金融検査マニュアルの廃止や、事業性評価による融資など。
これからの銀行融資は変わる、と言われています。そこで、「これからの銀行対応」で押さえておきたい3つのポイントについてお話をします。
変わる銀行融資… 変わることもあれば変わらないこともある
2019年春に予定されている「金融検査マニュアル」の廃止。そして、声高に叫ばれている「事業性評価」なる融資。
これまでとは違う、これからは変わる! そのように言われている銀行融資ではありますが。
「変わる」ことと、「ガラガラポン(白紙に戻してやりなおし)」がイコールではありません。
たしかに、これからの銀行融資は、変わる部分もあるけれど、変わらずに残る部分もあるのです。
そのあたりを踏まえて。「これからの銀行対応」で押さえておきたい3つのポイントについてお話をしていきます。こちらの内容です ↓
- それでも「数字」はだいじ
- だが、「数字だけ」ではなくなる
- それとて、待っているだけでは変わらない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
それでも「数字」はだいじ
「金融検査マニュアルの廃止」や「事業性評価による融資」のハナシを受けて。銀行融資は「変わる」のだ、と言われています。
その期待感が行き過ぎるのかどうなのか。これからは決算書が悪くても借りやすくなる・借りられる! との声を聞くこともあります。
つまり、決算書などの「数字」による評価・審査ではなくなるんだ、ということですね。
ここで気をつけなければいけないポイントがあります。
それは、『銀行融資における評価・審査の場面で、決して「数字」が要らなくなるわけではない』ということ。
なぜならば。銀行から見て、融資をするに値する会社とは、やはり「数字が良い会社」で変わりはないからです。
数字が良い会社と悪い会社とがあった場合に、どちらの会社に対して、より融資をしたいかと言えば。当然に、数字がよい会社のほうに決まっているでしょう。
銀行とて、無尽蔵に貸出資金を持ってはいませんから。より返済見込みが高い相手から優先的に… と考えるはずです。
であるならば。いくら金融検査マニュアルがなくなろうと、事業性を評価しようとも。「数字の良し悪し」という評価基準が消えてなくなるわけではありません。
では、ここで言う「数字がよい会社」とは、どういう会社なのか?
資本がじゅうぶんである、かつ、キャッシュフローが多い会社を言います。
「資本がじゅうぶん」とは、資産金額が負債金額をじゅうぶんに上回ること。これは、決算書で見ると、貸借対照表のハナシです。
そして、「キャッシュフローが多い」とは。端的に言えば、多くの利益を生み出していること。これは、損益計算書のハナシです。
これまでもこれからも、この「数字の良し悪し」は、評価・審査の基準として消えてなくなることはない。そう覚えておきましょう。
銀行が見ている「数字」について詳しくは、こちらの記事も参考にどうぞ ↓
だが、「数字だけ」ではなくなる
と、ここまでのお話で。「なぁんだ、それならいままでと変わらないじゃん」と思われたかもしれませんが。
それはちょっと違います。変わらない部分もあるけれど、変わる部分もあるからです。
では、なにが変わるのか?
これからは、「数字だけ」ではなくなる、という点で変わります。
数字がだいじだ、ということは前述したとおりですが。「数字だけ」ではなくなるのです。
その点、これまではどうかというと。金融検査マニュアルの存在が大きく、定量面(数字)にかたよった、画一的で機械的な評価・審査が中心でした。
そもそも、金融検査マニュアルとは、金融庁が金融機関を検査するときに考慮すべきことをまとめたものではあるのですが。
マニュアルに沿った金融庁の徹底した検査姿勢が続いたことで、マニュアル・姿勢が金融機関にも浸透するあまり。「画一的・機械的な一面」が形成されたものと推察します(持って回った言い方…)。
で、このたび、その金融検査マニュアルを、金融庁が「なくす」と言っています。
マニュアルの意図はじゅうぶんに浸透したし。変わりゆく時代のなかにあって、マニュアルはその役目を終えたのだから。これからは、画一的・機械的な融資はやめましょう、というメッセージです。
あわせて、金融庁が推しているのが「事業性評価」による融資です。
事業性評価とは、「取引先企業の事業の内容や成長可能性等を適正に評価」することであり、ひとことで言えば「目利き」にあたります。
これによれば。「決算書が悪いから」「赤字だから」ということのみをもって、「融資をしない」という判断はやめましょう。ということになります。
サラッと言いましたが、これは融資の現場では大きな変化でしょう。銀行員に決算書を一瞥されただけで融資を謝絶された… というシーンがどれだけあったことか。
したがってこれからは、「数字の良し悪し」プラス「融資先事業の内容・将来性」に着目した評価・審査が進んでいく。そこを押さえておきましょう。
また、これまでの「担保・保証」に頼った融資も、事業性評価に置き換えられていきます。担保ありき・保証ありきの姿勢もあらためる。あわせて押さえておきましょう。
それとて、待っているだけでは変わらない
さきほど、これからの融資は「数字の良し悪し」プラス「融資先事業の内容・将来性」だ、と言いました。
これまでの「数字の良し悪し」、そして、担保・保証ありきではない。つまり、変わることは変わるのです。
これについて、「それは良きこと」と座して待っているだけでは、融資の「変化」を体感するのはむずかしい。というのが、きょう現在での「現状」です。
なぜなら、各金融機関が長きにわたって形作ってきた融資の「型」を、金融庁が言うようにあらためるのには時間がかかるからです。
「時間がかかる」のは、あたらしい基準や体制づくりの「準備」の面もあれば、あたらしいものへと変化するにあたっての「心理面での抵抗」もあります。
いずれにせよ、「これからの融資」はまだ過渡期。というのが、現状です。
そこで、融資を受ける側のわたしたちにできることはなにか?
銀行と話をすることです。ここまでお話をしてきた「これからの融資」という考え方に基づいて、銀行と話をすることです。
具体的には、経済産業省が提供している「ローカルベンチマーク」や「RESAS(リーサス)」などのツールを使いながら、自社の「事業の内容・将来性」について取引銀行に伝える。
そして、ただ伝えるだけではなく。それをもとに、銀行からの質問に答えたり、議論をしたりしながら理解を深めていきます。
自社の商品・サービスを体験してもらったり、事務所や工場などの現場を見学してもらう、のも有効です。
事業性評価をするのは銀行なのだから、と言っても。銀行単独で「事業の内容・将来性」をはかることは、決してカンタンなことではありませんから。
「これからの融資」を推し進めるには、借りる側の協力も必要であり、重要なのです。
座して待つのではなく。「これからの融資」について理解をしたうえで、こちらから動きましょう。
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まとめ
変わる銀行融資について、「これからの銀行対応」で押さえておきたい3つのポイントをお話してきました。
変わることもあるけれど、変わらないこともある。そして、待っているだけでは変化を感じることはできない。という点を押さえておきましょう。
- それでも「数字」はだいじ
- だが、「数字だけ」ではなくなる
- それとて、待っているだけでは変わらない