” 銀行から融資を受けたら、保証料やら手数料やらいろいろ天引きされたんだけど。仕訳はどうすんの? ”
そんな「借入をしたとき」のほか、「返済をしたとき」「決算のとき」の仕訳・勘定科目についてお話をします。
銀行から融資を受けたときの仕訳・勘定科目を総まとめ
「銀行融資」の仕訳・勘定科目がわからない… 帳簿つけ(経理)における、意外とよくあるお悩みのひとつです。
そこで。銀行から融資を受けたときの仕訳・勘定科目について、次の3つの「時点」ごとに分けてお話をしていきます ↓
- 借入をしたとき
- 返済をしたとき
- 決算のとき
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
借入をしたとき
まずは、銀行から借入をしたときの仕訳・勘定科目を見ていきます。
押さえておくべき注意点
具体的な仕訳・勘定科目を見る前に、借入をしたときの注意点を確認しておきましょう ↓
- 保証料や印紙代など、「付随費用」の勘定科目に気をつける
- 「借入金元金」部分の勘定科目の使い分けに気をつける
以上の注意点をアタマに置きつつ、具体的な仕訳・勘定科目を見ていきましょう。
具体的な仕訳・勘定科目
【例】銀行から 5,000,000円の融資を受けた際、もろもろ 100,000円の付随費用を天引きされて、4,900,000円が入金された。
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
普通預金 | 4,900,000 | 借入金の内容に応じた勘定科目 (下記参照) | 5,000,000 |
天引きされた内容に応じた勘定科目 (下記参照) | 100,000 |
上記の仕訳のポイントは次の2点です ↓
- 借方(左側)の「天引きされた内容に応じた勘定科目」をどうするか
- 貸方(右側)の「借入金の内容に応じた勘定科目」をどうするか
順番に見ていきましょう。
【 借方(左側)の「天引きされた内容に応じた勘定科目」 】
銀行から融資を受ける際に、天引きされる付随費用はさまざまな種類があります。
天引きされた内容を確認して、内容ごとに勘定科目・金額を区分して仕訳をしましょう。
前述の【例】で言えば、借方の「100,000」について、付随費用の内容に応じて、勘定科目・金額を区分していくということです。
区分のしかたは次のとおりです ↓
勘定科目 | 付随費用の内容 |
長期前払費用 | 信用保証協会付き融資を受けた際の信用保証料 |
租税公課 | 収入印紙代 |
支払手数料 | 融資における事務手数料、送金手数料 |
保険料 | 日本政策金融公庫で融資を受けた際の団信保険特約料 |
出資金 | 信用金庫の会員、信用組合の組合員になるために支払った出資金 |
支払利息 | 初回分の利息 |
経費にはできず、勘定科目は「事業主貸」として仕訳をします。なお、確定申告の生命保険料控除も受けられません。
法人(会社)の場合には「支払利息」の勘定科目を使いますが、個人事業者の場合には「利子割引料」の勘定科目を使います。
【 貸方(右側)の「借入金の内容に応じた勘定科目」 】
銀行から融資を受けた際の借入金元金は、「長期借入金」「1年以内返済長期借入金」「短期借入金」のいずれかの勘定科目で仕訳をします。
いずれの勘定科目にするかの使い分けは、次のとおりです ↓
勘定科目 | 融資の最終返済期日 |
長期借入金 | 最終返済期日が、融資日から1年を超えている借入金の金額 |
1年以内返済長期借入金 | 上記の長期借入金のうち、決算日までに返済する金額 |
短期借入金 | 最終返済期日が、融資日から1年以内の借入金の金額 |
これについて、具体例で確認をしてみましょう。
【例】3月決算の会社が、5月に 3,600,000円の銀行融資を受けた(6月以降、毎月末に 100,000円ずつ返済予定)。借入をしたときの仕訳は?
