銀行から融資を受けるときには決算書がだいじです。その決算書の効果は、次の決算書ができるまで1年のあいだ続きます。
というわけで。決算書で向こう1年の融資が決まるから、決算でやってはいけないことについてお話をしていきます。
1年に1度の決算書でヘタを打たないために
会社・事業における銀行融資について。
しばしば聞くハナシとして、「銀行から融資を受けるときには決算書がだいじ」というものがあります。
事実そのとおりであり、決算書の良し悪しが融資の可否を大きく左右します。
また、決算書は1年に1度つくるものですから、その「効果」は1年のあいだ続く。これが重要なポイントです。
つまり、決算書が良ければ向こう1年は融資が受けやすく、決算書が悪ければ向こう1年は融資が受けにくくなる。
効果が1年のあいだ続く理由はさきほど言ったとおり、銀行は決算書をだいじにしているからです。決算書が1年に1度しかつくられないからです。
そんな決算書でヘタを打つことがないように。決算でやってはいけないことを押さえておきましょう。次の5つです ↓
- ちょっと赤字にする
- 節税をしすぎる
- 粉飾をする
- ヘンな科目を残す
- 決算報告をしない
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「決算書で向こう1年の融資が決まる」から決算でやってはいけない5つのこと
ちょっと赤字にする
言うまでもないことですが、銀行は決算書の「赤字」を嫌います。赤字の会社には融資をしたくない。
なぜなら、「利益が無ければ返済ができない」という理屈があるからです。
厳密には利益が無くても手元のおカネを取り崩せば返済できますが、赤字が続けばいずれはそれもなくなります。ゆえに、銀行は黒字を求めます。
この点で、「ちょっと赤字」の決算書には気をつけましょう。
たとえば、決算書の税引後利益が 10万円の赤字。100万円、200万円の赤字ならしかたないにしても、10万円の赤字はなんとかならなかったのか?
もちろんこれは、「粉飾(利益の水増し)をしろ」というたぐいの話ではありません。
そうではなくて、事前に決算予測をして経費を抑えるとか、認められる経理処理の範囲内で対応できなかったのか。
誤解を恐れずに言えば、10万円くらいなら社長が経費の一部を自己負担することもできたのではないか。そういう話をしています。
10万円の自己負担はツラくもありますが、その10万円で「向こう1年の融資が決まる」ことを理解しておきましょう。
1円でも赤字は赤字。逆に1円でも黒字は黒字です。
ちょっと赤字の決算書をつくったばかりに、向こう1年ものあいだ融資を受けられない・受けにくい会社にしてしまう… などということがないようにしなければいけません。
節税をしすぎる
納税を惜しんで節税をしすぎる、というケースがあります。
「税金を払うくらいなら経費を使う」
たしかに、経費を使えば税金は減りますが、その過程で利益も減ります。
さきほど「利益が無ければ返済ができない」という話をしました。言い換えると、利益があるほど返済できる。利益があるほどたくさん融資を受けられる。
ということは。経費を使った節税をしすぎると、融資は受けづらくなる。これを押さえておかなければいけません。
ちなみに、どれくらい受けづらくなるかの参考として具体例を挙げてみると。
もともと税引前利益 500万円を見込む会社が、経費を 400万円使って税金を減らそうと目論む場合どうなるか?
