” 銀行にリスケをお願いするのって、おカネが無くなってしまったときだよね ”
う〜ん、ちょっと違う。というわけで、「リスケの正しいタイミング」についてお話をします。
銀行にリスケを申し出る「正しいタイミング」とは?
「リスケ」とは、「リ・スケジュール(Re-Schedule )」の略称です。
銀行融資において、もともとの「返済条件を変更すること」をリスケと呼びます。
たとえば。毎月50万円(の元金)を返済する約束であったが、会社・事業の業況が厳しく、返済が難しくなってしまった…
そこで、毎月の返済額を減らしてもらえるように銀行と交渉をします。
結果、返済額を減額してもらうことができれば、それが「リスケした」という状況です。
ところで、このリスケ。いったいいつ、銀行に申し出るのが「正しいタイミング」なのでしょうか? その回答も含めて、次のようなお話をしていきます ↓
- できるだけおカネがあるうちにリスケ、が正解
- いきなりリスケを申し出てはいけない、がマナー
- リスケをするなら1円も返さない、が原則
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
できるだけおカネがあるうちにリスケ、が正解
リスケをするタイミングについて。実際に多いのは次のようなケースでしょう ↓
” もうダメだ。おカネが無くて、銀行への返済ができそうもない… リスケしよう ”
遅すぎます。リスケを申し出ることで、返済を止めることはできるかもしれませんが、手元のおカネが増えるわけではないからです。
したがって、返済以外の支払ができずに、残念ながら… という可能性が高まります。
「キャッシュフロー < 借入金返済額」がタイミング
結論として。リスケの正しいタイミングとは、次のとおりです ↓
「キャッシュフロー < 借入金返済額」のていどが大きく、長期化が判明したとき
※ キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費
上記について、少し解説をしますと…
借入金返済の原資は「税引後利益」です。そこに、現金の支出を伴わない費用である「減価償却費」を足し戻します。
この「税引後利益 + 減価償却費」をキャッシュフローと呼びます。
そのうえで「キャッシュフロー < 借入金返済額」という算式の意味するところは、返済原資である「キャッシュフロー」が「借入金返済額」を下回れば、手元のおカネが減り続けるということです。
加えて、「キャッシュフロー < 借入金返済額」のていど加減が大きいほど、手元のおカネはどんどん減り続けることになります。
よって、一時的に「キャッシュフロー < 借入金返済額」という状態はあるにしても、そのていど加減が大きく・長期化する可能性が高いとわかったのであれば、そこがリスケをするタイミングです。
このタイミングを逸することにより、手元のおカネを目減りさせ、再起するチャンスをも目減りさせてしまう会社・事業があります。
おカネが無くなってから、では遅すぎる
リスケの正しいタイミングとは、「キャッシュフロー < 借入金返済額」について、「長期化が判明したとき」だと前述しました。
ここで言う「長期化」を把握するためには、当然ながら「キャッシュフロー < 借入金返済額」を「予測しておく」ことが必要になります。
「予測」をするためには、「現状(実績)」の把握は欠かせないのであり、いわゆる「タイムリーな月次決算」の重要性がわかるというものです。
足元の実績もわからないのであれば予測はおぼつかず、リスケの正しいタイミングなど知りようもありません。
結果として、手元のおカネがカツカツになってからようやくリスケ。借入金返済は止めることができても、他の支払いはまた別なのですから、再起は非常にきびしい状況です。
リスケをするうえで大切なことは、どれだけ早くリスケができるか。どれだけたくさんのおカネが手元にあるうちにリスケができるか、です。
手元におカネがあるのに銀行がリスケを認めてくれるのか? と思われるかもしれませんが。次の2点を、経営改善計画書として文書で示すことができればだいじょうぶです ↓
- 「キャッシュフロー < 借入金返済額」のていどが大きく、長期化状態にあること
- 手元におカネがあるうちだからこそ、再起までの資金繰りが回るということ(=リスケが遅れれば資金がショートする)
リスケの期間中は、原則、新規で融資を受けることはできません。ただし、リスケを脱して通常返済に戻る(あるいは、リスケを脱する目処がつく)ことにより、また融資を受けることができるようになります。