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
普通預金 | 3,600,000 | 長期借入金 | 2,600,000 |
1年以内返済長期借入金 | 1,000,000 |
上記の例を解説すると。まず、最終返済期日は融資日から1年を超えている(36ヶ月後)ですから、「短期借入金」ではありません。「長期借入金」か、「1年以内返済長期借入金」です。
そのうち、決算日までに返済する金額が「1年以内返済長期借入金」ですから、6月〜3月までの10ヶ月の返済額 1,000,000円(100,000円 × 10回)が「1年以内返済長期借入金」になります。
そして、融資額 3,600,000円との差額 2,600,000円が「長期借入金」になります。
個人事業者用に税務署が配布をしている「青色申告決算書」の貸借対照表を見ると、「借入金」の勘定科目はひとつです。
つまり、「長期借入金」「1年以内返済長期借入金」「短期借入金」の区分はありません。したがって、個人事業者の場合には、区分せずにすべて「借入金」の勘定科目を使うのが一般的です。
後述する「返済をしたとき」「決算のとき」についても、考え方は同じですのでご留意を。
返済をしたとき
続いて、借りたおカネを返済したときの仕訳・勘定科目を見ていきます。
押さえておくべき注意点
具体的な仕訳・勘定科目を見る前に、返済をしたときの注意点を確認しておきましょう ↓
- 「元金」と「利息」を区分して仕訳する
- 「元金」の返済は「1年以内返済長期借入金」または「短期借入金」の勘定科目を使う
以上の注意点をアタマに置きつつ、具体的な仕訳・勘定科目を見ていきましょう。
具体的な仕訳・勘定科目
【例】銀行に対して、毎月分割返済の借入金元金 100,000円と、利息 5,000円を支払った。
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
1年以内返済長期借入金 または 短期借入金 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 |
支払利息 | 5,000 | 普通預金 | 5,000 |
上記のとおり、元金部分と利息部分とは区分をして仕訳をする点に注意しましょう。
元金返済は「経費」ではなく、利息は「経費」ですから。この区分を誤ると利益の計算を誤り、結果、税金の計算を誤ることになってしまいます。
なお、借方(左側)の「1年以内返済長期借入金 または 短期借入金」のいずれを使うかは、前述した「借入をしたとき」に使った勘定科目で仕訳をします。
たとえば。借入をしたときに「1年以内返済長期借入金」の勘定科目を使っていれば、返済をしたときも「1年以内返済長期借入金」を使います。
借入をしたときが「短期借入金」であれば、返済をしたときも「短期借入金」です。
決算のとき
さいごに、毎年の決算を迎えたときの仕訳・勘定科目を見ていきます。
押さえておくべき注意点
具体的な仕訳・勘定科目を見る前に、決算のときの注意点を確認しておきましょう ↓
- 「長期借入金」から「1年以内返済長期借入金」に、金額を振り替える
- 信用保証料の償却(経費化)をする
以上の注意点をアタマに置きつつ、具体的な仕訳・勘定科目を見ていきましょう。
具体的な仕訳・勘定科目(借入金の振替)
結論として。決算では、「長期借入金」のうち、決算日の翌日から1年以内に返済期日を迎える部分の金額を、「1年以内返済長期借入金」の勘定科目に振り替えます。
少々わかりにくいハナシではありますが、あらためて言い換えてみると ↓
そもそも「長期借入金」とは、最終返済期日が、融資日から1年を超えている借入金でした(前述の「借入をしたとき」の項目参照)。
この「長期借入金」について、決算日の翌日から1年以内(=次の決算まで)に返済をする金額を「1年以内返済長期借入金」の勘定科目にする、ということです。
これを具体例で確認をすることにしましょう。
【 例・融資を受けた年の決算 】
- 3月決算の会社が、5月に 3,600,000円の銀行融資を受けた(6月以降、毎月末に 100,000円ずつ返済予定)
- 借入をしたときには、2,600,000を「長期借入金」で、1,000,000円を「1年以内返済長期借入金」で仕訳
- 決算日時点の貸借対照表における「長期借入金」の残高は 2,600,000円、「1年以内返済長期借入金」の残高は 0円(100,000 × 10回を返済した)
上記のような融資を受けた年の「決算のとき」の仕訳はこちら ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
長期借入金 | 1,200,000 | 1年以内返済長期借入金 | 1,200,000 |
上記仕訳前の貸借対照表の「長期借入金」 2,600,000円のうち、決算日の翌日から1年以内に返済をする 1,200,000円(100,000円 × 12回)を「1年以内返済長期借入金」に振り替えています。
