決算前、銀行に融資を依頼すると断られてしまうことがあります。銀行は、決算書の数字で業績を確認してから、融資ができそうかどうかを判断したいからです。
そこで、銀行に「決算を見てから」と断られないためにできることについてお話をしていきます。
決算前に借りたい会社、決算後まで貸したくない銀行
会社・事業における銀行融資について。
銀行に融資の依頼をしたところ、「決算を見てから」と断られてしまう… ということがあります。
たとえば、6月決算の会社があったとして。いま現在が5月のはじめだとします。
このタイミングで融資を依頼したところ、銀行から「決算まであと2ヶ月なのだから、それまで待って」と言われた。
銀行は、決算書の数字で業績を確認したいからです。貸してもだいじょうぶな状況かどうか、を決算書の数字で確認したいのです。
また、その前年の決算が赤字であったりすると。銀行の不安・不信はさらに高まります。
今年も赤字なのではないか? だから、融資を急いでいるのではないか? やっぱり、決算を見るまでは貸せない。そんなふうに考えることでしょう。
ですから、本来、会社も計画的に「決算直後」のタイミングで融資の話をすべきところではありますが。そうそういつもタイミングよくはいかない… というのも現実です。
そこで。決算前に融資を依頼する際、銀行に「決算を見てから」と断られないためにできることについてお話をしていきます。次の5つです ↓
- 試算表をつくる
- 試算表の精度を高める
- 決算予測をする
- メインバンクに依頼をする
- 顧問税理士からも説明をしてもらう
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行に「決算を見てから」と融資を断られないためにできる5つのこと
試算表をつくる
銀行が「融資をするかしないか」を判断するうえで、とても重視をしているものが決算書です。
端的に言えば、決算書の内容が良ければ融資をする、悪ければ融資をしない。決算書で「いま現在」の状況を確認したうえで、融資をするかしないかを判断しています。
ところが、決算から時間がたっている場合にはどうでしょう? 決算書の情報は古くなり、「いま現在」の状況を銀行が確認することはできませんよね。
そこで必要になるのが「試算表」です。決算書が1年に1度つくるものであるならば、試算表はひと月に1度つくるもの。
決算書をつくるのと同じように、毎月の売上や利益、財産の状況などを試算表としてまとめます。
もちろん、試算表は銀行のためにつくるものにあらず。そもそも、会社自身のためにつくるものです。
とはいえ、経理機能が弱い小規模零細企業などでは、毎月試算表をつくっていない。数字を確認できるのは、年に1度の決算だけということがあります。
また、試算表をつくってはいるけれど。だいぶ遅れている、ということもあるでしょう。これでは、銀行に「いま現在」の状況を知らせることができません。融資を受けることができません。
ですから、まずは「試算表をタイムリーにつくる」環境を整えることです。必要に応じて、顧問税理士などとも相談をして準備しましょう。
決算前に銀行から融資を受けるのであれば、試算表は最低限必要なもの。絶対に必要なもの。この理解が欠かせません。
試算表の精度を高める
試算表をつくっていたとしても、その「精度が低い」というケースがあります。
たとえば、減価償却費が計上されていない、在庫の増減が加味されていない、発生主義で経理がされていない、など ↓
この場合、試算表の利益や財産の状況はアテになりません。
たとえ、試算表上で利益が出ていたとしても、決算で減価償却費を1年分計上したら大赤字… みたいなことがあるわけです。
したがって、減価償却費は毎月にあん分して計上しなければいけません。
実地棚卸まではしないまでも、標準的な原価率を使って在庫の増減を反映させるべきでしょう。発生主義の考えにしたがって、売掛金や買掛金をしっかり計上すべきでしょう。
これらを「決算のときさえきちんとしておけばいい」との試算表が少なくないために、銀行は「試算表を信じていない」という一面があります。
信じてもらえない試算表をいくらつくったところで、融資にはつながりません。精度が低く、「いま現在」の状況を正しく示すことができない試算表では役に立たないのです。
銀行に試算表を提示するのであれば、その精度を高めるようにしましょう。
