” 黙っていれば、わかりゃしないか ”
って、それ。銀行に対する姿勢としては間違っていますよ。ということで、聞かれる前に答えたい「銀行が気にする会社・事業の変調」についてお話をします。
聞かれる前に答えたい!銀行が気にする会社・事業の変調
銀行は、会社・事業に融資をするにあたり、融資先のさまざまな「変調」に気を配っています。
融資を受ける側からすると、「そんなことまで?」ということもあるものですが、銀行は融資先の「変調」をようく見ているものなのです。
そのうえで、必要があれば「それはいったいどういうことなの?」と融資先に尋ねます。
けれども、尋ねられたときに答えるのでは遅すぎます。
なぜなら、尋ねられる時点で、すでに銀行側の「疑い」は強まっているからです。強まってしまった疑いを解くのは容易ではありません。
だから、疑いが強まって、分が悪くなるその前に。こちらから答えるようにしましょう。誠意ある対応を評価してもらえることもあるはずですから。
というわけで、銀行が気を配っている・気にしている「会社・事業の変調」は次のとおりです ↓
- 売上減少
- 得意先の倒産
- 支払条件の悪化
- 業界環境の悪化
- 他行借入金の増減
- 関係会社の業績悪化
- 役員の異動
- 従業員の異動
- 社名変更・事務所移転
- ウワサ・悪評が流れる
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
《変調①》売上減少
銀行は決算書などの「数字」を重視しています。「数字」と言ってもいろいろありますが、とくに「売上高」に注目をしています。
銀行員は、まず売上高の増減を見て、その会社・事業の調子をはかっているのです。
もし売上が減少すれば、当然ながら「業績不振」を連想します。そして、売上減少のていどが大きければ「融資を控えたほうがよさそうだ」との貸し出し姿勢につながります。
したがって、新規融資や融資継続を考えているのであれば、売上減少にいたった経緯や事情・今後の対策について、きちんと銀行に伝えることが大切になります。
伝えるタイミングは、向こうしばらくの売上減少が確実になった時点、早めがベストです。銀行は「先読み」できる会社・事業を好みます。
《変調②》得意先の倒産
前述した「売上減少」に関わることとして、得意先の倒産が挙げられます。
いくら売上をあげたとしても、売上代金を回収できなければ意味がありません。また今後は、倒産した得意先への売上を見込むこともできなくなります。
くわえて、連鎖倒産の例もあることから、銀行は「得意先の倒産」を不安に見ています。
ですから、得意先が倒産をしてしまった場合には、その影響度(未回収の金額)や対応(資金繰りはだいじょうぶか)について、銀行に説明できるようにしましょう。
また、得意先に倒産の「兆候(支払遅延など)」が出た時点でも、資金繰りへの影響度が大きい場合には、早めに銀行と情報共有をしておくのがおすすめです。
《変調③》支払条件の悪化
資金繰りが厳しくなると、支払いが悪くなることがあります。支払日におカネが足りず、遅れて支払うというようなケースです。
言うまでもないことですが、このように支払条件が悪化した会社・事業を、銀行は警戒しています。
じゃあ、そんなことは黙っていればいいかと言うとちがいます。銀行は銀行で、融資先の支払状況を、決算書などから推測しているからです。
よって、支払条件が悪化しているのであれば、具体的な支払状況や今後の資金繰り動向を銀行に説明すべきです。銀行から必要以上に警戒されることがないようにしましょう。
また、資金繰り悪化ではなく、仕入先などとの交渉によって支払サイトを変更した場合。たとえば、「月末締め翌月末払」が「月末締め翌々月15日払」になったなど。
銀行から、資金繰り悪化・支払条件の悪化と誤解をされないように、事情を説明しておきましょう
《変調④》業界環境の悪化
銀行は、融資先の「業界」の動きにも注目し、情報を集めています。なぜなら、融資先は、多かれ少なかれ業界の影響を受けるからです。
業界の調子が良ければいいのですが、調子が悪ければ銀行は心配をします。融資先も調子を落とすのではないか、そんなふうに考えるわけです。
そこで、「業界の調子が悪い」というニュースが世間に流れているようなときには、「ウチの会社・事業はどうなのか」を伝えるようにしましょう。
業界が悪くても、特殊な技術・ノウハウなどにより活躍している会社・事業はあるものです。もしそうなのであれば、積極的にアピールして銀行の心配を解消することです。
いっぽうで、残念ながら悪い影響を受けそうだ、というのなら。その影響度と対策を伝えることで、銀行の心配を軽減するように努めましょう。
