”ウチの資金繰りはどういう状況なのかな?でも、数字を見てもよくわからないんだよね…”
と言うのであれば、数字をグラフにしてみましょう。そこで、資金繰り・銀行融資を考えるのに役立つExcelグラフの作り方、についてお話をしていきます。
資金繰り・銀行融資に関する「数字」をグラフにすれば見えるもの
会社にとって欠かすことができないもののひとつ「おカネ」。
おカネが無くなってしまえば、会社は潰れてしまいます。また、おカネが不足すれば、必要な投資もできません。
したがって、「おカネ」をきちんと確保するためには、資金繰りや銀行融資などについて考える必要があります。
そのときに、会計データの「数字」を確認することも大切ですが。数字を「グラフ」にすることで、よりクリアに見えてくるものもある。
というわけで、資金繰り・銀行融資を考えるのに役立つExcelグラフについてお話をしていきます ↓
- 現金預金の日次残高推移グラフ
- 現金預金の月商比推移グラフ
- 正味借入金の月商倍率推移グラフ
それではこのあと、それぞれのグラフについて順番に見ていきましょう。
資金繰り・銀行融資を考えるのに役立つExcelグラフの見方・作り方
現金預金の日次残高推移グラフ
まずは「できあがり」から確認をしてみましょう。こちらです ↓
会社が持っている「現金・預金」について、毎日の残高を、面グラフにしたものです。
会社にとってだいじな現金預金が、日々どのように動いているのか? 数字ではなく、グラフにしてみると一目瞭然です。
上記の例では、6月1日から8月31日の3ヶ月間にしてみましたが。期間の長さは、適宜お好きなようにでかまいません。
ただし、あるていどの長さがあったほうが、「傾向」が見えやすいでしょう。
このグラフから読み取れること
「現金預金の日次残高推移グラフ」から、読み取りたいのは次の2点です ↓
- 最大でどれだけの落差(出金)が生じているのか?(グラフの赤色矢印)
- どれくらいの現金預金残高を維持できているのか?(グラフの赤色点線)
これを、グラフとあわせて見てみるとこういうことです ↓
このグラフの会社では、毎月初に定期的な出金(給料や取引先への支払いなど)があるのでしょう。
赤色矢印のところで、残高が減少しています。金額にして、おおむね 400万円前後。
このように、おカネが減少する「落差」のタイミングと大きさとを理解しておくことが大切です。
加えて押さえておきたいのは、「落差」の大きさ分以上の現金預金がないと、資金不足を起こしてしまう可能性がある、ということです。
よって、グラフの赤色点線で示したように、自社の現金預金残高の「底(最低残高)」を確認しておきましょう。
結論として。底の高さよりも、落差のほうが大きい場合には、現金預金は不足気味です。可能であれば、銀行融資を受けるなどして、資金の底上げをはかりましょう。
このグラフの作り方
「現金預金の日次残高推移グラフ」の作り方は、とくにむずかしいことはありません。
会計ソフトのCSVデータ出力などを利用して、現金預金の日次残高をExcelに準備しましょう ↓
あとは、グラフの作成機能で「面グラフ」を選択して、好みの体裁に整えれば。あっと言う間に完成です。
現金預金の月商比推移グラフ
やはり、「できあがり」から確認をしてみましょう。こちらです ↓
「現金・預金」と「売上高」について、毎月の残高をグラフにしたものです。
現金預金と売上高は棒グラフに。それとは別に、「月商比」を折れ線グラフにしています。
ここで言う「月商比」とは、現金預金の残高をその月の売上高(月商)で割り算をした結果です。言い換えると、現金預金は月商の何ヶ月分あるのか? ということです。
資金繰りについては、「現金預金は月商の〇ヶ月分持ちなさい」などとよく言われますので。そのあたりを視覚化できるのがこのグラフになります。
このグラフから読み取れること
「現金預金の月商比推移グラフ」から、読み取りたいのは次の2点です ↓
- 月商に対して現金預金は不足していないか?(グラフの赤色点線)
- 現金預金の対月商比は増加傾向にあるか・じゅうぶんか?(グラフの赤色枠線)
これを、グラフとあわせて見てみるとこういうことです ↓
現金預金が月商を下回るようなことがあると。一般に、資金繰りとしてはきわめて危険な状況と言えます。
月末の「一時点」ではおカネがあったとしても、「月の途中」では資金が足りないということが起こりがちだからです(売上入金よりも先に、仕入・経費の支払いが先の場合など)。
したがって、毎月の現金預金と売上高の棒グラフの高さと、その差をしっかりと確認しておきましょう。
また、現金預金の対月商比については、「〇倍あればいい」ということよりも、できるだけ大きくすることを目指すのがよい。と、わたしは考えています。
とくに中小零細企業では、会社・経営者個人が所持する資金がかなり限られている、というケースがほとんどです。
であるならば。いざというときや、来たるべきチャンスに備えて、日頃から現金預金をできるだけ蓄えておくのがいい。
