その「無借金」は、2種類ある無借金のうちどちらのことを言ってるの? というお話です。
「無借金」には2種類ある
ちまたでは、「無借金経営はすばらしい」と言われます。
でも、「無借金」には種類があることをご存知ですか? 「完全無借金」と「実質無借金」の2種類です。
この2種類の無借金を理解しないままに、「無借金経営はすばらしい」の言葉を鵜呑みにすると。思いもよらず、会社を潰してしまうかもしれません。
「無借金」の理解が足りず、借金をしなかったことを理由に潰れる会社があります。
いっぽうで。借金をしていたことを理由に潰れない会社があります。
というわけで。2種類ある「無借金」について、きちんと理解を深めておきましょう。というお話がこちらです ↓
- 「完全無借金」と「実質無借金」の違い
- 完全無借金を目指してはいけない
- 完全無借金を目指せるのはいつなのか
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
つまり、完全無借金・実質無借金うんぬん以前に、銀行以外からおカネを借りるのは総じてよろしくない、ということです。
「完全無借金」と「実質無借金」の違い
冒頭でお話をしたとおり、「無借金」には2種類あります。
完全無借金と、実質無借金です。まずは、両者の違いを確認しておきましょう。
難しいことはありません。両者について、それぞれひとことで表すのなら次のとおりです ↓
- 完全無借金 ・・・ 文字どおり、借金がまったくない状態
- 実質無借金 ・・・ 借金はあるけれど、「現金・預金の残高 > 借金の残高」の状態
したがって。借金がまったくない、ゼロですよ。というのが「完全無借金」です。
そして、借金はしているけれど、借金の額よりも、手元にある現金・預金のほうが多いよ。というのが「実質無借金」です。
これを図にしてみましょう ↓
上図について。完全無借金のB社は、現金・預金を 300万円持っています。借金はゼロ。
対する、実質無借金のA社は、現金・預金 1,300万円。借金は 1,000万円。
もし、A社が手持ちの現金・預金を使って、借金を一気に完済したら? 現金・預金は 300万円、借金はゼロ。これは、B社とまったく同じ状況です。
さぁ、ここで質問です。あなたが社長なら、A社・B社どちらの会社の社長をやりたいですか?
完全無借金を目指してはいけない
実質無借金のA社と完全無借金のB社、どちらがよいか? とたずねました。
その解答について。いろいろな考え方があることを承知で、あえてこう言います ↓
まずは、実質無借金(A社)を選ぶべき(完全無借金を目指してはいけない)。
これに対して、借金ゼロ(完全無借金)のほうが気持ちがいいじゃないか、という考え方もあるでしょう。
たしかに、気持ちはよいかもしれません。けれども、完全無借金には「致命的な欠点」がある。これを見過ごしてはいけません。
完全無借金の欠点=借りたいときに借りられない
完全無借金にはいくつかの欠点がありますが。細かいことはひとまずさておき、もっとも大きな欠点を挙げるとすれば。それは、
借りたいときに借りられない(銀行からの融資が受けにくい)
そんなバカな。無借金経営は最強ではないのか? 借金のない会社こそがすばらしく、銀行だって貸したくてしかたないだろう。と、思われるかもしれません。
残念。完全無借金の会社に対して、銀行は「貸したくてしかたがない」とは考えないのです。代わりに、「完全無借金の会社はなんかアヤシイ…」と感じます。
この「完全無借金=アヤシイ」という心境の出どころについて端的に言えば、「どこの銀行も貸してくれないだけではないか?」との疑念です。
なんとまぁ、うがった見方か… と嘆いたところでしかたありません。銀行はビジネスとしておカネを貸すのですから、「疑り深いくらいがちょうどいい」のです。
というわけで。「無借金+黒字」というような一見すばらしい会社でも、「なんかウラがあるのではないか? ウチがそれを知らないだけなのではないか?」と銀行は考えます。
結果、融資が受けられない。受けられたとしても、審査にミョーに時間がかかる。つまり、借りたいときに借りられない、というのが「完全無借金」のもっとも大きな欠点です。
いざというときにじゅうぶんな手元資金が無ければ、最悪、会社は潰れてしまいます。完全無借金の気持ちよさに惑わされてはいけません。
実質無借金の欠点として、よく言われるものが「利息」です。たしかに、銀行から融資を受ければ、利息の支払が必要です。
けれども、いざというときにおカネが足りずに潰れてしまうことを避ける「保険料・安心料」だと考えてみたらどうでしょう? 実際の利息額を計算してみれば、大きな欠点というほどには高額でないことに気づきます。
完全無借金を目指せるのはいつなのか
ついさきほど、こんなことを言いました ↓
いざというときにじゅうぶんな手元資金が無ければ、最悪、会社は潰れてしまいます。
であるのなら。「じゅうぶんな手元資金」がありさえすれば、「完全無借金」でもいいじゃない? と思われるかもしれません。
理屈としてはそのとおりです。けれども、「じゅうぶんな手元資金」とはどれほどの金額を言うのか、ということについては注意が必要です。
結論として。少なくとも月商の3ヶ月分ていどの現金・預金は持ちたいところです。本音で言えば、多ければ多いほどいい。
にもかかわらず。現実には、月商の1ヶ月分そこそこの現金・預金で完全無借金、という会社は決して少なくありません。
月商1ヶ月分の現金・預金というのは、「かなりきびしい資金繰り」を余儀なくされる金額です。そのうえ、ちょっとなにか起きたら、すぐに資金ショートを起こします。
前述したとおり、完全無借金の会社は「借りたいときに借りれない」のですから、突然の資金ショートは致命傷になります(経営者自身がおカネ持ちであれば別ですが)。
借入をせずに潰れる会社か、借入をして潰れない会社か
完全無借金には、月商3ヶ月分を超える現金・預金が必要だと言いました。
とはいえ、自己資金でそこまでのおカネを持つのは容易ではありません。この点は、多くの経営者が経験から理解をできることでしょう。
そう考えると。借りてでもおカネを持つことです。
とくに資金調達手段が限られる小規模零細企業は、銀行融資を使って手元のおカネを増やしておくことです。
借金があると思うとなんだか気持ちが悪くって… という気持ちは理解します。
ですが、銀行からの借金があったとしても、借りたおカネが手元にあるうちはいつでも完済できます。借りていないのと同じです。
同じ無借金を目指すなら、まずは「実質無借金」を目指しましょう。完全無借金にこだわるあまり、会社を潰してしまっては元も子もありません。
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まとめ
完全無借金と実質無借金についてお話をしてきました。
誤った無借金経営で会社を潰してしまうことがないように。2種類の無借金の違いをきちんと理解しておきましょう。
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きょうの執筆後記
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