自社の売掛金を、入金期日前に「早期に現金化」できるファクタリング。
魅力的ではあるけれど、「ファクタリングで資金調達」をやってはいけない。その理由についてお話をしていきます。
その身を隠してやってくるファクタリングにご用心
会社が資金調達をする方法のひとつに「ファクタリング」が挙げられます。
ファクタリングとは、ひとことで言うと「売掛金(売上債権)の売却」です。会社は自社の売掛金を、入金期日前にファクタリング会社に売却することで、早期に現金化することができます。
このファクタリングについて。なにがしかの「サービス名称」を付して、あたかも「あたらしい資金調達方法」かのように案内されているのを目にします。
案内の内容をよくよく見てみると、「要するにファクタリングじゃんかっ!」ということなのですが。
会社にとって魅力的な「早期に現金化」ができるとはいえ、「ファクタリングで資金調達をやってはいけない」と言える理由があります。次の3つです ↓
- 手数料が高すぎるから
- いちどはじめるとクセになるから
- 借りられるときに借りておくべきだから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
「ファクタリングで資金調達」をやってはいけない3つの理由
《理由1》手数料が高すぎるから
冒頭、ファクタリングとは「売掛金の売却」だ、という話をしました。
たとえば、翌月末入金予定の 500万円の売掛金があるとして。いますぐ現金化したいのでファクタリングを利用するとします。
もちろん、「タダ(無料)」で現金化してくれるわけではなく、ファクタリング会社に「手数料」の支払いが必要です。
ここでの注意点としては、「利息」ではなく「手数料」だということ。おカネを借りるための「利息」ではなく、売掛金を売却することにともなう「手数料」を支払う。
この手数料が高額です。
ファクタリングには、大きく「二社間ファクタリング」と「三者間ファクタリング」とがあります。より手数料が高額な「二社間ファクタリング」では、一般的に手数料相場が「10〜30%」くらいです。
二社間とは、自社とファクタリング会社。三社間とは二社に加えて、売上先です。二社間では、売掛金が入金されたら、自社からファクタリング会社に支払います。三者間では、ファクタリング会社が直接、売上先から回収します。
ファクタリング会社にとってはよりリスクが高いこともあり(売掛金の入金があっても自社は払わないかも)、二社間のほうが手数料が高くなるというしくみです。
仮に、手数料が 10%だとすると。500万円の売掛金をひと月早く現金化するのに、50万円の手数料を支払うことになります。
これを利息と見て、年利に換算すると。実に「120%」です(単利計算で、10% × 12ヶ月)。
同じ 500万円を銀行から借りようと考えたときに、そのように高い金利はありえません。低金利のご時世でもありますから、数%の金利です。
もっとも、利息と手数料は性質が異なるものなので、単純に比較することに疑義はあろうかと思いますが。それでも同じ「資金調達コスト」と考えれば、ファクタリングの手数料がいかに高いものかはわかるでしょう。
《理由2》いちどはじめるとクセになるから
さきほど、「翌月末入金予定の 500万円の売掛金」のファクタリングを例に挙げました。
いまおカネが無いので翌月末まで待てない、ファクタリングで現金化しなければいけない… という会社の例です。
では、そのような会社の「翌月」の状況は? と言うと。やはりまた、おカネが無いのでファクタリングを利用する。というケースは少なくありません。
目の前の売掛金を絶えずファクタリングで現金化しているイメージです。
前述したとおり、ファクタリングにともなう手数料は「高すぎる」のですから、会社の資金繰りはよりいっそう悪化を続けることになります。
だったら、ファクタリングよりはコストが低い銀行から融資を受ける、という方法もあるわけですが。資金繰りが悪い会社を銀行は警戒しますから融資が受けられない。また、受けられるとしても時間がかかります(数週間〜1ヶ月ていど)。
その点、ファクタリングであれば。審査をされるのは自社ではなく、売上先が中心です(売上先の支払能力が重要)。また、審査もスピーディー(数日〜1週間ていど)。
ファクタリングは、そのお手軽さゆえにクセになってしまう。という問題点があります。その結果、高すぎる手数料で自社の財務が崩壊する…
したがって、ファクタリングを利用するのであれば。利用期間は短期であること。その後は、ファクタリングに頼らなくても資金繰りが回るのが確実である場合に限られます。
その場しのぎで、ファクタリングに手を出さないように気をつけましょう。
《理由3》借りられるときに借りておくべきだから
ここまで、「ファクタリングは手数料が高すぎる」と「いちどはじめるとクセになる」という話をしてきました。
これらをふまえて言えることは。本来、売掛金に対する資金調達は「銀行融資」ですべきだ、ということです。
銀行から、いちど短期一括返済(あるいは長期分割返済でも)で 500万円の融資を受ければ、毎月 500万円のファクタリングをする必要はありません。
ファクタリングで手数料10%(年利 120%相当)を毎月払い続けるよりも、銀行融資で数%の利息を支払うほうが資金繰りに良いのは明らかです。
実際、銀行からの融資には「運転資金」という借り方があります。会社は売掛金分のおカネが必要なのだから、その分の融資を受けて備えるのは当たりまえだ、という考え方にもとづく借り方です ↓
当たりまえの考え方なので、銀行も基本的には積極的に融資をします。これを会社も積極的に利用しましょう。
とはいえ。会社が赤字になってからでは、銀行も消極的にならざるを得ません。貸したおカネが回収できない不安があるからです。
また、資金繰りが切羽詰まってから急ぎでとなると、銀行融資には審査もあるので間に合わない… ということもあるでしょう。
したがって、銀行からの融資は「借りられるときに借りておく」のがベストになります。「借りられるとき」とは、黒字のうち、おカネがあるうち、です。
このままだと、その場しのぎでファクタリングを利用することになるかもしれない。そのような想定をしつつ、「借りられるときに借りておく」ことを検討しておきましょう。
ちなみに。あらかじめ借りておいたけれど、結局、ファクタリングを利用する事態に陥ってしまった… やっぱり借りないほうが良かったんじゃないか?
と言うのであれば、それはまた別のハナシです。そのような事態に陥ったのは、財務(資金繰り)の問題ではなく、経営(が悪化した)の問題だからです。財務と経営の取り違えにも気をつけましょう。
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まとめ
自社の売掛金を、入金期日前に「早期に現金化」できるファクタリング。
会社にとって魅力的ではありますが、「ファクタリングで資金調達」をやってはいけない。その理由を押さえておきましょう。
お手軽だからとうかつに手を出すと、自社の財務は崩壊しかねません。
- 手数料が高すぎるから
- いちどはじめるとクセになるから
- 借りられるときに借りておくべきだから