個人事業者にとって、必ずしも作成しなければならないわけではない「貸借対照表」。
それでも、銀行融資を受けようとするのであれば作成したほうがいい。その理由についてお話をしていきます。
つくらなくてよくてもつくるべし。
会社・個人事業者が融資を受ける際、銀行から提示を求められるものに「決算書」があります。
その決算書のなかにある「貸借対照表」について。会社は必ず作成をしていますが、個人事業者は必ずしも作成をしていません。
個人事業者のうち、青色申告をしていない人(=白色申告の人)や、青色申告でも青色申告特別控除10万円の人は、そもそも貸借対照表をつくらなくてもよいからです。
この点で。個人事業者が銀行融資を受けるなら貸借対照表を作成すべきだ、と言えます。
個人事業者にとって、貸借対照表は必ずしも作成しなければいけないものではないけれど。それでも、銀行融資を受けようとするのであれば作成したほうがいい。
逆に、貸借対照表がない個人事業者は融資が受けにくい、あるいは受けられなくなってしまう…
その理由について、お話をしていきます。こちらです ↓
- 銀行が債務超過の有無を把握できるから
- 銀行が決算書分析をより緻密にできるから
- 銀行が安心をより感じることができるから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
個人事業者が銀行融資を受けるなら貸借対照表を作成すべき3つの理由
《理由1》銀行が債務超過の有無を把握できるから
銀行が決算書を審査するにあたり、知りたいこととして「債務超過の有無」があります。
債務超過とは文字どおり、債務が超過している状態。言い換えると、資産よりも負債が多い状態を言います。
資産とは。たとえば、現金・預金、売掛金(売上代金の未収)、たな卸資産(在庫)、有価証券、固定資産(建物、土地、機械、自動車、備品など)、その他いろいろ。
負債とは。買掛金(仕入代金の未払)、未払金(諸経費の未払)、借入金、その他いろいろ。
特徴として。資産が「プラスの財産」であるのに対して、負債は「マイナスの財産」である、と表現できます。
その資産と負債について、銀行は「資産よりも負債が多い状態(債務超過)」を警戒しています。言うまでもなく、負債が多い状態は危ないからですね。
いまある資産をぜんぶ売り払って現金化したとして。その現金で負債を返済しきれないのが債務超過です。そんなところへ融資をしたら返してもらえそうもありません。だから、銀行は債務超過を警戒しているのです。
債務超過の有無をチェックするためには貸借対照表が必要になります。
貸借対照表は、会社・個人事業者の「資産・負債」が掲載される帳票であり。貸借対照表が無ければ、銀行は債務超過の有無を把握することができません。
債務超過の有無がわからず融資判断に悩む銀行は、結果として融資を躊躇することになります。実際、「貸借対照表の作成・提示」を融資要件にしている銀行も少なくありません。
つくるのがメンドーだから、と貸借対照表を作成していない個人事業者もいるようですが。銀行融資を受けたいのであれば、そうも言っていられないことを理解しておきましょう。
《理由2》銀行が決算書分析をより緻密にできるから
銀行は、会社・個人事業者から提示された決算書を、さまざまな角度から審査・評価をしています。
このとき行われているのが、いわゆる「決算書分析」です。
ひとことで「決算書分析」と言っても、その手法や考え方は多岐にわたるわけですが。なかには、貸借対照表に掲載されている金額をもとにした決算書分析もあります。
たとえば。流動比率という分析指標があります。算式で言うと「流動比率=流動資産 ÷ 流動負債」。
近いうち(おおむね1年以内)におカネを支払わなければいけない流動負債に対して、近いうち(おおむね1年以内)におカネを受け取ることができる流動資産がどれだけあるか? が流動比率です。
流動比率は一般に、「高いほど安全だ」と言われます。
ほかにも。固定資産を取得するにあたってムリのない資金調達ができているか? をはかる「固定長期適合率」といった分析指標もあります。
いずれの分析指標も、貸借対照表に掲載されている「資産・負債」をもとに計算され、おもに「安全性」を分析するための指標として重宝されているものです。
安全性は、銀行が貸したおカネを回収できるかどうかを考えるにあたって重要なポイントになります。貸借対照表があることで、銀行は安全性をふまえた決算書分析をより緻密にできるのです。
ゆえに銀行は、個人事業者に貸借対照表を作成してほしいと考えています。
その貸借対照表を作成できない・提示できない個人事業者は、やはり銀行から見て融資しにくい相手であることを覚えておきましょう。
《理由3》銀行が安心をより感じることができるから
冒頭、「個人事業者のうち、青色申告をしていない人(=白色申告の人)や、青色申告でも青色申告特別控除10万円の人は、そもそも貸借対照表をつくらなくてもよい」という話をしました。
いっぽうで、青色申告特別控除65万円の個人事業者は、貸借対照表を作成しなければいけません(税金のルールとして)。
貸借対照表を作成するのはひとつの手間ではありますが、その引き換えとして、青色申告特別控除65万円をはじめとした「特典(節税効果)」を受けられるのが魅力です。
これを銀行の側から見ると。
貸借対照表を作成しているということは、手間を惜しまず、できる節税をきちんとやっている「まじめな個人事業者」だ、ということになります。
貸したおカネをきちんと返してほしい銀行は「まじめ」が大好きです。
また、まじめであると同時に、できる節税をやっていればムダに税金を支払うこともなく、その分だけおカネもたまります。貸したおカネを返してもらえる可能性も高まります。
そのように、貸借対照表をつくっている個人事業者に対して、銀行は安心感をいだくものです。
加えてもうひとつ。銀行は貸借対照表をつくれる個人事業者の「管理能力」にも安心感をいだきます。
なぜなら、貸借対照表をつくるには、相応の「知識・技術」が必要なのであり、貸借対照表はその個人事業者に「管理能力」があることの証だと言えるからです(税理士に丸投げ、というケースは除いて)。
知識・技術を身につけるのもそうカンタンではありません。相応の時間をかけてなおあきらめない「意欲・意思」があらわれるところでもあります。それは、個人事業者の資質として評価できるところでしょう。
したがって、貸借対照表を作成できる個人事業者に対して、銀行はより安心を感じることができる。融資がしやすくなる、ということです。
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まとめ
個人事業者にとって、必ずしも作成しなければならないわけではない「貸借対照表」。メンドーだから、ということで作成しない人もいるようですが。
それでも、銀行融資を受けようとするのであれば作成したほうがいい、ということ。加えて、その理由も押さえておきましょう。
融資が受けにくい・受けられない、ということがないように。
- 銀行が債務超過の有無を把握できるから
- 銀行が決算書分析をより緻密にできるから
- 銀行が安心をより感じることができるから