具体的には、毎月の試算表も「年に1度の決算に近い精度」でつくるということです。このあたりもまた、顧問税理士と相談されることをおすすめします。
決算予測をする
精度が高い試算表をつくることができたら、決算予測の資料もつくりましょう。
例として、6月決算の会社が、4月までの試算表ができているという場合。そこへ残りの5月と6月の数字を予測で付け足して、予測の決算書をつくるわけです。
もし、予測が難しいと言うのであれば、「10分の12」を掛け算するのもひとつの方法です。7月から4月までが 10ヶ月ですから、それを 10で割って 12倍して年換算する、という趣旨です。
これで、損益計算書のほうはつくることができます。ただし、貸借対照表のほうは、年換算するとおかしなことになってしまいます。たとえば、預金残高に「10分の12」を掛け算したらおかしなことになる。
ですから、貸借対照表は5月と6月の動きを各勘定科目ごとに動きを予測することになりますが、少々難易度が上がります。
そこで、貸借対照表の予測が難しいのであれば。4月末の試算表の数字をそのまま使う、というのが次善策です。
いずれにせよ、いま現在の試算表をもとにして決算予測をする。予測の決算書をつくって、それを銀行に提示します。
このときの予測決算書が「黒字(利益が出ている)」であれば、銀行も「決算前だけど融資を検討してみようかな」と考えることができます。
繰り返しになりますが、予測決算書の根拠となる試算表の精度がキモです。試算表の精度が低い、あるいは試算表そのものが無いのでは、予測決算書に信ぴょう性は得られません。
メインバンクに依頼をする
試算表と予測決算書ができたら、銀行に融資を依頼します。では、複数の銀行とお付き合いがある場合、まずどこに依頼をするか?
メインバンクです。ちなみに、ここで言うメインバンクとは「いちばん融資残高が大きい銀行」ではありません。
いちばんコミュニケーションが取れている、ふだんからよく話をしている銀行のことを言っています。
前述したとおり、決算前のタイミングでは、銀行は「決算を見てから」の融資にしたいものです。決算書を見て判断したいから、ですね。
それでも、決算を待たずに融資をするためには、「銀行が融資先のことを理解しているかどうか」が重要になります。
ふだんから融資先と話をしながら、融資先の情報・状況を把握できているかどうか、が重要です。
もしそれができていれば、会社がつくる試算表や決算予測に対して、銀行は「目利き」ができます。試算表、決算予測の内容が信頼できるものかどうかを見極めることができる。
ところが逆に、ふだんは話もせず、情報もない銀行にしてみれば。試算表や決算予測は「ほんとうに合っているのかなぁ?」と不安・不信がつのるばかりでしょう。これでは融資ができません。
ゆえに、決算前に融資を依頼するのであれば、いちばんコミュニケーションが取れている銀行を選びましょう。
顧問税理士からも説明をしてもらう
さいごにもうひとつ、ダメ押しとして。銀行に対して、顧問税理士からも「説明」をしてもらうことをおすすめします。
再三の話になりますが、銀行は試算表や決算予測については疑いを持っているものだからです。
試算表は精度が低くてアテにならない、決算予測は絵に描いた餅。そう疑われているかもしれません。
この疑いを少しでも晴らそうと考えるのであれば、専門家である顧問税理士からも話をしてもらうのがよいだろう、ということです。
試算表は本決算と同じ精度でつくっていますよ。決算予測も精度が高い試算表にもとづくものですよ。と、顧問税理士からも説明をしてもらうわけです。
試算表や決算予測は疑われていることを念頭において、その疑いを晴らすためにできることはやりましょう。それが、決算前でも銀行融資を引き出すポイントです。
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まとめ
銀行に「決算を見てから」と融資を断られないためにできる5つのこと、についてお話をしてきました。
基本的に、決算前のタイミングで融資を受けるのは難しいものです。
それでも融資を受けるのであれば、できることをしっかりやったうえで臨みましょう。
- 試算表をつくる
- 試算表の精度を高める
- 決算予測をする
- メインバンクに依頼をする
- 顧問税理士からも説明をしてもらう