そう考えると、グラフ中の折れ線は、増加傾向にあるか・一定以上の高さを維持するのが望ましい。という見方になります。
CHECK! 現金預金の残高はいくら必要?月商〇ヶ月分の議論に終止符を打つ
このグラフの作り方
「現金預金の月商比推移グラフ」をつくるにあたっては、次のようにデータを準備しましょう ↓
月商比のところには、「現金預金 ÷ 売上高」の算式を入力します。たとえば、3月の月商比(セルB4)であれば、算式は「B2/B3」です。
データが準備できたらグラフを作成します。ポイントは「棒と折れ線の混合」かつ「2軸」のグラフをつくること。手順は次のとおりです(Excel2016の場合)↓
- データを選択する(セルA1からセルG4)
- 「挿入」タブ → 「おすすめグラフ」を選択する
- 「すべてのグラフ」タブを選択する
- 「組み合わせ」のグラフを選択する
- 下図のように「グラフの種類」と「第2軸」を設定する ↓
- グラフの体裁を好みで整える
正味借入金の月商倍率推移グラフ
さいごのグラフも、「できあがり」から確認をしてみましょう。こちらです ↓
「正味借入金」と「売上高」について、毎月の残高をグラフにしたものです。
ここで言う「正味借入金」とは、「借入金残高(銀行融資の残高)」から「現金預金残高」をマイナスしたものです。
正味借入金と売上高は棒グラフに。それとは別に、「月商倍率」を折れ線グラフにしています。
「月商倍率」とは、正味借入金の残高をその月の売上高(月商)で割り算をした結果です。言い換えると、正味借入金は月商の何ヶ月分あるのか? ということです。
銀行融資については、「借入は月商の〇ヶ月分以上は危険水域。融資もしてもらえない」などとよく言われますので。そのあたりを視覚化できるのがこのグラフになります。
このグラフから読み取れること
「正味借入金の月商倍率推移グラフ」から、読み取りたいのは次の2点です ↓
- 正味借入金が増加傾向になっていないか?(グラフの赤色枠線)
- 月商倍率が危険水域に達していないか・近づいていないか?(グラフの薄ピンク枠内)
これを、グラフとあわせて見てみるとこういうことです ↓
借入金は「正味」で見ることが大切です。なぜなら、現金預金を持っている限り、借入金がいくらあろうといつでも返済をできるからです。
現金預金はたくさん持っていたほうがいい、と前述しましたが。その現金預金は、借入をしたおカネであってもかまわない。というのもまた、わたしの考えです。
いくらおカネを借りても、無駄づかいをしなければ、正味借入金が増加することもありません。会社の存続・成長を考えるのであれば、借金を「必要以上に」恐れないことです。
CHECK! 融資を勧める理由は『借りろ』ではなく『おカネを持て』
それはそれとして。「借金しすぎ」ということの目安として、借入金の月商倍率が用いられることがあります。
業種業態などによりますので一概には言えませんが、おおむね「3倍」を超えるあたりからが危険水域(あるいは注意水域)になります(上記グラフの薄ピンク枠内)。
つまり、借入金の残高が月商の3ヶ月分以上になると、おカネを借り過ぎであり、銀行から融資を受けることもむずかしくなる。ということ。
ただし、会社が「いくら借りられるのか」は、売上高を基準に見るのではなく、利益を基準に見るのが本質です。どれだけ売上があっても、利益が出ていないようでは返済できませんから。
よって、このグラフで見る「月商倍率」というのは、「かなりざっくりとした目安ていど」と心得ておきましょう。
CHECK! ウチの会社は銀行からいくら借入できるのか?
このグラフの作り方
「正味借入金の月商倍率推移グラフ」をつくるにあたっては、次のようにデータを準備しましょう ↓
正味借入金は、「実際借入金 − 現金預金」の算式で計算をしています。たとえば、3月の正味借入金(セルB2)であれば、算式は「B5 − B6」です。
月商倍率のところには、「正味借入金 ÷ 売上高」の算式を入力します。たとえば、3月の月商倍率(セルB4)であれば、算式は「B2/B3」です。
データが準備できたらグラフを作成します。ポイントは「棒と折れ線の混合」かつ「2軸」のグラフをつくること。さきほどの「現金預金の月商比推移グラフ」といっしょです↓
- データを選択する(セルA1からセルG4)
- 「挿入」タブ → 「おすすめグラフ」を選択する
- 「すべてのグラフ」タブを選択する
- 「組み合わせ」のグラフを選択する
- 「グラフの種類」と「第2軸」を設定する(前述した「現金預金の月商比推移グラフ」の作成手順を参照)
- グラフの体裁を好みで整える
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まとめ
資金繰り・銀行融資を考えるのに役立つExcelグラフの作り方についてお話をしてきました。
「おカネ」をきちんと確保するためには、資金繰りや銀行融資などについて考える必要があります。
そのときに、会計データの「数字」を見るばかりでなく、「グラフ」にもしてみると現状や傾向をつかむのに役立ちます。試してみましょう。