銀行の担当者が、〇〇率がどうこう言っている。でも、〇〇率ってなんだったっけ…?
ということがないように。銀行融資でよく聞く財務指標について、その算式と目安のお話をしていきます。
アレ、なんだっけ? で集中力を欠くことがないように。
決算書について。なんとか率、なんたら比率など、いわゆる「財務指標」にもいろいろありますが。
会社・事業における銀行融資の場面でとくによく聞く、という財務指標があります。
この点で。銀行の担当者が、ウチの決算書を見て〇〇率がどうこう言っている… アレ? そういえば、〇〇率ってどうやって計算するんだっけ?
なんていうこともあるでしょう。つまり、「算式」がわからない、忘れてしまった。
あるいは。そもそも〇〇率というのはどのくらいを目指すものなのだろう? と、「目安」がわからない。そんなこともあるかもしれません。
いずれにせよ、銀行と話をするにも困ってしまうことでしょう。アレコレ思いをめぐらせていては、話に集中できませんよね。
そこで、銀行融資でよく聞く財務指標について、算式と目安をまとめてみます。次の9つです ↓
- 自己資本比率
- 流動比率
- 固定長期適合率
- ギアリング比率
- 売上高経常利益率
- 総資本経常利益率
- キャッシュフロー
- 債務償還年数
- インタレスト・カバレッジ・レシオ
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資でよく聞く財務指標の「算式と目安」
① 自己資本比率
- 算式 ・・・ 自己資本 ÷(負債+自己資本)
- 目安 ・・・ 30%以上
算式中の「自己資本」は、貸借対照表の「純資産の部」の合計。「負債」は、同じく貸借対照表「負債の部」の合計で計算してみましょう。
「負債+自己資本」は、集めたおカネ(資金調達)の合計額になります。
うち、負債は、他人から集めたおカネ(借入など)で、いずれ返さなくてはいけないもの。
自己資本は、じぶんで集めたおカネ(出資、利益など)であり、ずっと返さなくてもよいものを表します。
したがって、自己資本比率は「集めたおカネのうち、ずっと返さなくてよいおカネの割合」を計算するものです。
そういう意味では、自己資本比率が高いほうが安全だよね、ということで 30%くらいが目安になります。30%は難しくても、20%は欲しいなぁ、というところ。
とはいえ。高ければ高いほどいいか、というとそういうわけでもなく。いくら自己資本比率が高くても、おカネ(現金預金)自体が少なければ、会社は困ってしまいます。
ですから、じぶんのおカネ(自己資本)が無いのであれば、他人からおカネを集める必要がある。自己資本比率は、現金預金とのバランスにも注意しましょう。
② 流動比率
- 算式 ・・・ 流動資産 ÷ 流動負債
- 目安 ・・・ 150%以上
流動資産は、1年以内に現金化する資産。流動負債は、1年以内に支払わなければいけない負債です。
よって、「流動資産 > 流動負債」が望ましい状態になります。そうでないと、おカネ(資金繰り)が回らないだろうということですね。
このとき、ギリギリ「流動資産 > 流動負債」というのでは、資金繰りをするのにも不安なので。
流動資産のほうは少々余裕をもって… との意味合いから、流動比率は 150%以上が目安になります。つまり、流動資産が流動負債の 1.5倍以上。
ちなみに、流動比率は 200%以上がいい、などと言われることもあります。ずいぶんと高いなぁ、高すぎだろう、と思いもするのですが。
流動資産のなかには「不良債権」やら「不良在庫」が混じっていることがあると考えると、あながちおかしなハナシでもなかったりするのはおもしろいところです。
③ 固定長期適合率
- 算式 ・・・ 固定資産 ÷ (固定負債 + 自己資本)
- 目安 ・・・ 100%以下
不動産や機械設備など、長期で使う「固定資産」を買うのであれば。いちばんは、ずっと返さなくてもよいおカネ「自己資本」で買うのがのぞましい、と言えるでしょう。
