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返済額大きい・資金繰り厳しいB社、社長はさらに借りるべき?【事例でみる銀行融資】

返済額大きい・資金繰り厳しい会社

毎月の返済額が大きく、資金繰りが厳しい会社。

資金繰りをなんとかするために、社長はさらに借りるべきかどうか? B社の事例の事例をもとにお話していきます。

目次

資金繰りが厳しい… 借りられるなら借りるべき?

売上・利益が減っている。結果的に、銀行への毎月返済額が大きく、資金繰りが厳しい。

たとえば、次の「B社」のような会社はどうでしょう?

B社の財務状況
  • 直近決算書 ・・・ 売上高 1億 2,000万円、税引後利益 500万円、現金預金 700万円、売掛金 1,500万円、在庫 500万円、買掛金 1,000万円
  • 前期決算書 ・・・ 売上高 1億 5,000万円、税引後利益 1,000万円
  • 前々期決算書 ・・・ 売上高 1億 8,000万円、税引後利益 1,500万円
  • 現在の借入状況は下記のとおり 
 借入残高毎月返済額
甲銀行保証協会付き融資3,000万円60万円
甲銀行プロパー融資1,000万円40万円
乙銀行保証協会付き融資600万円20万円
合計4,600万円120万円

上記のとおり、B社は売上・利益ともに減少傾向。手元の現金預金は 700万円。平均月商 1,000万円(1億 2,000万円 ÷ 12ヶ月)の1ヶ月分未満と、心もとない状態にあります。

銀行から借りれるのであれば借りようか…? じぶんがB社の社長になったつもりで考えてみましょう。

その結果、検討すべきこととして次の3つが挙げられます ↓

返済額大きい・資金繰り厳しい会社の社長が検討すべき3つのこと
  1. 借りても返せるか?
  2. 短期継続融資に切り替える余地はあるか?
  3. 信用保証協会の借換保証は使えるか?

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

 

返済額大きい・資金繰り厳しい会社の社長が検討すべき3つのこと

《検討1》借りても返せるか?

B社の「借入状況」を再掲します ↓

 借入残高毎月返済額
甲銀行保証協会付き融資3,000万円60万円
甲銀行プロパー融資1,000万円40万円
乙銀行保証協会付き融資600万円20万円
合計4,600万円120万円

これによれば、B社の年間返済額は 1,440万円(100万円 × 12ヶ月)です。いっぽうで、返済原資である「年間の利益」は 500万円。

したがって、返済額が返済原資を大きく上回る状態にあり、資金繰りが厳しい(現金預金が目減りを続ける)であろうことがわかります。

では、資金繰りが厳しいからと言って、「さらに銀行から融資を受ける」というのはどうでしょう?

もちろん、銀行が貸してくれるかどうかはわかりませんが。もし貸してくれるとしても、この状況でさらに借りるという選択はとても危険です。

なぜなら、ここでさらに借りれば、毎月の返済額はより大きくなります。ゆえに、いずれすぐにまた資金繰りが詰まることは目に見えているから、ですね。

融資を受けようとする前には、今後の返済額と返済原資とを比べてみて、「借りても返せるか?」を検討するようにしましょう。

B社の場合、業績(利益)が回復することが確かだ、というのなら別ですが。そうではないのであれば、借りずになんとかならないか? を考えてみることが大切です。

《検討2》短期継続融資に切り替える余地はあるか?

B社が、すぐには業績回復が見込めない状況である場合。前述したとおり、「さらに借りる」のは得策とは言えません。

そこで、現状の借入を見直すことを考えます。まずは、「短期継続融資」です。

短期継続融資とは、いわゆる「所要運転資金」を対象として、毎月返済無しの継続的な融資を言います。短期一括返済の手形貸付で期限が来たら書き替えるため、継続して借りているのと同じです。

ちなみに、所要運転資金は「売掛金・受取手形 + 在庫 − 買掛金・支払手形」で計算されるものであり、会社が事業を継続する限り「立て替え」が必要な金額です。

所要運転資金の詳しい説明は別記事に譲りますが、「立て替えが必要な所要運転資金の分だけ融資を受けておく」のは資金繰りのセオリーです。そうでなければ、資金繰りが厳しくなってしまうから。

これをB社に当てはめてみると、「売掛金 1,500万円 + 在庫 500万円 − 買掛金 1,000万円 = 1,000万円」の融資を受けておく必要があります。

ところが、「ただ融資を受ければいい」わけではありません。所要運転資金 1,000万円分の融資を受けたとしても、毎月返済を続けていくような融資だとしたらどうでしょう?

