小さな会社こそ『引当金』を計上すべき3つの理由

引当金を利用すべき理由

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まだおカネの支払いはないけれど、将来の支払いに備えて見積もっておく。会計・経理のテクニックである「引当金」を利用していますか?

小さな会社こそ「引当金」を計上すべき3つの理由について、お話をしていきます。

貸倒引当金でさえ、利用している会社は4分の1しかない

会計・経理におけるテクニックのひとつに「引当金(ひきあてきん)」があります。

引当金とは、「まだおカネの支払いはないけれど、将来の支払いに備えて見積もっておく金額」です。その引当金にもさまざまありますが。

もっともポピュラーな引当金と言ってよいであろう「貸倒引当金」について、おもしろいデータがありました。

ちなみに、貸倒引当金とは、売掛金や受取手形、貸付金などが「将来回収できなくなる(おカネを支払うことと同じ)」ことに備える引当金です。

ほとんどの会社は売掛金(売上代金のツケ)があるだろうと考えれば、ほとんどの会社が多かれ少なかれ貸倒引当金を利用しているだろうと推測されます。

ところが。国税庁が公表している「会社標本調査結果(税務統計から見た法人企業の実態)・平成28年」によれば、

全 267万 2 ,033の会社のうち「資本金 1,000万円以下」という比較的規模が小さな会社が、貸倒引当金を利用している割合は 24.3%

ポピュラーな貸倒引当金でさえ、たった4分の1ていどの会社しか利用をしていないのです。

これはちょっと少ないなぁ、というのがわたしの感想であり。小さな会社ほど、貸倒引当金を利用したほうがいいのに、というのがわたしの考えです。

そこで、引当金を利用するきっかけになればと、小さな会社こそ「引当金」を計上すべき理由についてお話をしていきます。次の3つです ↓

小さな会社こそ「引当金」を計上すべき3つの理由
  1. 将来、払うことになるおカネを知るため
  2. 正しい利益の金額を知るため
  3. 粉飾無きことを示すため

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

 

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小さな会社こそ「引当金」を計上すべき3つの理由

《理由1》将来、払うことになるおカネを知るため

冒頭、こんなことを言いました ↓

引当金とは、「まだおカネの支払いはないけれど、将来の支払いに備えて見積もっておく金額」です、と。

たとえば、賞与引当金。社員に賞与を支給することとしている会社が、将来支給する賞与の額を見積もっておく。というのが賞与引当金です。具体例で見てみると、

賞与引当金の具体例

夏季賞与について「計算期間(査定期間)が10月から3月・支給が6月」と定めている会社の2019年3月決算期の賞与引当金は?

  • 「計算期間が10月から3月」ということから、2018年10月から2019年3月分にあたる賞与の金額を、2019年3月の決算書に反映させる
  • 決算書のうち、貸借対照表には「賞与引当金」として負債に計上する
  • 決算書のうち、損益計算書には「賞与引当金繰入」として費用に計上する

上記によれば、貸借対照表の「賞与引当金」から、将来(2019年6月)の支払いに備えて見積もった金額を知ることができます。

もし、そこに 100万円という金額が記載されているのであれば。将来のために、100万円を準備しておかなければいけないということです。

したがって、同じく貸借対照表に記載されている「現金預金」をあわせて確認しておく必要があります。

将来支払うことになる 100万円も含めて、じゅうぶんなだけの現金預金があるか? という確認です。

これに対して、賞与引当金の計上がない場合。決算書(貸借対照表)からは、将来支払うことになる賞与の金額をすぐに知ることはできません。

結果、現金預金の残高を「過大評価(たくさんあるぞ、みたいな)」してしまう可能性があります。

わたしが知る限り、小さな会社の現金預金は過小(平均月商の1ヶ月未満)であることが少なくありません。

そのような会社こそ、「将来、払うことになるおカネを知るため」に引当金を計上すべき、と考えます。

賞与引当金のほかにも、貸倒による回収不能に備える貸倒引当金、退職金の支払いに備える退職給付引当金、工場設備などの大規模修繕に備える修繕引当金など。

自社に合った引当金の利用を検討してみましょう。

《理由2》正しい利益の金額を知るため

《理由1》では、引当金の「貸借対照表」の記載について話をしました。ここでは、「損益計算書」の記載についてのお話です。

たとえば、将来の退職金支払いに備える退職給付引当金。貸借対照表に「退職給付引当金」が記載されるいっぽうで、損益計算書には「退職給付引当金繰入」という費用が記載されます。

