Suicaは、チャージをしたときに仕訳でOK!
って、それ。間違ってますよ。Suicaは、使ったつど仕訳が正解。ゆえに、Suicaを使うなら「毎日経理」をおすすめします、というお話です。
フリーランスが誤解している「Suica」の経理処理
フリーランスの経理(帳簿つけ)について。よくある誤解のひとつに、「Suica(交通系ICカード・電子マネー)」の経理が挙げられます。
具体的には、「Suicaをチャージしたときに仕訳をすればよい」という誤解。たとえば、こういうことです ↓
日付 | 借方 勘定科目 | 借方 金額 | 貸方 勘定科目 | 貸方 金額 | 摘要 |
チャージした日 | 旅費交通費 | 10,000 | 現金 | 10,000 | Suica チャージ代 |
であるならば。Suicaを使ったときの経理はラクチンでしょう。チャージ代の領収書を見て、仕訳をすればよいだけですから。
ところが、このような経理は「正しい経理」とは言えません。
正しくは、Suicaを使ったつど仕訳をする。チャージ代の仕訳は無し。メンドーで、タイヘンかもしれませんが、これが正解です。
という「前提」を置いたところで。
Suicaを使うなら「毎日経理」をおすすめします。その理由は… というお話をしていきます。理由は次の3つです ↓
- なにしに行ったかを忘れてしまうから
- なんのために買ったのかを忘れてしまうから
- 溜め込むほどに経理がおっくうになるから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
Suicaを使うなら「毎日経理」をおすすめする3つの理由
《理由1》なにしに行ったかを忘れてしまうから
冒頭、「Suicaをチャージしたときに仕訳をすればよい」は間違いですよ、というハナシをしました。正しくは、Suicaを使ったつど仕訳をする。
この点で、Suicaを「電車・バス代の支払い」に使ったときには、Suicaの利用履歴ごとに次のような仕訳をします ↓
日付 | 借方 勘定科目 | 借方 金額 | 貸方 勘定科目 | 貸方 金額 | 摘要 |
Suica使った日 | 旅費交通費 | 165 | 事業主借 | 165 | 入 東戸塚 出 横浜 〇〇さん 経理コンサル |
Suicaにチャージしたとき、利用したときは、いずれも貸方・勘定科目に「事業主借」を使うとよいでしょう。
これであれば、Suicaの残高を「経理上」管理する必要がなく、1枚のSuicaを仕事でもプライベートでも使っている場合にも有効です。
上記仕訳は、お客さまである〇〇さんの経理コンサルティングをするために、東戸塚駅から横浜駅まで電車に乗りました、という例です。
摘要にこれだけ書くとは、なんとまぁ、メンドーなことか… と思われるかもしれませんが。上記の仕訳でだいじなのは、「なにしに行ったか?」です。とくに「〇〇さん 経理コンサル」の部分。
同じ「横浜」に行くのでも、仕事で行くこともあれば、プライベートで行くこともあるわけで。Suicaはどちらの場合にも使えます。
当然、フリーランスが「経費」にできるのは「仕事で行った」部分だけ。だから、Suicaを使ったつど仕訳をして、「仕事で行った」を明らかにする必要があるのです。
「仕事用とプライベート用のSuicaを分けている」と言うかもしれませんが、それとて「ほんとうに仕事かどうか」は、明細を見なければわかりません。
でも、利用履歴ならば券売機からプリントアウトできる、モバイルSuicaならネットで見れるじゃないか。とも言われるかもしれませんが。
「なにしに行ったか?」までは印字・表示されません。利用履歴からわかることは、「どこへ行ったか?」までです。やはり「仕事で行った」は、じぶんで明らかにしなければいけないのです。
というわけで、電車・バス代の支払いのつど仕訳をするとなると。電車・バスの利用が多い人ほど、時間がたてば「なにしに行ったか?」を忘れてしまうことでしょう。
ゆえに、Suicaを使うのであれば、忘れないうちに「毎日経理」をするのがおすすめです。わたし自身、毎朝、前日に利用した分の経理を済ませるようにしています。
クラウド会計を使って経理をしていて、モバイルSuicaを使っているのなら。Suicaの利用履歴を、クラウド会計に取り込むことができます。
