売上と借入の増減だけで資金繰りの良し悪しを簡易診断する方法

売上と借入の増減だけで資金繰りの良し悪しを簡易診断する方法

「この会社の資金繰りはどうなのかなぁ? 」を、知りたいのであれば。売上と借入の増減だけで簡易診断する方法があります。

銀行も使っているであろう方法です。自社の資金繰りがどのように見られているか? 簡易診断をしてみましょう。

目次

売上と借入の増減だけでなにが

税理士として、あるいは、銀行融資のお手伝いをする者として、いろいろな会社の決算書を拝見しています。その決算書を見て、

「この会社の資金繰りはどうなのかなぁ?」 

を、知りたいのであれば。資金繰りを「簡易的に診断する方法」があります。それは、「売上」と「借入(の残高)」の増減を見る、という方法です。

売上と借入の増減の組み合わせによって、会社の資金繰りはおおむね推測できます。その組み合わせのパターンは次の3つです ↓

「売上と借入の増減」の組み合わせパターン
  1. 売上が増、借入も増
  2. 売上は横ばい、借入は増
  3. 売上が減、借入は増

※ 2年分の決算書を並べてみて増減を見ます

ちなみに、「借入が減」のときには、「資金繰りに大きな問題はなし」と考えます。借入が減っているのですから、ひとまず返済はできている。ゆえに、おおむね資金繰りに問題はなし、という具合です。

というわけで。「借入が増」になる上記3つのパターンについて、このあとお話をしていきます。

銀行もまた同じような見方・方法で、会社の決算書を見ているものです。自社の決算書が「銀行からどのように見られているのかな?」という視点でも、確認をしておくとよいでしょう。

 

「売上と借入の増減」の組み合わせパターンと資金繰りの良し悪し

《パターン1》売上が増、借入も増

借入(銀行融資)の残高が増加するのは、おカネが足りないからだ。そう考えると、「借入が増」は資金繰りが良くない証拠だと言えます。

いっぽうで。売上が増加する局面では、いわゆる「所要運転資金(売上債権+たな卸資産-仕入債務)」の増加はよくある現象です。

所要運転資金が増加すると、その分だけ資金繰りが厳しくなることから、「増加運転資金」の融資を受けるのは財務のセオリーでもあります ↓

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そう考えると。「借入が増」だけを見て、「資金繰りが良くない」と判断するのは尚早であることがわかります。

「売上が増」は、ポジティブかネガティブかで言えば「ポジティブ」な要素であり。「売上が増」にともなう増加運転資金の融資には、銀行もまたポジティブです。

ここで注意したいのは、「借入が増」したことによって「返済が増加している」こと。今後、売上が減少するようであれば、返済が厳しくなる… これは銀行にとっても不安なところです。

したがって、会社としては「今後の売上見込み」が重要になります。具体的には、受注案件を一覧に整理したうえで、予測資金繰り表に反映する。返済を続けられるかをチェックする、ということになります。

今後の売上見込みなんてわからないよ、という声も見聞きしますが。そのときにはせめて、「いくらの売上があれば返済を続けられるのか?(必要売上高)」を逆算しておきましょう。

必要売上高をひとつの目標として、それを下回るようであれば、早期に手を打てるようにしておくことです。

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《パターン2》売上は横ばい、借入は増

売上が横ばいで変わらないのに、借入の残高は増えている。この場合には「資産の増加」を考えます。

つまり。なにかしらの資産を買うために借入をした、ということです。

そこで、貸借対照表に掲載されている資産を眺めていくわけですが。ポイントは「ムダなもの・おかしなものはないか?」になります。

あたらしい製品をつくるのに必要な機械を買った(資産の増)。そのために借入をした(借入の増)のであれば問題はありません。つくった製品が売れれば、借入の返済はできるからです。

これに対して、高級すぎる社用車だったらどうでしょう。そのための借入を返済する負担は、資金繰りに悪い影響を与えるはずです。華美すぎる社屋や立派すぎる工場なども同じです。

また、株式などの有価証券が増えているようであれば、それは「リスクがある投資」です。将来、損失が出た場合には、やはり資金繰りに悪い影響を与えることになります。

資産を買っているわけではありませんが、似たようなこととして、「社長への貸付金が増えている」というケースもあります。この場合、会社が借入をしたおカネが、社長個人に流れてしまっていると考えられ、銀行からは嫌われるところです。

銀行が見ているところと言えば、「売掛金」や「たな卸資産」もあります。

不良債権があって売掛金が増えていたり、不良在庫があってたな卸資産が増えていたり。結果として資金繰りが悪くなり、借入が増えている… 銀行から見れば要注意の決算書です ↓

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不良債権や不良在庫も「ムダなもの」のひとつだと言えます。まずは、それらの状況を把握すること。「売上は横ばい」なのに「借入は増」のときはとくに、です。

そのうえで対応策を検討して、きちんと実行するようにしましょう。

《パターン3》売上が減、借入は増

売上が減って、借入の残高が増えている。資金繰りが悪いであろうことが容易に想像できるケースです。

売れないからおカネが減る、おカネが減るから資金繰りが厳しくなる。資金繰りが厳しいからおカネを借りる…

借入が増えれば返済が増えますので、売上(あるいは利益)が増えない限り、悪循環が続きます。

ゆえに、「売上が減」に対する銀行の姿勢はネガティブです。売上の減少が続くと見れば、銀行は新規の融資を躊躇します。こうなると、最悪はリスケジュールしかありません。

そうなる前に。「売上が減、借入は増」のケースであれば、経営改善計画書をつくることです。売上の減少や赤字の現状分析。現状を改善するまでの道すじを計画として明らかにしましょう。

計画なんて…(どうせそのとおりにいかないし)と、思われるかもしれませんが。黒字企業の7割は計画を管理・実行しており、逆に、赤字企業の7割は計画を管理・実行していない、とのデータもあります。

思いをカタチにする「計画」には、チカラがあるようです。

また、銀行に対しては、「口頭」での話に説得力はありません。いくら計画を口にしたところで「ほんとうにやるのかね?」ということであり、だいじな計画を書面にしようとしない会社・社長の姿勢を疑問に思うばかりです。

会社が厳しい折にも、銀行の支援を求めるのであれば。経営改善計画書の作成・提示は必須になります ↓

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まとめ

売上と借入の増減だけで資金繰りの良し悪しを簡易診断する方法についてお話をしてきました。

銀行も使っているであろう方法です。自社の決算書が「銀行からどのように見られているのかな?」という視点でも、確認をしておきましょう。

「売上と借入の増減」の組み合わせパターン
  1. 売上が増、借入も増
  2. 売上は横ばい、借入は増
  3. 売上が減、借入は増
売上と借入の増減だけで資金繰りの良し悪しを簡易診断する方法

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