具体的に言うと、貸借対照表(退職給付引当金)には、退職金規程にもとづいて「いま退職したとしたら支払わなければいけない退職金」を記載する。

損益計算書(退職給付引当金繰入)には、「当期末に記載すべき退職給付引当金 ー 前期末に記載した退職給付引当金」を記載する。

つまり、将来支払うことになる退職金の額を「退職給付引当金繰入」として、毎決算期の損益計算書で少しずつ費用計上していくわけです。

これに対して、退職給付引当金繰入を記載しないとしたら。将来、従業員が退職をした決算期の損益計算書に、ドカンと大きな金額が退職金として記載されることになります。

引当金を利用する決算書と、利用しない決算書。どちらが、より正しい利益の金額を知ることができますか?

退職金は社員が在籍した期間に応じて増加するものであり、その増加分は各決算期に分割して負担をさせるべき。と考えれば、引当金を利用するほうが正しい利益を知ることができますよね。

この点では、他の引当金もおなじです。貸倒引当金も賞与引当金も、修繕引当金なども。それらを利用することで、決算書から「より正しい利益」を知ることができます。

一般に、小さな会社の利益は大企業ほどに安定しないものです。良いときもあれば悪いときもある、の波が大きい。

それに加えて、「ある決算で退職金がドカン」ではさらに波が大きくなってしまいます。波をできるだけ穏やかにする、という引当金の効果も知っておきましょう。

【参考】引当金の多くは税金計算上の経費にならない

たとえば、退職給付引当金繰入は、税金計算上の経費(損金)にはなりません。会計上、費用計上することはできても税金計算上は無視されます。結果、退職給付引当金繰入には税金を減らす効果はありません。

このように、引当金のほとんどは税金計算上の経費とは認められておらず、それが引当金利用を妨げている原因にもなっていることと考えます。

けれども、税金は税金、会計は会計です。決算書は税金計算のためだけにつくっているわけではありません。会社自身に役に立てることも考えて、引当金の利用を検討しましょう。

《理由3》粉飾無きことを示すため

「第三者」が決算書を見るときに、まず考えることとして「粉飾(利益の水増し)はないか?」が挙げられます。

小さな会社でいうところの第三者のひとりは「銀行」です。その銀行から融資を受けるときには、決算書の提示が欠かせません。

大企業とは違い、自己資金に乏しいのが中小企業です。したがって、多くの中小企業が銀行融資を利用し、多くの中小企業が銀行に決算書を提示しています。

このとき、銀行からは「粉飾」を疑われることになります。

たくさんの株主に向けて情報開示を求められ、監査法人の厳しい監査を受けている大企業の決算書と、中小企業の決算書とは違います。

極端を言えば、「中小企業の決算書には多かれ少なかれ、なにかしらの粉飾がある」というのが銀行の見方でしょう。

本記事の冒頭で触れた、資本金 1,000万円以下の会社が貸倒引当金を利用しているのは4分の1ていど、の話はその証左とも言えるものです。

貸倒引当金が「氷山の一角」だとすれば、貸倒引当金の記載がないことは一事が万事。ほかにも計上すべき費用・負債が漏れているのではないか? と見られてもしかたありません。

逆に。多くの会社が利用していないからこそ、貸倒引当金を計上することで、粉飾がない(きちんと費用・負債を計上している)ことのアピールにもなるはずです。

税金計算上、経費にできる貸倒引当金もわずかだから計上しない(前述の「参考」を参照)、という会社は少なくありませんが。

わずかだからこそ、そのわずかをきちんと計上することに、説得力がでるものです。貸倒引当金以外にも、いっさい税金計算上は経費にできない他の引当金であればなおさらです。

いっさい税金を減らす効果もないのに計上する引当金に、「より正しい決算」にこだわる会社の姿勢があらわれます。

銀行との関わりが多い小さな会社こそ、銀行へのアピールとして引当金の利用を検討してみるのもひとつです。

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まとめ

小さな会社こそ「引当金」を計上すべき3つの理由についてお話をしてきました。

現状、引当金は利用割合が少ないようですが。引当金を計上すべき理由を理解し、積極的な利用を検討してみましょう。

小さな会社こそ「引当金」を計上すべき3つの理由
  1. 将来、払うことになるおカネを知るため
  2. 正しい利益の金額を知るため
  3. 粉飾無きことを示すため

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