節税に使えるけれど要注意!フリーランスの研究費と研修費

研究費と研修費

” フリーランスになったら、勉強費用も経費でいいんだよね? ”

たしかに、経費にできる勉強費用もありますが。そうでないものもありますよ。ということで、節税に使えるけれど要注意な、フリーランスの研究費と研修費についてのお話です。

目次

節税にもなるけれど要注意な「研究費」と「研修費」

できるだけ経費をたくさん計上したい、税金を少なくしたい。というのは、多くのフリーランスに共通する思いでしょう。

にもかかわらず。決して少なくはない数のフリーランスが、経費の計上を漏らしている費用があります。

「研究費」と「研修費」です。

それぞれ詳しくはこのあとお話をしますが、いずれも、節税(経費を増やして税金を減らす)に貢献をする費用です。

ただ、そのいっぽうで。使い方には注意を要する費用でもあります。

節税を望むばかりに、注意をおろそかにして税務署から目をつけられることがないように。

このあと、研究費と研修費の具体例や注意点についてお話をしていきます。

 

いろいろ調べるための「研究費」

まずは「研究費」から。研究費とは、平たく言うと、これからの仕事に向けていろいろ調べるための費用です。

具体例として、次のようなものが挙げられます ↓

  • 旅行をする
  • 劇・ショーを見に行く
  • 飲食をしに行く
  • 商品・サービスを買う

これらについて、税金を計算するうえで「経費」と認められるものにはどのようなものがあるのか。ポイントはどこにあるのか、を確認していきましょう。

旅行をする

たとえば、あたらしく事業をはじめるにあたっての視察や、あたらしい市場を見つけるための視察を目的にした旅行。

これら、仕事に関わる「視察」のための旅行費用は、「研究費」として経費に計上することができます。

視察旅行先で、一部観光(プライベート)をしたとしても。観光分の割合だけ経費から外すのであれば、残りの視察分は経費に計上することはかまいません。

ざっくりイメージで言えば、こういうことです ↓

  • 5日間の視察旅行のうち、4日は視察(仕事)で、1日は観光(プライベート)
  • 視察旅行にかかった、移動費用・宿泊費用は 100,000円

  • 経費(研究費)= 100,000 × 4/5 = 80,000円
  • 残りの 20,000円は仕事に関係がないので経費にできない

「旅行」という言葉から、「経費にはなりそうもないかな」と連想してしまうことがありますが。ケースバイケースであることを覚えておきましょう。

劇・ショーを見に行く

たとえば、「服飾デザイナー」が劇中で使われる衣装を観察するため、「作家」がショーの構成・進行などを観察するため、「役者」が実際の演技を観察するため。

これら、仕事に関わる「観察」のために劇・ショーを見に行く費用は、「研究費」として経費に計上することができます。

趣味や娯楽のための観劇は経費にはなりませんが、職業しだいでは、観劇も仕事のうちだということです。

これに意外と気づかず、経費から漏らしている・経費にしていないケースがありますので注意しましょう。

【参考】お客さまと劇・ショーを見に行く

「お付き合い」で、お客さまといっしょに劇・ショーを見に行く場合には、「接待交際費」として経費に計上することができます

飲食をしに行く

たとえば、「飲食店の経営者」が、料理や接客などを調査するために他の飲食店で飲食をする。

このような、仕事に関わる「調査」のための飲食費用は、「研究費」として経費に計上することができます。

また、「インテリアデザイナー」が、飲食店の店舗内装を観察するための飲食費用なども同様です。

飲食費用の経費というと「接待交際費」ばかりが注目されがちですが、「研究費」としての飲食費用があることも押さえておきましょう。

商品・サービスを買う

たとえば、同業他社が販売している商品を実際に買ってみる、サービスを体験してみる。

これら、仕事に関わる「偵察」的な商品・サービス購入費用は、「研究費」として経費に計上することができます。

同業他社・競合の「偵察」は業種に限らず、よくあることです。よくあるにもかかわらず、経費から漏らしてしまうことがないように気をつけましょう。

「研究費」を経費にするためのポイント

ここまで「研究費」のさまざまな具体例を見てきました。さまざま使い勝手が良い研究費ではありますが、経費にするにあたっては注意点があります。

それは、「こじつけ」や「ウソ」で経費にしようとしないこと、という注意点です。

たとえば、税理士業のわたしが、「接客術を身につけるため」にと飲食店の飲食費用を経費にする。というのはムリがあるでしょう。こじつけです。

もちろん、身につける気もないのに「そういうことにしておこう」とウソをつくのはもってのほか。脱税です。

したがって、研究費の使い勝手の良さを悪用してはいけません。

対税務署ということでのポイントとして。「悪用」していないこと、ほんとうに「研究」であることを証拠に残すようにしましょう。

具体的には、研究の内容・成果を「レポート」にまとめておく、ことです。

文章だけではなく、現地で撮った写真や、現地での配布物なども証拠としていっしょにしておきましょう。

 

