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『黒字を否定する会社(税金嫌い)』に起きる3つの不幸

『黒字を否定する会社(税金嫌い)』に起きる3つの不幸

黒字を否定する会社があります。言い換えると、税金嫌いな会社です。

そんな黒字を否定する会社に起きる3つの不幸についてお話をしていきます。

目次

利益を望みながら利益を否定している人たち。

黒字、つまり、利益を出すことを否定する会社があります。

などと言うと、「そんなバカな。みんな利益を出したくてしかたがないのだろう?」と思われるかもですが。

税金を納めたくない、税金をできるだけ少なくしたい。そのように考えている社長の会社は「黒字を否定している」ことがあります。

なぜならば。会社が納める税金(法人税)は、「利益 × 税率」の算式で計算されるからです。算式を見ればわかるとおり、利益が多いほど税金も多くなります。

だから、税金を少なくするために、利益を減らそう。利益を減らすために、もっと経費を使おう。という社長もいるわけです。結果として、社長は会社の黒字をみずから否定していることになります。

もちろん、余計な税金を払う必要はありませんが。それでも、経費を増やしてまで、利益を減らしてまで税金を減らすことで、会社におきる不幸があることは覚えておきましょう。

こちらの3つです ↓

「黒字を否定する会社(税金嫌い)」に起きる3つの不幸
  1. 薄利
  2. 薄金
  3. 粉飾

黒字を否定する会社、言い換えると、税金嫌いな会社に起きる、これら3つの不幸について。このあと順番に見ていきましょう。

 

「黒字を否定する会社(税金嫌い)」に起きる3つの不幸

《不幸1》薄利

黒字を否定する会社(税金嫌い)に起きる不幸の1つめ、それは「薄利」です。

黒字、つまり、利益を否定するのですから、「薄利」であることは当然ではありますが。具体的には2種類の薄利がある、というのがここでのお話です。

まず1つめの薄利とは、損益計算書に掲載される「税引前当期純利益」が少ないこと。税引前当期純利益は、損益計算書の末尾にありますので、自社の決算書で確認をしてみましょう。

前述したとおり、税金を嫌う会社は、経費を増やすことで税引前当期純利益を減らそうとしています。したがって、本来出せるはずの利益よりも、少ない利益しか掲載されていない。というのが1つめの薄利です。

そう言えば、思った以上に利益が出て、いつもよりも豪華に交際費を使ったなぁ… なんてことはありませんか?

続いて2つめの薄利とは、貸借対照表に掲載される「利益剰余金」が少ないことです。利益剰余金は、貸借対照表の「純資産の部」のなかにありますので、自社の決算書で確認をしてみましょう。

利益剰余金とは。かんたんに言うと、過去の「当期純利益(税引後)」の累積です。

ゆえに、過去の損益計算書で「税引前当期純利益」が多ければ、おのずと利益剰余金も多くなります。逆に、過去の損益計算書で「税引前当期純利益」が少なければ、おのずと利益剰余金も少なくなります。

この点で。税金を嫌うあまり、「ちょっと赤字(税引前当期純利益がちょっとマイナス)」になるように決算を調整をしている会社があります。赤字の場合には税金がゼロになるからです。

そのような決算を続けている会社の「利益剰余金」はどうなるかというと、当然、マイナスになります。

結果として、そのマイナスが資本金よりも大きくなることを「債務超過」と呼びます。この状態の貸借対照表では、資産よりも負債(債務)が超過することになるからです。くわしくはこちらの記事をどうぞ ↓

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以上。薄利とは、損益計算書の「税引前当期純利益」が少ないこと、貸借対照表の「利益剰余金」が少ないこと。場合によっては債務超過になる、というお話をしてきました。

このような「薄利」によって起きるのが「薄金」の不幸です ↓

《不幸2》薄金

さきほど、薄利の1つとして、損益計算書の「税引前当期純利益」が少ないことを挙げました。具体例で確認をしてみましょう。

売上高 1,000、経費 800という会社があったとします。このときの損益計算書は次のとおりです ↓

売上高1,000
経費800
税引前当期純利益200
税金(税率 30%)60
当期純利益140

上記のうち、税引後の「当期純利益」は、「税金を払ったあとの手取り額」と見ることができます。それでは、この会社の社長が「60も税金を払いたくないから経費を 200増やそう」と考えた場合はどうでしょう?