この場合、電車の利用区間は「入 東戸塚 出 横浜」などと表示されますから、それに加えて「〇〇さん 経理コンサル」などの情報を入力するとよいでしょう。
《理由2》なんのために買ったのかを忘れてしまうから
いまやSuicaは、電車・バス代の支払いに限らず、いろいろな「お買い物」にまで使えるようになりました。その利用範囲は広がるばかりです。
と、便利でいろいろ使えるSuicaだからこそ、「チャージしたときに仕訳」をしていたのでは問題が起きてしまいます。
電車・バス代の問題と同じく、そのお買い物が、仕事用なのかプライベート用なのかがわからないからです。
いやいや、仕事用とプライベート用のSuicaを使い分けているんだ。と言われるかもしれませんが。
チャージ代を「旅費交通費」で仕訳してしまったら、「お買い物」という内容と勘定科目とにズレが生じてしまいます。
ですから、Suicaでのお買い物については、Suicaを使ったつど、その内容に応じて仕訳をしましょう。たとえば、次のとおりです ↓
日付 | 借方 勘定科目 | 借方 金額 | 貸方 勘定科目 | 貸方 金額 | 摘要 |
Suica使った日 | 接待交際費 | 3,240 | 事業主借 | 3,240 | △△百貨店 〇〇さん 手土産 |
上記仕訳は「接待交際費」の例ですが、ほかにも、備品類を買ったら「消耗品費」、カフェで仕事をしたら「会議費」、本を買ったら「新聞図書費」などいろいろです。
いろいろなのですが。お買い物をした際の、Suicaの利用履歴には「物販」と表示されるのみ。Suica利用時の「レシート」をきちんと受け取り、失くさないようにしましょう。
ここでのだいじなポイントは、「なんのために買ったのか?」です。レシートに印字されるのは「なにを買ったか」までであり、「なんのために」がありません。
なにを買ったかしかわからなければ、そのお買い物が仕事用なのかプライベート用なのかを明らかにすることができない。
したがって、「なんのために」は、じぶんで明らかにしなければいけません。上記仕訳で言えば、「〇〇さん 手土産」の部分です。
というわけで、お買い物のつど仕訳をするとなると。お買い物が多い人ほど、時間がたてば「なんのために買ったのか?」を忘れてしまうことでしょう。
やはり、忘れないうちに「毎日経理」をするのがおすすめです。当日、翌日であれば、レシートを見てすぐに思い出すことができますから。
《理由3》溜め込むほどに経理がおっくうになるから
Suicaを使うのであれば「毎日経理」をおすすめする、さいごの理由。
それは、Suicaの仕訳を溜め込むほどに経理をするのがおっくうになるから、です。
Suicaは「チャージをしたときではなく、使ったつど仕訳をする」ということについては、ここまでお話をしてきたとおりです。
であるならば。Suicaを便利に多用すればするほど、すべき仕訳は増えることになります。Suicaをよく使う人ほど、仕訳の作業が増えるのです。
この点で、クラウド会計とモバイルSuicaを組み合わせて、省力化できる部分(日付・金額・利用区間の入力)はありますが。
それでも、省力化できない部分(なにしに行ったか・なんのために買ったかの入力)は、作業として残ります。
いずれにせよ、Suicaを使えば、仕訳が必要になる。仕訳をせずにいれば、どんどん作業が溜まる。作業が溜まると、経理をするのがおっくうになる。
おっくうになるから、確定申告期限ギリギリになってタイヘンな思いをする… ということが起こりえます。
タイヘンな思いをするだけではなく、「なにしに行ったか・なんのために買ったか」が思い出せずに経費にしそびれると、「税金がムダに増える」という損にもつながります。
Suicaに限らずですが、溜め込んで良いことなどなにもない、と心得ておきましょう。フリーランスは、毎日経理がおすすめです。
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まとめ
Suicaを使うなら「毎日経理」をおすすめする3つの理由についてお話をしてきました。
まずは「Suicaをチャージしたときに仕訳をすればよい」という誤解に気をつける。正しくは、「使ったつど仕訳をする」です。
そのうえで、Suicaは毎日経理するのがおすすめです。
- なにしに行ったかを忘れてしまうから
- なんのために買ったのかを忘れてしまうから
- 溜め込むほどに経理がおっくうになるから