でも、それはちょっとキツいなぁ… ということで。すぐには返さなくてもよいおカネである「固定負債」をあわせて買うのならいいだろう。
これが、算式中の「固定負債 + 自己資本」にあたります。
この「固定負債 + 自己資本」よりも「固定資産」のほうが大きくなってしまうと。つまり、固定長期適合率が 100%を超えてしまうと、
1年以内に支払わなければいけないおカネ「流動負債」もあわせて、固定資産を買っていることになってしまいます。
それはマズいだろうとの考えから、固定長期適合率は 100%以下が目安です。
ところで、固定長期適合率とはなんともとっつきにくい名称ゆえ、算式をイメージできずに「なんだったっけ?」という人があとを絶ちません。わたしもそのひとりだったりしたわけですが…
④ ギアリング比率
- 算式 ・・・ 借入金 ÷ 自己資本
- 目安 ・・・ 150%以下
他人に返さなければいけないおカネである「借入金(有利子負債)」を、ずっと返さなくてもよいおカネである「自己資本」でカバーできているかを見る財務指標です。
そう考えると、借入金が自己資本以下になる「100%以下」がベストであり、ギアリング比率は低ければ低いほどよい、と言えます。
とはいえ、現実問題として、それはさすがに難しいだろう… というところがあり、目安としては 150%以下といったところでしょう。
なお、自己資本比率のところでも触れましたが。おカネも無いのに借入金を減らしすぎて資金繰りに支障をきたす、これは本末転倒です。
必要なおカネは借りる、そのうえでの自己資本比率やギアリング比率であることを忘れてはいけません。
⑤ 売上高経常利益率
- 算式 ・・・ 経常利益 ÷ 売上高
- 目安 ・・・ 3〜5%以上
財務指標のなかでもメジャーなものでしょうから、算式で迷うことはあまりないはずです。
売上高経常利益率、その名のとおり、「売上高に対する経常利益の割合」になります。
目安は業種によりけり、というところではありますが。おおむね「3〜5%以上」がひとつの目安だと言えます。
ちなみに、売上高〇〇利益率というのはいろいろです。売上高経常利益率のほかにも、売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高当期純利益率などがあります。
なかでも、売上高経常利益率が重視されるのは、当期純利益から特別利益・特別損失の影響を除いた「経常利益」が、会社の経常的な収益力を見るのには適しているからです。
⑥ 総資本経常利益率
- 算式 ・・・ 経常利益 ÷ 総資本
- 目安 ・・・ 3〜5%以上
さきほどの売上経常利益率について、分母を総資本(負債+自己資本)に代えたものが「総資本経常利益率」です。「ROA(Return On Asset)」とも呼ばれます。
目安はこちらも業種によりけりではありますが、おおむね「3〜5%以上」を目安と考えるのがよいでしょう。
ちなみに。この総資本経常利益率がスゴいのは、「売上高経常利益率」と「総資本回転率」とに分解ができるところです ↓
- 総資本経常利益率 = 売上高経常利益率 × 総資本回転率
- 売上高経常利益率 = 経常利益 ÷ 売上高
- 総資本回転率 = 売上高 ÷ 総資本
売上高経常利益率については前述したとおり。総資本回転率は、集めたおカネである「総資本(負債+自己資本)」によって、どれだけ効率よく売上をあげることができたかをあらわします。
もし、総資本回転率が「1(回転)」ならば、1年の売上で総資本を1回だけ回収できた。「2(回転)」ならば、1年の売上で総資本を2回も回収できた。
したがって、総資本回転率が高いほど効率がよい、ということになります。
「売上高経常利益率」と「総資本回転率」の目安はマチマチです。
たとえば、いっぱんに小売業は、売上高経常利益率が低く、総資本回転率が高い(薄利多売)。製造業であれば、逆に、売上高経常利益率が高く、総資本回転率が低い。
自社の商売(ビジネスモデル)を考えながら、「売上高経常利益率」と「総資本回転率」の組み合わせで、どう総資本経常利益率を高めるかを考えましょう。
⑦ キャッシュフロー