手元のおカネは返済した分だけ目減りをしていきますから、徐々に資金繰りは厳しくなってしまいます。よって、所要運転資金分の融資は「借り続ける」ことがだいじなのです。

そこで、所要運転資金を対象として、毎月返済無しの継続的な融資が「短期継続融資」になります。現状、B社の借入はすべて毎月返済ありですから短期継続融資はありません。

既存の借入を、短期継続融資に切り替えできないか? 検討をしましょう。そのときのポイントは次のとおりです ↓

短期継続融資を検討するときのポイント
  • メインバンクに依頼する
  • 黒字が出ているときに依頼する

銀行にとって、毎月返済無しで貸しっぱなしの「短期継続融資」は、毎月返済ありの融資に比べて回収不能の可能性が高く、リスクを感じるものです。

したがって、融資先の状況をよく理解しているメインバンクでなければ、短期継続融資は難しいと考えましょう。

B社のケースでは、信用保証協会付きだけではなく、プロパー融資も出している甲銀行がメインバンクだと言えます。ゆえに、短期継続融資の話をするなら甲銀行です。

また、銀行にとってリスクがあるのが短期継続融資なのですから、赤字のときには難しくなります。黒字のとき、黒字のうちに、が短期継続融資を依頼するタイミングです。

結果として、B社が甲銀行からの融資のうち 1,000万円を短期継続融資に切り替えることができれば、その分の毎月返済額は軽減することができます。

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《検討3》信用保証協会の借換保証は使えるか?

短期継続融資に加えて、現状の借入を見直す手段に「信用保証協会の借換保証」があります。

既存の信用保証協会付き融資について、複数ある融資は一本化して、返済期間を最長 10年に延ばすことができる制度です。

これを利用することができれば、毎月の返済額を軽減することができます。

B社のケースで言うと、甲銀行の保証協会付き融資 3,000万円、乙銀行の保証協会付き融資 600万円が対象です。

これをまとめて一本化できるわけですが、ひとつ気をつけるべきことがあります。それは、まとめるなら同一銀行のみにしておく、ということです。

たとえば、甲銀行・乙銀行の融資をまとめて、甲銀行で借換保証制度を利用した場合。乙銀行は融資が無くなってしまいます。つまり、甲銀行にお客をとられた、となります。

すると、B社は乙銀行との折り合いが悪くなり、今後は乙銀行からの融資が難しくなる可能性が高いです。

もっとマズイのは、乙銀行で借り換える場合。これだと甲銀行との折り合いが悪くなりますから、B社はメインバンクを失うことになりかねません。

当然、甲銀行・乙銀行あわせて借り換えるほうが、返済額の軽減効果は高いのですが。その後の融資のことまで考える、中長期的な視点に注意が必要です。

これをふまえて、B社のような状況であれば、甲銀行の保証協会付き融資 3,000万円だけをそのまま甲銀行で借り換えるのがよいでしょう。

甲銀行の保証協会付き融資を最長の10年で借り換え、さらに、前述の短期継続融資に切り替えできた場合。B社は次のようになります ↓

 見直し内容毎月返済額
見直し前見直し後
甲銀行保証協会付き融資借換保証を利用60万円※ 25万円
甲銀行プロパー融資短期継続融資に切り替え40万円0万円
乙銀行保証協会付き融資現状のまま20万円20万円
合計120万円45万円

※ 借入金残高 3,000万円 ÷ 120ヶ月 = 25万円

上記のとおり、毎月返済額は見直し前の 120万円から、見直し後は 45万円まで軽減できます。

年間返済額で考えれば、見直し前が 1,440万円(120万円 × 12ヶ月)、見直し後が 540万円(45万円 × 12ヶ月)ですから、年間で 900万円(1,440万円 − 540万円)の資金繰り改善効果です。

また、見直し後の年間返済額は 540万円ですから、返済原資である直近の税引後利益 500万円にだいぶ近づきました。

これであれば、売上の改善・経費の削減などを検討することで、今後も返済継続がじゅうぶんに可能だと言えるでしょう。

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まとめ

返済額大きい・資金繰り厳しい会社の社長が検討すべき3つのこと、についてお話をしてきました。

借りられるからと言って借りてしまうことで、状況はさらに厳しくなることがあります。

もし、追加で融資を受ければ、目先は乗り切れても、根本の解決にはならず、その先で行き詰まる可能性が高くなります。気をつけましょう。

返済額大きい・資金繰り厳しい会社の社長が検討すべき3つのこと
  1. 借りても返せるか?
  2. 短期継続融資に切り替える余地はあるか?
  3. 信用保証協会の借換保証は使えるか?
返済額大きい・資金繰り厳しい会社

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