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買い物してもらったポイントの仕訳と税金をまとめ【個人事業者編】

買い物してもらったポイントの仕訳と税金

” 買い物してポイントって、仕訳や税金に関係あるのかな? ”

あります。ただし、ケースバイケースで関係のしかたも変わります。というわけで、個人事業者が買い物してもらったポイントの「仕訳・税金」についてまとめます。

目次

正解無き「ポイント」に関する仕訳と税金問題

買い物をしてポイントをもらう。そのポイントを使って、また買い物をする。ということがあるでしょう。

たとえば、Amazonや楽天などのインターネットモールや、まちなかの家電量販店など。

では、個人事業者が「買い物してもらったポイント」について、仕訳や税金はどのように考えればよいのでしょうか? ということについて、このあとお話をしていきます ↓

このあとの話の内容
  • 仕訳が必要なのはもらったポイントを「使ったとき」
  • 買い物をしてもらったポイントの仕訳と税金
  • まとめと言い訳を少々

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

その前に、ひとつだけ。「ポイント」に関する仕訳・税金については、きょう(2018年10月4日)現在、税法などの明確なルール・決まりが存在していません。

よって、世の中にある解釈には、それぞれいくらかのバラツキがあります。さまざまな意見・主張が散見されます。

そんななか。本記事は、税金そもそもの考え方を加味したうえで、ひとりの税理士としてわたしなりの解釈をまとめたものであることを申し添えます。

本記事で対象にする「ポイント」は、買い物をしてもらったポイントです。その他のポイント(アフィリエイトで取得した、など)については、また別のハナシになりますのでご注意ください。

 

仕訳が必要なのはもらったポイントを「使ったとき」

個人事業者は、事業に関する取引について「帳簿つけ(経理)」しなければいけません。具体的には、「仕訳」をします。

では、「買い物してもらったポイント」は。いつ、どのタイミングで仕訳をすればよいのか?これをはじめに確認しておきましょう。結論はこちら ↓

仕訳をするのは、ポイントを「使ったとき」です。ポイントを使ったときだけ。

これを言い換えると。ポイントを「もらったとき」には仕訳は必要ない、ということになります。

たとえば、10,000円のモノを買って、500円分のポイントが付与されたとします。

たしかに、500円分のポイントはもらったのですが、その時点では「実際にトクをした」わけではありません。

トクをするのは、その500円分のポイントを使ったとき(買い物をするなど)ですよね。

また、ポイント未使用のまま一定期間が経過すると失効してしまう、というケースもあるでしょう。

そのようなことを踏まえて。ポイントを「もらった」だけであれば、まだトクをしたわけでもなんでもないため仕訳も必要ありません。

繰り返しますが、仕訳をするのは、実際にトクをしたとき。つまり、ポイントを「使ったとき」である。これを押さえて、次のハナシに進みましょう。

 

買い物をしてもらったポイントの仕訳と税金

買い物をしてもらったポイントについて、仕訳(帳簿つけ)と税金(確定申告)の考え方を見ていきます。

その考え方は、次の4つのパターンで異なりますので。じぶんが、どのパターンに当てはまるのかに注意をしながら確認をしましょう ↓

買い物をしてもらったポイントの4パターン
  1. 「事業」の買い物でもらったポイントを「事業」で使った
  2. 「事業」の買い物でもらったポイントを「私用」で使った
  3. 「私用」の買い物でもらったポイントを「事業」で使った
  4. 「私用」の買い物でもらったポイントを「私用」で使った

それでは、それぞれのパターンごとに、仕訳と税金のお話をしていきます。

①「事業」の買い物でもらったポイントを「事業」で使った

1つめのパターンは、「事業」での買い物をしてもらったポイントを「事業」で使った、という場合です。

具体例

個人事業者のジョーさんは、仕事で使うデスク30,000円を購入(事業用のクレジットカード払い)。同時に、3,000円分のポイントが付与されました。

その後、ジョーさんは、仕事で使うイス 20,000円を、デスクを買った際のポイント 3,000円分を使って購入しました(事業用のクレジットカード払い)。

仕訳

前述したとおり、ポイントを「もらった」だけなので、「ポイント付与」に関する仕訳はありません。買ったデスクについて、当初金額で仕訳をするだけです ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント付与時】消耗品費30,000未払金30,000

いっぽうで、もらったポイントを「使った」ときには、仕訳が必要になります ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント使用時】消耗品費17,000未払金17,000

上記仕訳の 17,000円という金額は、「当初価格 20,000円 ー ポイント使用 3,000円」で計算をしています。

したがって、経費になるのは実際におカネを負担する金額だけ、であることに注意が必要です。

ちなみに、仕訳に登場する、貸方・勘定科目の「未払金」は、クレジットカード利用金額の引落時に「未払金 ××× / 普通預金 ×××」の仕訳によって消滅します。念のため。

【参考】仕訳・その2

ポイント使用時の仕訳として、こちらもありえます ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント使用時】消耗品費20,000未払金17,000
   雑収入3,000