- 算式 ・・・ 営業利益 + 減価償却費
- 目安 ・・・ 少なくともプラス
借入金返済の「原資」になるものであり、「キャッシュフロー」は銀行融資における最重要指標と言ってもよいでしょう。
このキャッシュフローがゼロ以下になってしまうと、銀行は「返済原資が無い=これ以上貸せない」と考えます。
よって、銀行融資を考えるうえでは、キャッシュフローは「少なくともプラス」が最低限の目安です。
もちろん、キャッシュフローは多ければ多いほどよく、返済力が高いとの評価をされることになります。
なお、「営業利益」は各種の利益のなかでも「本業の利益」をあらわし、純度が高い(非経常的なものが混じっていない)利益として使われるものです。
これに対して、「総合的な利益」として当期純利益を用いて、「当期純利益 + 減価償却費」をキャッシュフローと呼ぶこともあります。
いずれにせよ、「利益」が重要なのであり。あまり「節税、節税」と考えていると、銀行融資が遠のくことを「キャッシュフロー」の財務指標は教えてくれます。
⑧ 債務償還年数
- 算式 ・・・ 借入金 ÷ キャッシュフロー
- 目安 ・・・ 10年以下
いまある借入金の残高が、前述のキャッシュフローの何年分あるか? をあらわすのが「債務償還年数」です。
銀行融資では、10年以下が目安になります。10年を超えると借りすぎ、という考え方です。
では、債務償還年数は短ければ短いほどいいか、というと。やはり、そうとも言い切れません。
なんども繰り返していますが、会社・事業の持続や成長に「必要な借入金」というものもあるからです。
目安として、月商の3ヶ月分の現金預金を持つこと。月商の3ヶ月分の現金預金を自前で持てないのであれば、銀行融資を利用することをおすすめします ↓
⑨ インタレスト・カバレッジ・レシオ
- 算式 ・・・ (営業利益+受取利息)÷ 支払利息・割引料
- 目安 ・・・ 3倍以上
インタレスト・カバレッジ・レシオもまた、「なんだったっけ?」となりがちな財務指標のひとつでしょう。
名称を聞いただけでは算式がイメージできない… みたいな。
そのインタレスト・カバレッジ・レシオが意味するところは、カンタンに言うと、営業利益が支払利息の何倍あるか? です。
もしも1倍を割るということになると。それは、支払利息を払えるだけの営業利益を稼げていないことになってしまいます。
銀行から見たら、元金はもちろんのこと、利息ももらえないような会社なら融資なんてできない! です。
キャッシュフローのところでも触れましたが、利益を出す。これが、各種の財務指標を改善するにあたってのいちばんの方法です。
銀行融資におすすめのメニュー
モロトメジョー税理士事務所では、「銀行融資のサポート」をするメニューをそろえています! 当事務所は経営革新等支援機関の認定を受けています。
銀行融資の記事まとめページ
銀行融資入門セミナー
銀行融資・財務のコンサルティング
銀行融資の個別相談
まとめに代えて
銀行融資でよく聞く財務指標についてお話をしてきました。
銀行との会話のなかで出てくることもあるでしょうから、よく聞く財務指標はあるていど押さえておくのがよいでしょう。
なお、銀行が融資審査をするにあたり財務指標を計算するときには、決算書の「表面」の数字ではなく、「実態」の数字に補正をして計算をしています。
たとえば、銀行が粉飾(利益の水増し)に気づいている場合。キャッシュフローなら、粉飾分を差し引いた利益で計算をする、ということです。
ほかにも、不良債権や不良在庫を補正して流動比率を計算したり。銀行が見ているのは、あくまで「実態」の数字だと覚えておきましょう。
さいごにだいじなことをもうひとつ。銀行融資を受けるうえで、財務指標については「気にし過ぎない」ことです。
あまたある財務指標のそれぞれをよくするには…? と考えていると「本質」を見失いかねません。
あまり個々の財務指標には固執せず、大局で見ることが大切であり、それでじゅうぶん銀行融資は受けられます。大局的な3つの指標を押さえておくのがおすすめです ↓