法人税が 100万円減る代わりに、3,000万円もの資金調達力を失います。
100万円の納税を惜しんだがために、3,000万円という金額の融資が受けられなくなる、あるいは受けにくくなる。
次の決算書までの向こう1年、3,000万円の融資が受けられるか受けられないかは会社にとって大きな問題です。
もちろん、ムダにたくさんの税金を払う必要はありませんが、銀行融資に支障をきたすほど節税をしすぎていないか?気をつけましょう。
さらにもうひとつ。さきほどの会社は、100万円の税金を減らすことができたいっぽうで、ほんとうは貯めることができたはずのおカネ 300万円も失っています。
えっ、そうなの? ということであれば、くわしくはこちらの記事もどうぞ ↓
粉飾をする
銀行から融資を受けたいがために利益を水増しする。いわゆる「粉飾決算」です。
当然、よろしくありません。
バレなければいい、あるいはバレないようにやればいい、と思われるかもしれませんが。そこは相手も百戦錬磨の銀行です。
決算書に粉飾があるかもしれないことは承知しています。あの手この手で、粉飾を見抜く手法を駆使しています ↓
したがって、多くの場合、粉飾は見抜かれている。と、考えておくのがよいでしょう。
なお、銀行は「粉飾してますよね」などと直接的にはあまり口にしないものです。なにも言われていないからバレていない、との勘違いには気をつけなければいけません。
粉飾した決算書は事実と異なるものですから、その粉飾を正すまではまともに見てもらえない、融資が受けられないのはもちろんとして。
粉飾をする(ウソをつく)ような会社だ、とのレッテルを貼られることに粉飾の大きなデメリットがあります。
そのレッテルの効果は、次の決算書ができるまでの向こう1年ということではなく、粉飾を正したあとも相当のあいだ続くものと覚悟しなければいけません。
銀行融資に関して言うのであれば、粉飾をするくらいなら、正直に赤字をオモテに出すほうが得策です。
その赤字をいかに改善するか・できるかを示すことができれば、融資を受けられる可能性はあります。
ヘンな科目を残す
決算書に掲載される科目のなかには、銀行が嫌うものがあります。
その最たるものが「仮払金」です。
仮払金とは、文字どおり「仮」なのであって、仮のモノを決算書という由緒正しきものに載せるなんてヘンなの。ということになるわけです。
また、ヘンなだけでは済まずに「いったいなんなのか?」ということになりますが。使途不明のおカネであったり、社長が個人的に使ったおカネであったりと、銀行がなっとくできるような理由はないものです。
使途不明のおカネがあれば、貸したおカネもどっかへ行ってしまうのではないかと考えて、銀行は融資を渋るでしょう。
社長が個人的に使ったおカネがあれば、会社におカネを貸しても社長のフトコロに流れてしまうのではないかと考えて、やはり融資を渋るでしょう。
したがって、1年に1度の決算書にヘンな科目を残さないように、気をつけなければいけません。1年ものあいだ融資が受けられない・受けにくい状況になってしまいます。
これについて、そのあとすぐに毎月の試算表のなかで正せばよいのではないか?その試算表を見せれば次の決算書まで待たなくてもよいのではないか?と思われるかもしれませんが。
残念ながら銀行はあまり試算表を信じていません。試算表は「試算」でしかなく、なんとでもなる(テキトーに操作・処理できる)からです。
結局、次の決算書を見たらやっぱりヘンなままでした… というのはよくあることで。やっぱり試算表はアテにならないよね、と銀行は考えています。
なお、仮払金のほかにも、貸付金、立替金、前払費用などの勘定科目は、「ヘン」を怪しまれるところです。注意しましょう。
決算報告をしない
決算書ができたら、あとはそれを銀行に渡すだけ。これはよろしくありません。
結論として、決算が終わったら、銀行に決算報告へ行きましょう。
決算書を持って銀行まで出向き、決算について報告をする、ということです。
とはいえ、そのようなことをやっている会社はほとんどありません(だからこそやる価値があるのですが)。
いったい何を報告すればよいのやら、話をすればよいのやら… と思われることでしょう。
おもに話をすべき内容はこちらです ↓
- 今回の決算の概要(おもな数字、前期との比較など)
- 決算での問題点と対策(赤字の場合にはとくに)
- 向こう1年の予測資金繰り表の提示と説明
とくにだいじなのが、「 向こう1年の予測資金繰り表の提示と説明」です。
予測資金繰り表を提示しながら、向こう1年のおカネの動きを示したうえで、1年のうちのいつごろ・いくらくらいの資金調達をしたいか(融資を受けたいか)を銀行に伝えます。
もちろん、資金調達が必要になる理由(売上増加、設備投資など)もあわせて、資金繰り表を提示しながら説明しましょう。
これにより、銀行は会社の「資金ニーズ」を把握することができます。資金ニーズがわかれば、銀行も融資提案をしやすくなるものです。
銀行が「貸したい」と考えれば、良きタイミングで融資の提案をもらえることが期待できます。
これに対して、決算書を渡すだけでは、銀行が資金ニーズを把握するのは困難でしょう。決算書は「過去の数字」でしかなく、向こう1年のことまでは記されていないからです。
決算書ができたら、決算報告を行く。ぜひ実行してみましょう。
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まとめ
「決算書で向こう1年の融資が決まる」から決算でやってはいけない5つのことについてお話をしてきました。
1度つくった決算書の効果は、次の決算書をつくるまでの1年ものあいだ続きます。
その決算書でヘタを打つことがないように。決算でやってはいけないことを押さえておきましょう。
- かんたんに赤字にする
- 節税をしすぎる
- 粉飾をする
- ヘンな科目を残す
- 決算報告をしない