さきほどの損益計算書との比較がこちらです ↓

 経費を増やさない経費を増やす
売上高1,0001,000
経費8001,000
税引前当期純利益2000
税金(税率 30%)600
当期純利益1400

社長の思惑どおり、税金は 60からゼロになりました。それはそれとして、問題は「当期純利益」です。経費を増やしたことによって税金が減りましたが、税引後の当期純利益も減りました。

結果、税引後の当期純利益はゼロ。つまり、税金を払ったあとの手取り額はゼロです。

経費を増やさずに、60の税金を払っていれば 140のおカネが会社に残ったはずなのに。税金を嫌うあまりに、会社におカネを残すことができなくなってしまう。

これが「薄金」の不幸です。

具体例では、わかりやすくするために、極端にも当期純利益をゼロにしましたが。経費を 100増やした場合でも、50増やした場合でも結果は変わりません。経費を増やしたほうが、増やす前よりも手取り額が少なくなります。

経費を使うな! というハナシではありません。目先の税金を嫌うあまり、必要以上に経費を使っていないか? ムダに経費を増やしていないか? その確認をしたうえで経費を使いましょう、という話です。

手取り額が少ない状態が続けば、手元の現金預金を増やすことができず、会社の財務基盤は弱くなるばかりです。不測の事態にはすぐに資金不足となり、会社をつぶしてしまう。会社を守ることができない、という危険があることを理解しておきましょう。

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《不幸3》粉飾

いましがた、「薄金」の不幸についてお話をしました。黒字を否定する会社(税金嫌い)は、手取り額が少なくなり、手元の現金預金を増やすことができない。

じゃあ、銀行から借りればいい。と考えるのであれば、それは難しいものがあります。なぜなら、黒字を否定する会社は「薄利」だからです。

薄利には2種類あって、損益計算書の「税引前当期純利益」が少ないこと、貸借対照表の「利益剰余金」が少ないこと、というお話は前述しました。

銀行は、この2種類の薄利を嫌います。薄利の会社には、融資をしたくない。というか、融資をしてはいけない。そう考えるのです。

理屈上、借りたおカネの返済(元金部分)は「税引後の利益」と考えられています。損益計算書で言うと、最末尾の「当期純利益」のことですね。これが返済額を上回ることが求められます。

にもかかわらず。当期純利益がゼロやマイナスということであれば、理屈上、貸しても返済してもらえないことになる。だから、銀行は薄利の会社を嫌うのです。

また、もうひとつの薄利である「債務超過」も、銀行は嫌います。言うまでもありませんが、資産よりも負債が多いなんて、危険極まりない会社だからです。

ここで、薄利の会社が考えること。それが「粉飾」です。

粉飾とは、利益を水増ししたり、資産をかさ上げしたりする「経理操作」を言います。事実とは異なる決算書を偽装する行為が「粉飾」です。この偽装した決算書で、銀行から融資を引き出そうというわけです。

粉飾をしてはいけないことは言うまでもありませんが。粉飾をしてもバレないと、考えているのであれば。それは間違いです。

銀行は、「会社が粉飾をしているかもしれない」という眼で決算書を見ています。粉飾を見抜くためのテクニックも駆使しています。

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結果、粉飾が見つかれば、会社は融資を受けることはできません。加えて、以降の融資を受けることも難しくなるでしょう。粉飾をするようなダメな会社というレッテルを貼られてしまうからです。

おカネに困っているから粉飾をしたのに、銀行から嫌われたのではますますおカネに困ってしまいます。

このように。黒字を否定する会社(税金嫌い)は、「薄利→薄金→粉飾」という負の流れをつくり出してしまうことを覚えておきましょう。黒字を否定していないか、税金を嫌いすぎていないか、社長は自問自答してみましょう。

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まとめ

黒字を否定する会社があります。

税金を納めたくない、税金をできるだけ少なくしたい。そのためなら、経費を増やしてでも利益を減らす、税金を減らす。そういう社長の会社は「黒字を否定している」ことになります。

そんな黒字を否定する会社には、3つの不幸が起きることを理解しておきましょう。

「黒字を否定する会社(税金嫌い)」に起きる3つの不幸
  1. 薄利
  2. 薄金
  3. 粉飾
『黒字を否定する会社(税金嫌い)』に起きる3つの不幸

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