《変調⑤》他行借入金の増減
銀行は、他の銀行(他行)の動きを気にしています。なぜなら、銀行には「横並び」の考え方があるからです。
他行が貸すならウチも貸す、他行が貸さないならウチも貸さない。そんな「横並び」です。
したがって、各銀行に対して、借入金増減の経緯や状況を説明するようにしましょう。具体的には、借入金一覧表を作成することです ↓
説明がないなかで他行借入金が減少していると、「あれ、他行は引き上げているのかな? じゃあウチも引き上げなきゃ」と考えられてしまうかもしれません。
なお、メインバンク(いちばん融資残高が大きい銀行)の動きを他行が追随する傾向がありますから。メインバンクの動きは、とくにしっかりと他行に伝えましょう。
《変調⑥》関係会社の業績悪化
子会社や関連会社などの関係会社がある場合。銀行は、基本的に、関係会社すべてを「ひとまとめ」にして見ています。
たとえば、親会社は黒字。でも、子会社は大赤字。親会社は黒字なのだから融資を受けられるかというとそうではない。子会社の大赤字も見られます、ということです。
ゆえに、関係会社ついても、業績悪化にいたった経緯や事情・今後の対策について、きちんと銀行に伝えることが大切になります。
《変調⑦》役員の異動
銀行は、会社の「役員」の動きにも注目しています。役員は、会社の行く末を左右する要素のひとつだからです。
社長の退職・交代はもちろんとして、その他の役員の退職・交代についても、経緯や事情を含めて、銀行には情報提供しておきましょう。
長く居た役員が急に辞めたりすれば、銀行は「なんだろう?社内になにか問題が?」といったことを考えるものです。
また、役員が親族なのか、他人なのか、ということも銀行の関心事です。「他人とはトラブルがつきもの」という一般論があるからです。
銀行には定期的に役員名簿を渡すなどして、社長と各役員との関係性(関係の深さ・良好さなど)についても説明をしておきましょう。
《変調⑧》従業員の異動
「役員」だけではなく、「従業員」の動きにも銀行は注目しています。入退職が忙しい会社・事業は、「なにか問題がある」ことが多いからです。
銀行は融資先の離職率を計算するなどして、従業員の動きを確認しています。
よって、従業員の退職が多くなってしまったようなときには、その理由や今後の対応を銀行に伝えるようにしましょう。
これとは別に、経理・財務担当者の異動については、銀行はさらに気にかけています。
問題がある(潰れそう、粉飾をしているなど)会社・事業では、内情を理解している経理・財務担当者が真っ先に逃げ出す傾向があるからです。
《変調⑨》社名変更・事務所移転
社名変更や事務所移転があった場合。まずは事務手続きの観点から、銀行に連絡をするようにしましょう。
これにくわえて、社名変更や事務所移転の理由についても、別途きちんと伝えることも大切です。
なぜなら、社名変更などの行為が、倒産の前段階として行われることがあるためです。
したがって、社名変更や事務所移転の理由に不信感があると、その後の融資に影響が出ることも考えられます。注意するようにしましょう。
《変調⑩》ウワサ・悪評が流れる
口コミ、ネットなどにより、自社に関する悪いウワサが流れてしまった。悪評が立ってしまった。
このようなウワサや悪評は、銀行の耳にも入っていると考えるのが自然です。
火のないところに煙は立たないのであり、耳にした銀行は「事実に近いこと」として捉えることでしょう。結果、融資は受けづらくなります。
どう捉えるかは銀行しだいですが、それでもウワサ・悪評に対する弁明はすべきです。事実と異なることがあるのであれば、事実の説明をすべきです。
銀行のほうから問いただされて、言い訳がましくなるまえに、みずから進んで説明することに努めましょう。
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まとめ
聞かれる前に答えたい「銀行が気にする会社・事業の変調」についてお話をしてきました。
列挙した 10の項目については、銀行から尋ねられる前に答えることを心がけましょう。
- 売上減少
- 得意先の倒産
- 支払条件の悪化
- 業界環境の悪化
- 他行借入金の増減
- 関係会社の業績悪化
- 役員の異動
- 従業員の異動
- 社名変更・事務所移転
- ウワサ・悪評が流れる
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きょうの執筆後記
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