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税理士によって異なる決算書ができる理由と銀行融資への影響

税理士によって異なる決算書ができる理由と銀行融資への影響

同じ自社の決算書であっても、ある税理士がつくる決算書は融資が受けやすく、またある税理士がつくる決算書だと融資が受けにくい… ということはあります。

そこで、税理士によって異なる決算書ができる理由と、銀行融資への影響についてお話をしていきます。

目次

どの税理士がつくっても決算書は同じ、ではない。

1年に1度、会社がつくる決算書について。

決算書の作成を顧問税理士に依頼している、あるいは、自社でつくった決算書のチェックを顧問税理士に依頼している。

つまり。なんらかのカタチで、自社の決算書に税理士が関与している。という中小企業は多いことと推測します。

この点で。社長は、「どの税理士に頼んでも、できあがる決算書は同じはずだ」と考えているのであれば。実はそうでもありません。

会計や税金のルールにしたがって決算書をつくるのですから、理屈で言えば、どの税理士がつくろうと同じ決算書ができあがるようにも思えます。

ところが、そうでもない。

そして、その結果。銀行からの融資の受けやすさに影響することがある。同じ自社の決算書であっても、ある税理士がつくる決算書は融資が受けやすく、またある税理士がつくる決算書だと融資が受けにくい… ということはあるのです。

では、税理士によって異なる決算書ができる理由とはなんなのか? おもにこちらの3つになります ↓

税理士によって異なる決算書ができる理由
  1. グレーゾーンへの対応
  2. 損益計算書の表示方法
  3. 貸借対照表への意識

これらの理由について、銀行融資への影響も含めて、このあと順番に見ていきましょう。

 

税理士によって異なる決算書ができる理由と銀行融資への影響

《理由1》グレーゾーンへの対応

税理士によって異なる決算書ができる理由の1つめは、「グレーゾーンへの対応」です。

税理士は「税金」の専門家である、という前提があります。ゆえに、会社は税理士に「税金の計算・申告」を依頼し、「できるだけ税金を抑える(節税)」ことを望みます。

税金の計算・申告をする過程のなかでは、「シロクロつけがたい」という場面はあるもので。たとえば、ある支払いについて、経費に入れるか入れないか? みたいな。

すべての支払いについて、税法で「経費か否か」が示されていればよいわけですが。必ずしも示されてはおらず(むしろほとんど示されていない、とさえ言える)、シロクロつけがたい。いわゆる、グレーゾーンが存在することになります。

このグレーゾーンに対して、積極的に攻める税理士もいれば、消極的に守りにまわる税理士もいます。そのあいだの立ち位置をとる税理士もいるでしょう。

「どの税理士が良くて、どの税理士が悪い」というハナシではなく。グレーゾーンへの対応については、税理士それぞれだというハナシです。

結果、できあがる決算書の「利益」は異なることになります。グレーゾーンを攻めた場合には「利益」は小さく、グレーゾーンを責めない場合には「利益」は大きくなる。

利益が小さくなる場合には、連動して税金も抑えられるため、グレーゾーンを攻める税理士は社長から喜ばれる、という一面があるでしょう(のちのち、税務調査でモメる… という可能性もあります)。

逆に、利益が大きくなる場合には、連動して税金が増えるため、グレーゾーンを攻めない税理士は社長から喜ばれない、という一面があります。

ところが。

できあがった決算書が影響するのは、「税金」ばかりではありません。銀行からの「融資」にも影響します。端的に言えば、利益が大きいほど融資は受けやすく、利益が小さいほど融資は受けにくくなる。

税金が安くてよかったね、だけでは済まされないことに注意が必要です。

さきほどの「経費に入れるか入れないか?」のハナシは一例に過ぎません。一事が万事、税理士によって利益の大小が異なることはあるわけです。結果として、銀行融資の受けやすさに影響することを覚えておきましょう。

もちろん、余計な税金を払う必要はありませんから、グレーゾーンをまったく攻めないというのも、会社にとっては不利益だと言えます。要は、「バランス」の問題です。税金も融資もバランス良く、税金と融資の両面を考えられるかどうか? です。

《理由2》損益計算書の表示方法

税理士によって異なる決算書ができる理由の2つめは、「損益計算書の表示方法」です。

同じ最終利益(税引前当期純利益)であっても、損益計算書の表示しだいでは、銀行からの評価が変わってしまうことがあります。

たとえば、決算賞与。毎年支給するわけではないが、今年は業績がよかったので特別に決算で支給する。これが決算賞与です。

この決算賞与の金額を、損益計算書のどこに表示しますか?