いろいろ身につけるための「研修費」

続いて「研修費」。研修費とは、平たく言うと、じぶんの仕事に役立つ能力を身につけるための費用です。

具体例として、次のようなものが挙げられます ↓

  • 資格を取得する
  • 〇〇教室に通う、セミナーに参加する

これらについて、税金を計算するうえで「経費」と認められるものにはどのようなものがあるのか。ポイントはどこにあるのか、を確認していきましょう。

資格を取得する

資格は、ひとりひとりの個人に帰属する、いわゆる「一身専属(ほかの人に移転しない)」なものであり。資格の取得費用もまた個人的なもの、と考えられます。

ただし。仕事に「直接必要」だと言える知識や技能を身につけるための資格であれば、その取得費用は経費に計上することができます。

たとえば、配送業務が不可欠な仕事をするにあたり、運転免許を取得する。これであれば、取得費用は「仕事に直接必要だ」と言えます。

いっぽうで。コンサルタントが「箔がつくかな」というような理由でMBAを取得する費用。これを経費に計上するにはビミョーなところがあります。

なぜならば、MBAがなくても、コンサルタント業はできるからです。つまり、MBAが仕事に直接必要だとは言えない。

ただそれでも、MBAを取得するにあたっての学習により、仕事に直接必要だと言える知識や技能が身につくのであれば。経費計上を主張する余地がないわけでもありません。

歯切れの悪いハナシになっていますが、実際、このあたりはケースバイケース。税務署との争点になりうるところです。

後述する『「研修費」を経費にするためのポイント』にも注意をして、経費計上を検討しましょう。

〇〇教室に通う、セミナーに参加する

仕事に直接必要な知識・技能を身につけるための〇〇教室やセミナーであれば、その費用は経費に計上することができます。

「仕事に直接必要」という部分の考え方は、前述の資格取得費用とおなじです。

では、たとえば英会話教室に通う費用というのはどうでしょう?

すでに英語で話さなければいけないお客さまがいる・問い合わせがある、という場合。コミュニケーション能力として、仕事に直接必要だと言えます。経費に計上できます。

これに対して、とくに英語を要するお客さまはなく、「いまどきは英会話が必要でしょう」くらいのハナシであれば。経費の計上は難しいものがあります。

なお、いまは英語を要するお客さまはいなくても。これから増やしていく、という行動が明確であれば経費に計上することはできるでしょう。

具体的には、英会話教室での学習を活かして、じぶんのWEBサイトやパンフレットなどについて英語対応する。といったことが挙げられます。

「研修費」を経費にするためのポイント

ここまで再三にわたり、研修費を経費として計上するには「仕事に直接必要な知識・技能であること」というお話をしてきました。

これを受けての注意点は、「仕事に直接必要である」ことを説得できる材料を用意しておく、ということです。

運転免許の例で言えば、配送業務が必須であることを説明できるくらいの配送実績件数があるかどうか。

英会話教室の例で言えば、英語が必要な外国人顧客が相当数いること、増加していることなどを示すデータを提示できるかどうか。など。

税務署はその立場上どうしても、「ほんとうに仕事に必要なのか?」という目で見てきます。

そのときに、口頭だけで応じるのでは説得力に欠けるというものです。書類やデータで応じることができるように準備をしておきましょう。

逆に、それらが準備できないようであれば、経費に計上するのは難しいケースだという理解が必要です。

まとめ

節税に使えるけれど要注意な、フリーランスの研究費と研修費についてお話をしてきました。

研究費も研修費も、業種を問わず幅広く検討することが可能な経費です。

そのいっぽうで、幅広く解釈をしすぎて、税務署から「経費の計上」を否定されてしまうことがないように。じゅうぶん気をつけましょう。

 

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