この仕訳により、仕訳後の貸借対照表の「長期借入金」は 1,400,000円、「1年以内返済長期借入金」は 1,200,000円になります。
【 例・融資を受けた翌年の決算 】
- 決算日現在の借入金未返済額 1,400,000円(当初借入額 3,600,000円、100,000円 × 22回の返済が終了)
- 決算日現在の「長期借入金」の残高は 1,400,000円、「1年以内返済長期借入金」の残高 0円(100,000 × 12回を返済した)
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
長期借入金 | 1,200,000 | 1年以内返済長期借入金 | 1,200,000 |
上記仕訳前の貸借対照表の「長期借入金」 1,400,000円のうち、決算日の翌日から1年以内に返済をする 1,200,000円(100,000円 × 12回)を「1年以内返済長期借入金」に振り替えています。
この仕訳により、仕訳後の貸借対照表の「長期借入金」は 200,000円、「1年以内返済長期借入金」は 1,200,000円になります。
【 例・融資を受けた翌々年の決算 】
- 決算日現在の借入金未返済額 200,000円(当初借入額 3,600,000円、100,000円 × 34回の返済が終了)
- 決算日現在の「長期借入金」の残高は 200,000円、「1年以内返済長期借入金」の残高 0円(100,000 × 12回を返済した)
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
長期借入金 | 200,000 | 1年以内返済長期借入金 | 200,000 |
上記仕訳前の貸借対照表の「長期借入金」 200,000円のうち、決算日の翌日から1年以内に返済をする 200,000円(100,000円 × 2回)を「1年以内返済長期借入金」に振り替えています。
この仕訳により、仕訳後の貸借対照表の「長期借入金」は 0円、「1年以内返済長期借入金」は 200,000円になります。
具体的な仕訳・勘定科目(信用保証料の償却)
信用保証協会付きの融資を受けている場合には、決算のときに、信用保証料の償却(経費化)の仕訳が必要です。
おさらいですが、信用保証料を支払ったときの勘定科目は「長期前払費用」です(前述の「借入をしたとき」の項目参照)。
いったん全額を資産項目である「長期前払費用」にしておいて、その後、信用保証期間(借入期間)の経過に応じた金額を、決算時に経費に振り替えていきます。
これを具体例で確認をすることにしましょう。
【 例・融資を受けた年の決算 】
- 3月決算の会社が、5月に 信用保証協会付き融資を受けた。信用保証期間(借入期間)36ヶ月に対して、信用保証料 180,000円を支払った
- 信用保証料の支払い時には、その全額を「長期前払費用」で仕訳した
- 決算日時点で、信用保証期間(借入期間)は 10ヶ月(6月から3月まで)経過している
この場合における、決算のときの仕訳はこちら ↓
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
支払利息 | 50,000 | 長期前払費用 | 50,000 |
上記の 50,000円は、「180,000 × 10/36」で計算をしています。
つまり、もともとの信用保証料 180,000円のうち、10ヶ月経過分は「支払利息」として経費化する、ということです。
これにより、上記仕訳後の貸借対照表の「長期前払費用」の残高は 130,000円になります。
翌年以降また、期間経過分に応じて費用化を進めていきます。念のため、翌年の決算についても仕訳を見ておきましょう ↓
【例②】融資を受けた翌年の決算
借方・勘定科目 | 借方・金額 | 貸方・勘定科目 | 貸方・金額 |
支払利息 | 60,000 | 長期前払費用 | 60,000 |
上記の 60,000円は、「180,000 × 12/36」で計算をしています。
これにより、上記仕訳後の貸借対照表の「長期前払費用」の残高は 70,000円になります。
この経過の仕訳を、「長期前払費用」の残高が 0になるまで(信用保証期間・借入期間が終わるまで)続けます。
信用保証料の償却(経費化)の仕訳は、決算に1年分やるよりも、毎月末に1ヶ月分ずつやるほうが、毎月の利益をより厳密に計算できます。
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まとめ
銀行融資の仕訳・勘定科目についてお話をしてきました。
いろいろと論点がありますので、注意を要するところです。
借入をしたとき、返済をしたとき、決算のとき。それぞれの注意点に気をつけて仕訳をするようにしましょう。
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きょうの執筆後記
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