ポイント使用分を、当初購入金額と相殺をしない、という仕訳の方法です。ただし、本文中の仕訳のように相殺をしても、利益に与える影響(ともに 17,000円)は同じです。

なお、消費税まで考慮する場合(免税事業者ではない場合)には、雑収入 3,000円と消耗品費のうち 3,000円は「消費税の課税対象外」取引であることにはご注意を。

税金

「事業」での買い物をしてもらったポイントを「事業」で使った、という場合には。

ポイントでトクをした 3,000円は、「事業所得」として考えます。

17,000円(当初価格 20,000円 ー ポイント使用 3,000円)を経費として仕訳することで、事業所得の計算上(損益計算書のなかで)、3,000円分を「利益」として認識します。

結果として、ポイントでトクをした 3,000円に対して税金がかかることになります。

「事業所得」ってなに? という場合にはこちらの記事もどうぞ ↓

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②「事業」の買い物でもらったポイントを「私用」で使った

2つめのパターンは、「事業」での買い物をしてもらったポイントを「私用(プライベート)」で使った、という場合です。

具体例

個人事業者のジョーさんは、仕事で使うデスク30,000円を購入(事業用のクレジットカード払い)。同時に、3,000円分のポイントが付与されました。

その後、ジョーさんは、プライベートで使うランニングシューズ 20,000円を、デスクを買った際のポイント 3,000円分を使って購入しました(プライベート用のクレジットカード払い)。

仕訳

前述したとおり、ポイントを「もらった」だけなので、「ポイント付与」に関する仕訳はありません。買ったデスクについて、当初金額で仕訳をするだけです ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント付与時】消耗品費30,000未払金30,000

いっぽうで、もらったポイントを「使った」ときには、仕訳が必要になります ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント使用時】事業主貸3,000雑収入3,000

ポイントを使ってトクをした 3,000円について、貸方「雑収入」として収入に加える。というのが上記の仕訳になります。

借方は、便宜的に「事業主貸」となります(当然、プライベート用のランニングシューズは経費になりません)。

なお、消費税まで考慮する場合(免税事業者ではない場合)には、雑収入 3,000円は「消費税の課税対象外」取引であることにはご注意を。

【参考】仕訳・その2

ポイント使用時の仕訳として、こちらもありえます ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント使用時】事業主貸20,000事業主借17,000
   雑収入3,000

ポイント使用分を、当初購入金額と相殺をしない、という仕訳の方法です。ただし、本文中の仕訳のように相殺をしても、利益に与える影響(ともに 3,000円)は同じです。

税金

「事業」での買い物をしてもらったポイントを「私用」で使った、という場合には。

ポイントでトクをした 3,000円について、前述の「仕訳」によって「事業所得」として考えます。

「私用」で使ったのに「事業所得」、ということに違和感があるかもしれませんが。

これは、『ポイントがどの「〇〇所得」に該当するかは、そのポイントを取得した経緯による』という考え方(※ 下記参考)があるからです。

「企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について」国税庁WEBサイトより

したがって。プライベート用のランニングシューズであろうが、使ったポイントはもともと事業から取得したのだから、ポイントでトクをした分は「事業所得」だ。ということです。

それはそれとして、理屈は理屈として。このケースで、「ほんとう」に、「雑収入 3,000円」を仕訳している人がどれだけいるのだろうか(いや、いまい)。とは、思います。

また、この「雑収入 3,000円」を税務署が把握できるのだろうか(仕訳しなかったとしてバレるのだろうか、いやバレまい)。とも、思います。

しかしながら。このケースでは、理屈として「雑収入 3,000円」が税金の対象になりうる、ということは押さえておきましょう。そのうえで実際にどうするか、は各人の判断です。

③「私用」の買い物でもらったポイントを「事業」で使った

3つめのパターンは、「私用」での買い物をしてもらったポイントを「事業」で使った、という場合です。

具体例

個人事業者のジョーさんは、プライベートで使うランニングシューズ 20,000円を購入(プライベート用のクレジットカード払い)。同時に、2,000円分のポイントが付与されました。

その後、ジョーさんは、仕事で使うデスク30,000円を、ランニングシューズを買った際のポイント 2,000円分を使って購入しました(事業用のクレジットカード払い)。

仕訳

前述したとおり、ポイントを「もらった」だけなので、「ポイント付与」に関する仕訳はありません。ランニングシューズも仕事とは関係がないので、仕訳自体がありません ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント付与時】仕訳なし   

いっぽうで、もらったポイントを「使った」ときには、仕訳が必要になります ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント使用時】消耗品費30,000未払金28,000
   事業主借2,000

