”支払う税金は少ないほうがいい”
たしかに。けれども、「やりすぎ」は禁物です。というわけで、「やりすぎ節税」で失敗する個人事業者・フリーランス3つの特徴についてお話をします。
節税は大切だけど、やりすぎ注意。
個人事業者・フリーランスの関心事の1つに「節税」が挙げられます。
つまり。「支払う税金をできるだけ少なく済ませたい」というのは、多くの個人事業者・フリーランスの思いだと言えるでしょう。
もちろん、払わなくてもいい税金は払わないほうがいいのであり、ムダに税金を払わずにすむよう「節税」をはかるのは大切なことです。
ところが。その大切な節税をやりすぎているケースがあります。
目の前の税金は減ったとしても、「結果的には失敗」をしてしまう。という意味での「やりすぎ」です。
そこで、そんな「やりすぎ節税」で失敗をする個人事業者・フリーランスの特徴についてお話をしていきます。
じぶんは、やりすぎていないかな? という目で確認をしてみましょう。やりすぎ節税の特徴は次の3つです ↓
- 根拠・基準がない
- ぜんぶを経費にする
- 利益を見ていない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
節税をやりすぎる個人事業者・フリーランス3つの特徴
《特徴1》根拠・基準がない
経費を増やして税金を減らす、という考え方があります。
この点で、経費を増やす(経費を計上する)にあたり、その根拠・基準がない。これは「やりすぎ節税」の特徴の1つです。
自宅兼オフィスの例(根拠)
たとえば、自宅兼オフィスの家賃について。「ちまたでは〇割くらいまでは経費でOK、と言われているから」との理由で、家賃の〇割の金額を経費にしている。
これは、経費の「根拠」にはなりません。家賃の何割を経費にできるかは、あくまで「実際に、何割をオフィスとして使っているか」で決まります。
したがって、「自宅兼オフィス全体の床面積のうち、オフィスとして使っている床面積の割合」が経費の根拠です。
税務調査でも「ちまたでは〜と言われているから」では根拠になりません。場合によっては、過去の確定申告について修正を求められることになってしまいます。
そんな失敗をしてしまわないように、事実に合ったじぶん自身の根拠にもとづいて経費にしましょう。
自宅兼オフィスと同じく、仕事でもプライベートでも使う「クルマ」「パソコン」「スマホ」なども、根拠があいまいになりがちなところです。
経費にしている場合には、あらためて根拠を確認しておきましょう。こちらの記事も参考にどうぞ ↓
CHECK! 税務署に負けない!家事関連費の仕訳・按分・書類の経理処理
飲食費の例(基準)
たとえば、他人との飲食費について。「経費か経費じゃないかは、どう区別していますか?」との質問には答えられるでしょうか。
友人とプライベートで飲みに行ったときの飲食費が経費ではない、というのは明らかですが。友人でもあり仕事仲間でもある、という場合の飲食費については微妙です。
このような場合に「万人共通の正解」は無く、経費か否かは「各自の基準」によることになります。
基準の例を挙げるのであれば。平日の飲食費は経費にする、休日の飲食費は経費にしない、とか。1件めのお店は経費にする、2件め以降のお店は経費にしない、とか。
ハタから見たときに、「おおむね納得できる」という基準を持つことが大切です。このあたりの基準が不明瞭だと、税務調査でも「追及」されがちになることを覚えておきましょう。
ちなみに。経費から外した分の領収書・レシートも保存しておけば、「区別した」ことの証拠として使えます。必要に応じて保存を検討しましょう。
《特徴2》ぜんぶを経費にする
経費を増やして税金を減らす、という考え方があります。
この点で、ぜんぶ(あるいは、たくさん)を経費にしようとする。これは「やりすぎ節税」の特徴の1つです。
自宅兼オフィスの例
たとえば、1LDKの自宅兼オフィスの家賃について。1部屋は仕事部屋として、リビングも応接として使っている。台所はお客にお茶を出すのに使うし、トイレはお客も使う。
