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トレンドワード『ミドルリスク』中小企業に銀行融資のチャンス広がる

ミドルリスク先への融資

最近、銀行融資の世界でよく耳にする「ミドルリスク」。ご存知ですか?

なかなか銀行から融資を受けられずに困っている… そんな中小企業にはチャンスと言える、トレンドワード「ミドルリスク」についてのお話です。

目次

最近よく聞く「ミドルリスク」で広がる融資チャンス

銀行融資の世界で、ここ最近よく聞かれる言葉として「ミドルリスク」が挙げられます。

もう少し具体的に言うと、「ミドルリスク先への融資」です。

これについて誤解を恐れずに言えば。ちょっとリスクのある相手(=ミドルリスク先)にも融資をしていこう、との気運が高まっている。ということになります。

なかなか銀行から融資を受けられずに困っている… そんな中小企業にはチャンスと言えるのが「ミドルリスク先への融資」です。

そこで。チャンスを逃さず、つかむために。トレンドワードと言える「ミドルリスク」について、次のようなお話をしていきます ↓

このあとの話の内容
  • ミドルリスク先とは?
  • どのような銀行がミドルリスク先への融資に積極的なのか?
  • ミドルリスク先への融資を受けやすくするためにできることは?

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

 

ミドルリスク先とは?

冒頭、「ちょっとリスクのある相手(=ミドルリスク先)にも融資をしていこう」との気運が高まっている。という話をしました。

では、ここで言う「ミドルリスク先」には、具体的にはどのような会社が当てはまるのか?

まずは、こちらを見てみましょう ↓

区分区分の基準
正常先業況が良好、かつ、財務内容にも問題がない会社(黒字・実態債務超過無し・債務償還年数 10年未満)
要注意先業況が低調・不安定または財務内容に問題がある会社(赤字・実態債務超過無し・債務償還年数 10年以上、延滞有りなど)
破綻懸念先経営難の状態で、経営破たんの可能性が大きい会社(要注意先の状況に加えて、実態債務超過有り)
実質破綻先深刻な経営難で、再建の見通しがない会社
破綻先法的・形式的な経営破綻の事実がある会社

上表は、「債務者区分」と呼ばれるもので、銀行が「融資先を、その状況に応じて区分をする」ときに使われる基準です。

ちなみに、この「債務者区分」は、金融庁が銀行を検査する際に用いる「金融検査マニュアル」にもとづいており、すべての銀行に共通する基準になります。

今回テーマにしている「ミドルリスク先」は、債務者区分で示すと下表の「青色」部分です ↓

債務者区分
正常先上位
下位
要注意先上位
下位(「要管理先」と呼ばれる)
破綻懸念先上位
下位
実質破綻先
破綻先

ミドルリスク先については、明確に定義をされているわけではありませんが、「おおむねこのあたり」という目安が上表です。

つまり。正常先のうち下位のあたりから、要注意先を含み、破綻懸念先のうち上位のあたりまで。

このあたりの会社に対して融資をしていこう、というのが「ミドルリスク先への融資」になります。

いっぽうで、これまでの融資は? と言うと。正常先を中心にして要注意先の上位あたりまで(ローリスク先)、といったところです。

したがって。「ミドルリスク先への融資」は「これまでの融資」に比べると、「要注意先の下位から破綻懸念先の上位」あたりまで、融資のチャンスが広がったと言えるわけです。

具体的に言い換えると。次のような会社にもチャンスが広がった、ということです ↓

ミドルリスク先への融資でチャンスが広がる会社
  • 「赤字」や「債務償還年数 10年以上」といった「要注意先」に分類されるような会社
  • 「債務超過」があるような「破綻懸念先」に分類されるような会社
【参考】銀行は債務者区分を教えたがらない

自社の債務者区分はなんなのか? 銀行に聞けばいいかと言うと、そういうわけでもありません。

債務者区分をめぐってトラブルになる(たとえば、「なんでウチが破綻懸念先なんだ!」と会社が怒り出す)のを避けたい、など。銀行は債務者区分を基本的には口にしません。

よって。上表などを目安に、自社で「当たりをつける」ことも必要です。

【参考】債務償還年数や債務超過についてはこちらの記事をどうぞ

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どのような銀行がミドルリスク先への融資に積極的なのか?