デスクについては当初の購入価格 30,000円を全額、借方「消耗品費」として経費にする、というのが上記の仕訳になります。

そのうえで、ポイントでトクをした 2,000円については、貸方「事業主借」としています。

事業主借は収入の勘定科目ではなく、利益計算に影響しませんので。この場合、トクをした 2,000円は税金の対象にならないのか? ということについてはこちらです ↓

税金

「私用」での買い物をしてもらったポイントを「事業」で使った、という場合には。

ポイントでトクをした 2,000円について、「一時所得」として考えます。

さきほど、『ポイントがどの「〇〇所得」に該当するかは、そのポイントを取得した経緯による』だ、とお話をしました。

これにより、事業での買い物から取得したポイントは「事業所得」に、私用での買い物から取得したポイントは事業とは別の「一時所得」に、と考えるのです。

したがって、事業所得の計算をするうえでの仕訳では「事業主借」として、事業所得の計算から除外をするようにしているわけです。

そして、事業所得とは別枠で。一時所得として、ポイントでトクをした 2,000円を税金の対象にします。

ただし。一時所得の税金を計算するときには、収入から最大 50万円を控除できるしくみになっています。

つまり、一時所得に該当する「ポイントによりトクをした金額」が、年間 50万円以下であれば、結果的に税金はかかりません。

年間で 50万円分のポイントを取得するとなると、かなりの額の買い物(5%還元の場合、1,000万円)をしなければいけませんから。一時所得で税金がかかる人は、そういないだろう、と推測します。

【参考】ほかにも一時所得がある場合には… 注意!

買い物でもらったポイント以外にも、一時所得になる収入があれば。それも合算したうえで、50万円以下かどうかを見なければいけません。

たとえば、生命保険の満期金・解約金。ほかには、イマドキで言うと、ふるさと納税の返礼品。たっぷりふるさと納税をして、たっぷり返礼品をもらっている人は要注意です。もらった返礼品は一時所得に加算しなければいけないからです。

ちなみに。返礼品が「何円の収入」にあたるかは実際にはわからないことでしょう(お肉をもらってもそれが何円かはわかりませんよね)。実務的には、寄付した金額に 30%〜50%ていどの割合をかけて計算をしたりします。

④「私用」の買い物でもらったポイントを「私用」で使った

4つめのパターンは、「私用」での買い物をしてもらったポイントを「私用」で使った、という場合です。

具体例

個人事業者のジョーさんは、プライベートで使うランニングシューズ 20,000円を購入(プライベート用のクレジットカード払い)。同時に、2,000円分のポイントが付与されました。

その後、ジョーさんは、プライベート使う2足目のランニングシューズ 20,000円を、1足目のランニングシューズを買った際のポイント 2,000円分を使って購入しました(プライベート用のクレジットカード払い)。

仕訳

前述したとおり、ポイントを「もらった」だけなので、「ポイント付与」に関する仕訳はありません。ランニングシューズも仕事とは関係がないので、仕訳自体がありません ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント付与時】仕訳なし   

2足目のランニングシューズも仕事とは関係ないうえに、ポイントでトクした 2,000円も事業所得とは関係がないために仕訳自体が要りません ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント使用時】仕訳なし   
【参考】仕訳・その2

ポイント使用時の仕訳として、あえてこちらもありえます ↓

 借方・勘定科目借方・金額貸方・勘定科目貸方・金額
【ポイント使用時】事業主貸20,000事業主借18,000
   事業主借2,000

とはいえ、いずれの勘定科目も「事業主貸・事業主借」であり。事業所得の計算に影響するものでもありませんから、あえてこの仕訳をする意味はないでしょう。参考まで。

税金

「私用」での買い物をしてもらったポイントを「事業」で使った、という場合には。

ポイントでトクをした 2,000円について、「一時所得」として考えます。

その理由は、前述した「私用での買い物をしてもらったポイントを事業で使った」場合と同じです。

再三のお話ではありますが、『ポイントがどの「〇〇所得」に該当するかは、そのポイントを取得した経緯による』のです。

ゆえに、私用での買い物でもらったポイントは、事業で使おうが私用で使おうが「一時所得」として考えます。

一時所得の税金計算については、やはり、前述した「私用での買い物をしてもらったポイントを事業で使った」場合と同じになりますので、ここでは省略します。

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まとめと言い訳を少々

買い物してもらったポイントの仕訳と税金についてお話をしてきました。

これまでのお話をザッとまとめると、こんなカンジです ↓

 ポイントを使ったときの仕訳所得の区分
「事業」の買い物でもらったポイントを「事業」で使った費用と相殺事業所得
「事業」の買い物でもらったポイントを「私用」で使った雑収入事業所得
「私用」の買い物でもらったポイントを「事業」で使った事業主借一時所得
「私用」の買い物でもらったポイントを「私用」で使った仕訳なし一時所得

冒頭の繰り返しにはなりますが、ポイントに関する明確なルールは未整備であり。上記は「ひとつの考え方」でしかない、とも言えます。

しかも「理屈」に過ぎず、現実離れしたところがないでもありません(たとえば、ポイントを事業で取得したか・私用で取得したかを実際に区分できるのか?)。

それでも、税金そもそもの考え方を加味したうえで、わたしなりの解釈として、「理屈」で言えばこうだ! ということを本記事にまとめたしだいです。

したがって、別なご意見・主張もあるでしょうし、現実はそんなにカンタンではない、ということもあるでしょう。

また、今後に法律が整備されるなどして別の結論がありえますことを申し添えます(言い訳がましい…)。

買い物してもらったポイントの仕訳と税金

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