” 奥さんに数字を見せますか、って? 見〜せない。だってさぁ… ”
ほんとうにそれでいいの? というわけで、フリーランスが配偶者に「数字(経理)」を見せるメリット・デメリットについてお話をします。
フリーランスが配偶者に「数字(経理)」を見せるメリット・デメリット
「ひとり税理士」として独立開業してから、2年と2ヶ月ほどになります(2018年5月31日現在)。
そんなわたしが開業当初からやっていることのひとつに、「配偶者(わたしの場合は妻)に数字を見せる」が挙げられます。
ここで言う「数字」とは、帳簿つけ(経理)における数字のことです。売上や経費、利益がいくらか、とか。現金や預金はどれくらいあるか、借金はどれくらいあるか、とかとか。
毎月月初(原則、毎月1日)に、前月末時点の数字を妻に見せ、「現状の説明」と「今後の予測・展開」についてを伝えるようにしています。
見せる数字はフルオープン(全公開)です。隠しごとはいっさいなし(って、なぜか隠しごとが前提w)。
この「フリーランスが配偶者に数字を見せる」について。わたし自身は「メリットあり!」として、妻に数字を見せているわけですが。世の中的には、賛否両論あることでしょう。
そこであらためて、フリーランスが配偶者に「数字(経理)」を見せるメリット・デメリットを考えてみることにしました。こちらです ↓
- 帳簿つけ(経理)が早くなる
- 「見えない不安」を軽減できる
- 良いプレッシャーがかかる
- 「ヒミツにしたい経費」が使えない
- 不安や悩みを共有してしまう
- わかってもらえずに孤立する
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
配偶者に数字を見せる「メリット」
まずは、フリーランスが配偶者に数字を見せる「メリット」から。
帳簿つけ(経理)が早くなる
多くのフリーランスがアタマを痛めるもののひとつに「帳簿つけ(経理)」があります。
どうしても手をつけられず、確定申告期限のまぎわになって大慌て… というのはフリーランスあるあるです。
そんなことになってしまうのは、確定申告が1年に1回だからであり、その1回に1年分もまとめてやらなければいけないからだ。と言ってもよいでしょう。
これに対して。たとえば、「毎月1回、配偶者に数字を見せる」と決まっていれば。その毎月1回が「締切」となり、1年も帳簿つけを貯め込むことはなくなります(配偶者が締切にきびしいほど◯)。
本来は「自分自身のために」と、自発的にタイムリーな帳簿つけを期待したいところではありますが。「配偶者のため」という受け身な動機であれ、帳簿つけ(経理)が早くなるのはよいことです。
フリーランスとして仕事をしていくうえで、または、生きていくうえで、さまざまな判断が必要になります。
そのときに。なんとなく儲かっていそうだ、とか。なんとなくおカネが足りそうだ、とか。なんとなく、という「感覚」をもとにした判断とは頼りないものであり、危険なものです。
「感覚」とは総じてあいまいであり、楽観的な甘さを生む傾向にあるからです。いっぽうで、揺るぎようのない事実をあらわす「数字」をもとにした判断は、確実性・安全性の高いものです。
確実で安全な判断に役立つ「数字」を知るために、タイムリーな帳簿つけを目指しましょう。
「見えない不安」を軽減できる
フリーランスの収入は、会社員のお給料ほどに安定的ではない。という見方・考え方があります。配偶者としては不安を感じるところでしょう。
これに加えて、たとえば「具体的な収入がわからない」という状況であれば、不安はいっそう高まるものです。
目に見える不安というのもありますが、目に見えないからこその不安というのもありますよね。目に見えればやりよう・考えようもあるけれど、見えなければ不安しかない。ということです。
そこでわたしは、毎月月初に、次のような数字を妻に見せることにしています ↓
- 仕事の現状 → 前月までの売上・経費・利益の推移実績
- 仕事の予測 → 年末までの売上・経費・利益の推移予測
- 家計の現状 → 前月までの支出の推移、前月までの資産・負債(※)の推移実績
※
資産 ・・・ 現金預金(事業用・プライベート用とも)、売掛金、株式・投資信託、仮想通貨、自宅不動産など
負債 ・・・ 事業用の借入金、クレジットカードの未払(引落前)、住宅ローンなど
これらの数字を見せる・伝えることで、配偶者の「見えない不安」を軽減できます。数字自体には不安がある(儲かってない、とか)かもしれませんが…
いずれにせよ。現状や将来についての情報を共有することで、仕事や家計についてのハナシ(お悩み相談や問題解決策の検討など)ができます。
フリーランス自身も、配偶者も、不安があるならばクチに出してしまうほうが健全だ。とも言えるでしょう。ひとりで抱え込むのも、ていどが過ぎればタイヘンです。