「ミドルリスク先」とはどのような会社を言うのか、を理解したところで。次は、どのような銀行がミドルリスク先への融資に積極的なのか? について見ていきましょう。

結論、信用金庫・信用組合、あるいは地方銀行です。

ここでだいじなのは、「少なくとも都市銀行ではない」ということ。都市銀行に「ミドルリスク先への融資」を期待してはいけません。

なぜならば。都市銀行には、融資を求めて多くの優良企業が集まるからです。都市銀行は、優良企業(正常先)だけを選んで融資をすることで、じゅうぶん商売になる。

ゆえに、わざわざリスクが高い「ミドルリスク先」に融資をする理由がありません。

これに対して、信用金庫・信用組合などには、都市銀行(あるいは大きめの地方銀行)で融資を受けられない会社が集まりやすくなります。

そのような会社のなかに「正常先」は少ないわけで。正常先だけに融資をしていたのでは、信用金庫・信用組合は生き残ることが難しい。

ですから、規模の小さな銀行ほど、ミドルリスク先への融資には積極的にならざるをえない。という背景があります。

加えて、2019年春の金融検査マニュアル廃止もポイントです。

金融検査マニュアルが廃止されれば、各銀行は、これまでの債務者区分にとらわれない、裁量を効かせた融資が広がっていくでしょう。

この流れが、ミドルリスク先への融資を後押しするはずです。

「なかなか銀行から融資を受けられずに困っている…」という中小企業にも、融資のチャンスが大きくなります。

 

ミドルリスク先への融資を受けやすくするためにできることは?

ミドルリスク先への融資が広がるとは言っても。「赤字」など状況が悪い会社のすべてが対象になる、と考えるのは間違いです。

たとえば、同じ「赤字」だとしても。今後もずっと赤字が見込まれるミドルリスク先と、いずれ黒字が見込まれるミドルリスク先とは、まったくの別モノです。

銀行が融資をしたいと考えるのは、もちろん後者。「いずれ良くなるはず」を前提に、目の前のミドルリスクを許容するのです。

であるならば。ミドルリスク先への融資を受けやすくするためには、「(自社が)いずれ良くなる」と銀行に伝えること。これを押さえておきましょう。

では、「いずれ良くなる」を具体的に伝える方法とは? について、3つほどお話をしていきます。

自社のこと・商品のことをきちんと伝える

なにをいまさら、と思われるかもしれませんが。銀行は、意外と融資先のことを知らなかったりもするものです。

ためしに、銀行担当者に「ウチはなにをしている会社?」と聞いてみましょう。

いちばんヒドいのは「製造業」などの業種での返答です。ひとくちに製造業と言っても、つくっているものは会社によって違うのです。

また、「ネジをつくっている」との返答も不十分です。ネジはどんなネジで、よそのネジとなにが違うのか? そこまで返答できて合格でしょう。

この点について。もしも銀行が、融資先の会社のことや、商品のことを理解していなければ、「いずれ良くなる」と考えてもらうことはできません。

結果、「ミドルリスク先への融資」にもつながりません。

自社のこと・商品のことなんて銀行は知っているはず、とは考えずに。あらためて、きちんと伝えるようにしてみましょう。

融資に必要な基本書類を提示する

銀行融資に必要な基本書類として、試算表(決算日から間もなければ決算書)、資金繰り表、借入金一覧表が挙げられます。

これらは、銀行が融資先の審査をする際の重要な「材料」になります。

にもかかわらず。銀行に提示できていない、という会社は決して少なくありません。

これでは銀行も「いずれ良くなる」と判断できる材料が無いのですから、「ミドルリスク先への融資」は難しくなってしまいます。

基本書類の提示は、融資全般に言えることではありますが。状況が良くない会社こそ、基本書類はきちんと提示をするようにしましょう。

経営(改善)計画をつくる・実行する

前述した基本書類に加えて、経営(改善)計画書を提示するのも有効です。

計画に記載される「いまある問題は何なのか? 問題をどう解決するか? 具体的にどう行動するか?」などによって、銀行は「いずれ良くなる」を判断することができるからです。

いっぽうで、明文化されたものも無く、いくら口頭で「良くなる、良くなる」と言っても、銀行の判断材料にはならないでしょう。

判断ができなければ、融資をすることもできません。

また、計画書をつくるだけ、というケースにも気をつけましょう。とんでもない右肩上がりで改善をする「絵に描いたモチ」的な計画書も散見されます。

計画があれば必ず、その実行度合・達成度合を銀行は確認します。計画をつくるのであれば、きちんと実行する。あたりまえのことをあたりまえに考えましょう。

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まとめ

最近、銀行融資の世界でよく耳にする「ミドルリスク」についてお話をしてきました。

まずは「ミドルリスク先」の定義を押さえること。そのうえで、自社が「ミドルリスク先」に該当するのであれば、「ミドルリスク先への融資」を受けるためにできることを実行していきましょう。

銀行融資を受けられるチャンスが広がります。

ミドルリスク先への融資

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