「キャッシュフロー < 借入金返済額」の長期化状態にあっては、必要以上にリスケを恐れず、早いリスケで確実な再起をはかりましょう。リスケを「さいごのさいご」で使うのでは遅すぎます。
いきなりリスケを申し出てはいけない、がマナー
では、いざ「リスケをしよう」と考えたときに。いきなり銀行に「リスケ」と言うのはやめましょう。
理由は2つ。1つめの理由は、いきなりでは銀行が感じる「ショックが大きい」こと。2つめは、新規融資の可能性が残っていることです。
まずは、新規融資のお願いから
というわけで。こちらがリスケの心づもりであったとしても、まずは「新規融資のお願い」というスタンスを取りましょう。
リスケは早いほうがいい、とは言っても。しなくて済むのであれば、しないほうがいいものでもあります。
ですから、新規融資をお願いして、それがかなうのであれば。融資を受けて、再起をはかるというストーリーも選択肢です。
ただし。その融資条件が不十分(融資金額に不足がある、返済期間が短すぎるなど)である場合には、融資を受けてはいけません。
なぜなら、ここで融資を受けて、すぐ(数ヶ月内)にリスケということになると、大きな問題に発展しかねないからです ↓
「借り換え」も検討する
また、新規融資については、単純に追加で融資を受けること以外に、「借り換え」ということも検討しましょう。
「借り換え」とは、いまある既存の借入金と同額以上の融資を受け、既存の借入金を返済することを言います。
このとき、あらたに融資を受けるほうの返済期間を伸ばすことで、毎月の返済額を軽減するのが狙いです。たとえば、こういうこと ↓
借り換え前 … A銀行、融資残高 2,400万円、毎月返済額 50万円
↓↓↓
借り換え後 … B信用金庫、融資残高 2,400万円、毎月返済額 30万円
上記のような借り換えによって、融資残高は同じであっても、毎月の返済額 20万円、年間の返済額にして 240万円を減額することができます。
注意点としては、結果的にA銀行を裏切るようなカタチになることから、A銀行との関係悪化は覚悟する必要があります。
新規融資がダメならリスケ
借り換えも含めて、新規融資のお願いは、どうにもかないそうにない。そこで、ようやくリスケのお願いです。
新規融資をお願いする → 銀行に断られる → それならリスケしかない、とお願いをする。この流れであれば、銀行からしても唐突感はありません。
また、新規融資を銀行から断られる場面で、銀行のほうから「リスケであれば協力します」という言葉が出てくることもあります。
というくらい、「まずは、新規融資のお願い」という流れが自然であり、リスケを申し出る側のマナーでもあるということを覚えておきましょう。
リスケをするなら1円も返さない、が原則
さいごに、リスケをする際、とてもだいじなことを申し添えます。
それは、「リスケをするなら、1円も返済しない」ということです。つまり、返済額 0円というリスケをする。
もちろん、銀行からすれば、1円でも返済をしてほしいところでしょう。けれども、ここで返済をすればするほどリスケの効果は小さく、再起が難しくなる・再起が遅れるのです。
これは、銀行にとってもデメリットであるはずです。そもそもきびしいからリスケなのですから、中途半端をせずに、できるだけ返済額 0円を目指しましょう。
このとき、経営改善計画書として書類で、きちんと説明をすることが求められます。返済額 0円が、再起には必要であり、妥当であることを書類で示す。
そういった書類もなく、口頭でお願いをするというのは、これまたマナー違反というものですから気をつけましょう。
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まとめ
リスケの正しいタイミングはいつか、ということについてお話をしてきました。
リスケを「さいごの手段」と考えるあまり、そのタイミングが遅すぎる例が少なくありません。
まだまだリスケなんて、とは考えず。リスケも選択肢であることを、常日頃から意識をするようにしましょう。
だいじなことは、「キャッシュフロー < 借入金返済額」の状況を、早い段階で把握することです。
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きょうの執筆後記
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