良いプレッシャーがかかる
配偶者に数字を見られる、と思うと。 もっと利益を出そう! なんて意識がはたらく、ということもあるでしょう。
かく言うわたしも、妻にはできるだけ不安を感じさせないような利益を、という意識はもっています(不安を感じていたら、すまぬ)。
そういう意味では、数字を公開することで、フリーランスには「プレッシャーがかかる」ことになります。数字で結果を出さねば…、みたいなことですね。
とはいえ。会社員のように、組織や上司に管理・束縛されることがないフリーランスにとって、この手のプレッシャーは貴重です。
誰か(配偶者)に見られる緊張感が、思考や行動を後押しすることもあるからです。というわけで、配偶者からのプレッシャーを粋に感じてがんばる。はい、がんばります。
配偶者に数字を見せる「デメリット」
続いて、フリーランスが配偶者に数字を見せる「デメリット」について。
「ヒミツにしたい経費」が使えない
配偶者に数字を明かすのはイヤだ! という理由についてたずねたときに多い回答が、「妻(主人)には見られたくない経費がある…」です。
つまり、配偶者には知られたくない、ヒミツにしておきたい経費がある、ということです。ヒミツの中身はひとそれぞれですが、それはそれとして。
配偶者に数字を見せるということは、当然、そのヒミツがバレてしまうという危険性が高まるわけで。
良いか悪いかは別にして、「ヒミツは隠しておきたいの」という場合には、配偶者に数字を見せるというのはデメリットでしかない! で、ハナシは終わってしまうことがしばしば。
これについては考え方の違いと言おうかなんと言おうか。ヒミツはよくないですよぉ、と控えめに進言をさせていただくばかりです。
ヒミツの経費が使えるのは気持ちがよい、というのが「良い点」だと考えると。「悪い点」は、自らを不幸にする可能性があるところでしょう。
何かの加減でバレてしまえば周囲からの信用・信頼を損ねるし。そもそもヒミツにしていること自体にもアヤシサは溢れ出るもので。すでに「信が置けぬ」と思われているかもしれません。怖い怖い。
不安や悩みを共有してしまう
前述したメリットの「見えない不安を軽減できる」でお話をしたことが裏目にでることがあります。
見えた数字が良くないもの(業績が悪い・おカネが無いなど)であり、現実を知った分だけ「よけいに不安になる」といったケースです。
配偶者からすれば「知らないほうが幸せだったんだけど…」みたいな。
このように数字が悪い・状況が悪い場合には、フリーランス自身も不安や悩みを抱えていて、それを配偶者と共有してしまうことになります。2人で沈んだ環境になる(あるいは言い争い?)。
それでも、差し迫った状態になってから打ち明けられても困るわけですから。本質的には、事態の解決を目的として、良くない数字であっても共有しておくべきでしょう。
ただし。配偶者の性格・資質において、ストレス耐性が極度に低いなどの問題があるならば。そこはあえて共有を差し控える(数字を見せない)、という選択肢は検討に値します。
わかってもらえずに孤立する
現状や将来について配偶者と共有をしたい、という想いから数字を見せたのにもかかわらず。わかってもらえない、ということもあるでしょう。
ひとつは、「数字」そのものを配偶者がきちんと理解できない、という意味での「わからない」です。端的に言えば、数字の意味や見方がわからないなど、専門知識面での問題です。
もうひとつは、「数字」そのものはわかるけれど、仕事の方向性やら価値観やらが理解できない、という意味での「わからない」です。
卑近なたとえで言えば、「なんでそんなに交際費使うの?」とか、「なんでまたパソコン買うの?」とか。さきほどの専門知識面の問題に対して、心情面での問題と言えます。
こうなると、フリーランス自身は「せっかく数字を見せているのに…」というネガティブな思いから、孤立感が高まるものです(えっと、わたし自身はだいじょうぶですよ、いまのところ)。
ちなみに、知識面の問題も心情面の問題も、解決策は「継続」です。一足飛びで、配偶者に対して「わかる」を求めず、根気強く数字を見せ続けて、ハナシをし続けることです。
自身が事業をしているあなたと、そうでない配偶者とのあいだには、「隔たり」があってあたりまえ。ある意味では、孤立を当然のものとして、根気強くいきましょう。
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まとめ
フリーランスが配偶者に「数字(経理)」を見せるメリット・デメリットについてお話をしてきました。
配偶者に数字を見せるか見せないか、を考える際の参考にしていただければ、と。
わたし自身はメリットしか感じていないので、「配偶者には数字を見せる」のがおすすめです。