都市銀行の特徴として、融資金利が低いことが挙げられます。
そこで、都市銀行の融資金利が低い3つの理由と借り手が負う3つの代償についてお話をしていきます。
金利が低いのはよいことだ、では済まされない。
日本にあまたある銀行の「種類」として、「都市銀行」という呼び名があります。都市銀行とは、大都市に本店を置き、地方を含めて広く支店展開している銀行です。
具体的には、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループのいわゆる「メガバンク」。これに加えて、りそな銀行と埼玉りそな銀行の5つが「都市銀行」とされています。
そんな「都市銀行」の特徴のひとつとして。融資金利が低い、ということが挙げられます。会社や個人事業者が、おカネを借りるときの金利が、他の銀行(地方銀行や信用金庫、信用組合)と比べて低い。
ではなぜ、都市銀行の融資金利は低いのか? ということで、その理由についてお話をしていきます。こちらです ↓
- たくさんのおカネを集めることができる
- たくさんのおカネを借りる先がある
- たくさんの手間をかけずに済む
これらの理由を受けて。「金利が低いのはよいことだ」では済まされない、借り手(会社や個人事業者)が負う代償もありますよ、というお話もしていきます。こちらです ↓
- 融資が受けにくい
- 信用保証協会付きが前提
- メインバンクになりえない
それではこのあと、都市銀行の融資金利が低い3つの理由と、借り手が負う3つの代償とを順番に見ていきましょう。
都市銀行の融資金利が低い3つの理由
《理由1》たくさんのおカネを集めることができる
都市銀行の融資金利が低い理由の1つめ。それは、「たくさんのおカネを集めることができる」です。
都市銀行の「預金」について考えてみましょう。都市銀行にはネームバリュー(知名度)があること、全国に広く展開していることにより、たくさんの人からたくさんのおカネを集めることができます。
銀行は預金者に対して利息を支払いますが、いまはご存知のとおり低金利。支払う利息は、それほど大きなものではないと言えるでしょう。
結果として。都市銀行は、たくさんのおカネを低コストで集めることができます。これが融資の原資になるわけですから、融資金利を低く設定することができるのです。
いっぽうで、地方銀行や信用金庫などは? と言うと。都市銀行ほどには預金が集まりませんから、場合によってはコストをかけて、おカネを集めなければいけません。
結果として、都市銀行よりも融資金利を高くせざるをえない… ということになります。
《理由2》たくさんのおカネを借りる先がある
さきほど、都市銀行にはネームバリューがある、と言いました。
ネームバリューによって預金が集まると同時に、おカネを借りる会社や人もたくさん集まります。また、「融資金利が低い」という魅力によっても、おカネを借りる会社や人もたくさん集まります。
このとき集まってくれる会社のなかに含まれるのが「大企業」です。
大企業はその規模の大きさゆえに、いちどに多額の資金を借りようとします。では、多額の資金を融資できる銀行は? と言えば、たくさんのおカネを集めている都市銀行です。小さな銀行では荷が重い。
大企業を相手にすることになると、都市銀行は「いちどにたくさんのおカネ」を融資することができます。
多額の融資であれば、融資金利が低くても、銀行が受け取る利息は多くなる。つまり、薄利多売ができる。これは、都市銀行の強みでもあります。
いっぽう、おカネを集めるのにコストがかかる地方銀行や信用金庫では、薄利多売はできません。ゆえに、地方銀行や信用金庫の融資金利は、都市銀行よりも高くなってしまうのです。
《理由3》たくさんの手間をかけずに済む
繰り返しになりますが、都市銀行はネームバリューによって、おカネを借りる会社や人がたくさん集まります。
すると銀行は、融資先を「選ぶ」ことが可能です。貸したい相手にだけ貸して、あとは断ることができる。そういうことです。
このとき、相手を選ぶ基準として「決算書の良し悪し」が挙げられます。もちろん、決算書の内容が良い会社、業績が良い会社を選んで融資する。