だから、家賃のぜんぶを経費にしてもいいだろう。というのは「やりすぎ」だと言ってよいでしょう。
仕事とは関係がない私物を置くスペースもあるはずですし、リビングは私生活で使う時間もあるはずだからです。つまり、「ぜんぶ経費」というのは明らかに不自然。
これはさすがに極端な例ではありましたが、「ぜんぶ」とは言わないまでも、「(事実よりも)たくさん」を経費にしようとしているケースは散見されます。
税務署から見ても「ぜんぶ」とか「たくさん」というのは目につきやすく、しばしば修正の対象とされるところです。
逆に「ぜんぶではない(一部経費から外している)」や「たくさんではない」のであれば、目につきにくくなります。
もちろん、前述した「根拠」ありきではありますが。「ぜんぶ」や「たくさん」が不自然ではないか? という目も持ちましょう。
飲食費の例
たとえば、他人との飲食費についても、「ぜんぶ」や「たくさん」で「やりすぎる」ことがあります。
「ぜんぶ」あるいは「たくさん」を経費にしようとすることで、自然、経費の金額は大きくなりがちだからです。
経費の金額が大きくなれば、当然、税務署の目につきやすくなる。そのときに、やりすぎていれば、やはり修正を余儀なくされます。
ぜんぶを経費にしたい、たくさんを経費にしたい、という思いもありますが。前述したとおり、「基準」にもとづいて経費にすることが大切です。
《特徴3》利益を見ていない
経費を増やして税金を減らす、という考え方があります。
この点で、経費を増やして利益を減らすことばかりに目が向き、利益そのものに目が向いていない。これは「やりすぎ節税」の特徴の1つです。
脱税をしている、と見られる例
経費を増やして利益を減らした結果。利益が少なすぎれば、税務署から「脱税」を疑われることになります。
つまり、「こんな利益では生活できないだろうから、売上を隠したり、ウソの経費があったりするのでは?」と疑われるわけです。
疑われても問題ないのであればよいですが。そうではない、後ろめたいところもある、と言うのであれば「やりすぎ」です。
利益を減らすばかりではなく、じぶんの利益がいくらあるのか? 生活するだけの利益があるのか? と、「利益」そのものを見る目を持ちましょう。
経費を使いすぎておカネが無い例
経費を増やしたことについて。とくに後ろめたいことなどない、間違いなく経費だという場合であっても。
おカネを使って経費を増やせば、残るおカネも少なくなります。目の前の税金は減りますが、それ以上のおカネを経費で使っているからです。
使った経費以上に税金は減らない、言われてみればあたりまえのことなのに。多くの人が、それでも税金を減らそうと経費を使っています。
税金は減っても、手元のおカネが減る、無くなってしまうのであれば元も子もありません。「やりすぎ」です。
おカネを増やすためには「利益」がいる、と意識する。過度に税金を嫌わず、「利益」を見る目を持ちましょう。
信用できない、とみられる例
経費を増やし利益を減らすと、その分、他人からの信用力が下がります。
具体的には、住宅ローンや賃貸入居時の審査、事業融資の審査、クレジットカードの審査などに落ちてしまう。ということです。
ムリに税金を減らそうとした結果、このような事態を招いていたのでは目も当てられません。
支払う税金を減らすことができたとしても、利益を減らした分だけ信用も減る。これを覚えておきましょう。
個人事業者・フリーランスにとって、事業の「利益」はだいじな信用のひとつです。
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まとめ
「やりすぎ節税」で失敗する個人事業者・フリーランス3つの特徴についてお話をしてきました。
ムダに税金を払うことはありませんが、「やりすぎ節税」になってはいないか? いちど確認をしてみましょう。
- 根拠・基準がない
- ぜんぶを経費にする
- 利益を見ていない