販売費及び一般管理費のなかで、「賞与」として表示する会社がありますが。銀行融資を考えるのであれば、特別損失のなかで表示をするのがおすすめです。

販売費及び一般管理費として表示をすると、賞与の金額分だけ「営業利益」が少なくなります。けれども、特別損失として表示をすると「営業利益」や「経常利益」は影響を受けず、最終利益だけが少なくなります。

当然、どちらの表示にしても最終利益は変わりませんが、最終利益を計算する過程にある「営業利益」や「経常利益」に違いが出るのです。

この点で。銀行は、最終利益よりも経常利益、経常利益よりも営業利益を重視しています。もっと言えば、売上総利益を重視しています。損益計算書の表示で言うと、上のほうにある利益ほど重視する。

なぜならば、上にある利益ほど、本業で稼ぐチカラを純粋に示しているからです。会社は本業で稼いでナンボ。本業の稼ぎがどれだけあるのか? に銀行は注目をしてます。

であるのなら。上にある利益を大きく表示することを検討すべきです。

誤解なきように申し添えますが、理由もなく無理矢理に利益を上に表示しろ、と言っているわけではありません。きちんとした理由がある、道理がとおっていなければ、結局、銀行はそれを認めません。

それはそれとして。

ほんとうは上にある利益をもっと大きくできるのに、という決算書が少なくありません。決算書ができたら、ぜひ一度、損益計算書の表示を再確認してみましょう。

くわしくはこちらの記事も参考にどうぞ ↓

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《理由3》貸借対照表への意識

税理士によって異なる決算書ができる理由の3つめは、「貸借対照表への意識」です。

さきほど、「利益の大小によって税金の大小も変わる」というようなお話をしました。よって、税金という観点から言うと、利益の大小が関心事であり、利益が掲載されている損益計算書に注目が集まります。

決算書は、損益計算書に加えて貸借対照表もあるわけですが、その注目度はいまひとつ。損益計算書ほどではありません。利益が掲載されているわけでもなく、税金とは直接的に関係がない(間接的にはある)というのが理由のひとつです。

したがって。決算書ができあがっても、損益計算書ばかり見る。貸借対照表はほとんど見ていない、という社長もいます。

また、税理士も損益計算書ばかりを説明する。貸借対照表をほとんど説明しない、場合によってはまったく説明しない。という税理士もいます(あぁ、これはかつてのわたしです。ほんとうに無知でした…)。

ところが。

銀行融資では、損益計算書はもちろん、貸借対照表もたいへん重要です。むしろ、貸借対照表のほうが重要ではないのか? というくらいです。

ではなぜ、そこまで貸借対照表が重要なのかと言えば。銀行が「純資産」を重視しているからです。

純資産とは「資産の総額 − 負債の総額」。これがプラスであれば良し、マイナスであればダメ。かんたんに言うと、そういうことです。負債が資産よりも多い会社が危険だ、というのはイメージでもわかりますよね。

資産の総額と負債の総額は、貸借対照表を見ればわかるわけですが。貸借対照表に、ほんとうは価値が無さそうな資産や、怪しげな資産が掲載されている場合はどうでしょう?

たとえば、仮払金。決算書に「仮」のものなんて載せるなよ、というのがまず第一声。仮払金は、決算までに精算するのが会計のキホンです。

また、仮払金の「なかみ」が極めて怪しげ。よくあるのは、社長が私用で会社のおカネを借用したとか、オモテには出せないような支払いをしたとか。

このような会社に融資をしたら、「また怪しげなところに使われちゃうのではなかろうか… だったら貸さない」というのが銀行の思いです。

似たようなところでは、社長に対する貸付金が挙げられます。きちんと返済が進んでいればよいですが、返済どころかドンドンと額が膨らんでいる。銀行としては、やっぱり融資ができません。

会社に融資をしても、そのおカネが社長個人に流れてしまうことになるからです。銀行は会社に融資をするのであって、社長個人に融資をするのではありません。銀行融資を考えると、貸付金は無いほうがよいわけです。

いっぽうで。仮払金や貸付金がどうなろうと税金の金額には影響しません。ゆえに、仮払金や貸付金についてはノータッチ、ノーアドバイスの税理士もゼロではありません(実際にそういう話を見聞きしています)。自社自身で管理・確認できるようにすることが大切です。

このように、貸借対照表に対する意識の差が、異なる決算書となり、結果として銀行融資の受けやすさに影響しうる。ということを理解しておきましょう。

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まとめ

同じ自社の決算書であっても、ある税理士がつくる決算書は融資が受けやすく、またある税理士がつくる決算書だと融資が受けにくい… ということはあります。

税理士によって異なる決算書ができる理由と、銀行融資への影響について押さえておきましょう。決算書はあくまで自社のもの。税理士に任せきりにはならないように注意しなければいけません。

税理士によって異なる決算書ができる理由
  1. グレーゾーンへの対応
  2. 損益計算書の表示方法
  3. 貸借対照表への意識
税理士によって異なる決算書ができる理由と銀行融資への影響

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