決算書の内容が悪い会社が必ずしも融資を受けられないわけではありませんが。ほんとうに貸してもだいじょうぶかどうか? それを確かめるために、事業の内容や将来性などを精査するのには手間がかかるのです。
けれども、たくさんの会社がおカネを借りようと集まってくるのが都市銀行なのですから、決算書の内容が良い会社だけに融資をしていても、都市銀行の商売は成り立ちます。
決算書を見て、内容が悪い会社、業績が悪い会社は断ればいい。
誤解を恐れずに言えば、決算書の良し悪しだけで融資可否を決められる。大きな手間をかけずに融資ができるために、都市銀行は融資金利を下げることができるのです。
都市銀行の融資金利が低いことで借り手が負う3つの代償
《代償1》融資が受けにくい
都市銀行の融資金利が低いことによって、借り手が負うことになる代償の1つめは「融資が受けにくい」です。
ちなみに、これは中小企業に当てはまります。
都市銀行が融資先を選べる立場にあることは前述したとおりです。都市銀行は、決算書の内容がよい会社を選ぶし、いちどに多額の融資を必要とする会社に融資をしたいと考えている。
結果として、その融資先は「大企業」が中心になります。大企業は中小企業よりも、決算書の内容がよい(もしくは安定している)ことが多く、いちどに多額の資金を必要としているからです。
いっぽうで、地方銀行や信用金庫に大企業は集まりません。都市銀行から低金利で、多額の資金を調達できる大企業が、地方銀行や信用金庫に行く理由はないからです。
したがって、中小企業が融資を受けるのであれば、地方銀行や信用金庫から。ということになります。中小企業は大企業に比べると、都市銀行からの融資は受けにくいものと考えておきましょう。
《代償2》信用保証協会付きが前提
いましがた、中小企業は都市銀行から融資が受けにくい、という話をしました。
それでも、中小企業が都市銀行から融資を受けられるとしたら、そのほとんどは「信用保証協会付き融資」です。
融資先になにかあったら、代わりに信用保証協会が一部または全部の肩代わりをしてくれる信用保証協会付き融資。これならば、都市銀行も安心をして融資ができる、というわけです。
ところが、信用保証協会付き融資には、借りやすくなるいっぽうでデメリットもあります。信用保証料の支払いが必要になることはもちろん、ほかにもいろいろです ↓
これらのデメリットを考えると、都市銀行の融資金利が低いとは言っても、手放しでは喜ぶことができません。
《代償3》メインバンクになりえない
都市銀行は、決算書の良し悪しで融資先を選ぶ、というお話をしました。決算書の内容が良い会社を中心に融資をする。そういう話です。
ところが、会社・事業を続けていれば良いときばかりではありません。とくに中小企業は、黒字と赤字を行ったり来たり… と業績が安定しないことも少なくないのが特徴です。
それでも、決算書の内容を重視する都市銀行は、中小企業の決算書もシビアに見ています。つまり、決算書の内容が悪い、業績悪い会社には融資をしない。
すでに融資をしているものをすぐに取り上げるようなことまではなかなかありませんが、新規融資は控えることになるでしょう。
これが、地方銀行や信用金庫であれば、都市銀行の対応よりは穏やかです。決算書の良し悪しだけで判断をしていたら、融資先が無くなってしまう… という銀行側の事情もありますので。
決算書の内容が悪いとき、業績が悪いときでも、話を聞いてくれる銀行。いわゆる「メインバンク」はつくっておきたいものです。この点で、シビアな都市銀行は、中小企業のメインバンクにはなりえないことを理解しておきましょう。
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まとめ
都市銀行の特徴として、融資金利が低いことが挙げられます。
とはいえ、「金利が低いのはよいことだ」では済まされない、借り手(会社や個人事業者)が負う代償もあることを理解しておきましょう。
- たくさんのおカネを集めることができる
- たくさんのおカネを借りる先がある
- たくさんの手間をかけずに済む
- 融資が受けにくい
- 信用保証協会付きが前提
- メインバンクになりえない