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コロナ融資で『資金繰り表』を求められたときの作成ポイント3選

コロナ融資で『資金繰り表』を求められたときの作成ポイント3選

コロナ融資では、資金繰り表の提示は必須ではないものの。コロナ以前から赤字だった会社・個人事業者については、資金繰り表が求められることがある。

そこで、コロナ融資で資金繰り表を求められたときの作成ポイントについてお話をしていきます。

目次

必須書類ではなくても求められる資金繰り表

本記事の投稿日現在(2020年4月21日)、新型コロナウィルスの影響により、多くの会社・個人事業者が資金繰りに苦しんでいます。

これを受けて、国・地方自治体主導のもと、各種融資が整備・推進されているところです。

おもには、公的金融機関である日本政策金融公庫の「新型コロナウィルス感染症特別貸付」、民間金融機関を利用する「セーフティネット保証」が挙げられます。

これら「コロナ関連の融資(以下、コロナ融資)」について。融資審査の際に、「資金繰り表」の提示を求められるケースがあります。

コロナ融資では、資金繰り表の提示は必須ではないものの。とくに、コロナ以前から赤字だった会社・個人事業者については、「経営改善計画(どうやって黒字化するのか? の計画)」の一環として資金繰り表が求められる。

ゆえに、資金繰り表の提示が必要になることもあるわけです。

そこで、コロナ融資で資金繰り表を求められたときの作成ポイントについてお話をしていきます。次の3点です ↓

コロナ融資で「資金繰り表」を求められたときの作成ポイント
  1. 最低半年は売上低迷を想定する
  2. 経費削減を計画・実行する
  3. 事業撤退ラインを引く

それでは、このあと順番に見ていきましょう。

資金繰り表の基本的な作成方法はこちらの記事をどうぞ ↓

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コロナ融資で「資金繰り表」を求められたときの作成ポイント

《ポイント1》最低半年は売上低迷を想定する

コロナを取り巻く状況は刻一刻と変化をしています。コロナの影響が出始めた当初は、「2020年にオリンピックの開催」という選択肢が残されていました。

したがって、現状で売上が減少していても、コロナが収束してオリンピックが開催されれば「売上は戻る」とのシナリオが描けたのです。

でも、いま(2020年4月21日現在)は違います。オリンピックは延期になり、コロナの感染者は増え続け、緊急事態宣言も出ました。基本、外出は自粛です。

コロナに対する絶対的な予防・治療方法も存在せず、コロナ収束の目処は立ちません。結果として、売上が戻る目処も立たない…

そのようななかで、資金繰り表に記載する「向こうしばらくの売上」はいったいどうしたらいいのか? との疑問があるでしょう。

決して、楽観的な数字を想定しないことです。悲観的になる必要もありませんが、少なくとも「来月から急回復」というような想定をしないことです。

資金繰り表を提示する以上、「良い計画」でなければ審査が通らないのではないか? 思われるかもしれません。

たしかに、悪い計画よりも良い計画のほうがいいでしょう。けれども、さきほどお話をしたとおり、いまは良い計画を描ける前提が無いのです。

にもかかわらず、根拠も無しに立てられた良い計画は、銀行からの信用・信頼を失うばかりだと言えます。

結論として。最低半年は売上低迷を想定しましょう。良くて現状維持、そういうイメージです。半年先くらいから、少しずつ売上が戻っていく。

実際、コロナ収束までには1年かかる、との見方もあります。そう考えると、半年でもまだ、楽観的にすぎるのかもしれません。いずれにせよ、根拠もなしに「売上急回復」といった資金繰り表をつくらないようにしましょう。

なお、売上という「入金」の代わりに、他の入金が見込まれるのであれば、資金繰り表に折り込みましょう。具体的には、コロナ支援としての「雇用調整助成金」や「持続化給付金」などです。

そのうえで、資金繰り表の毎月の「月末資金残高」がマイナスにならないように、コロナ融資の申込金額を考えることになります。

結果として、コロナ以前の平均月商(年間売上高 ÷ 12ヶ月)の「半年〜1年分」くらいの申込金額になることは少なくありません。

それだけの金額の融資を受けられるかはわかりませんが。現実的に必要な金額だ、とは言えます。会社・事業をできるだけ長く維持するためにも、「過度に低い申込金額」にはしないようにしましょう。

最終的には、申込金額の満額とはいかず、減額されての融資ということはもちろんあります。

そのときには銀行から、「ひとまず今回は 〇〇万円を融資します。これでようすを見て、また必要であればそのときに検討しましょう」との話もありえるところです。

コロナ融資は「一回で終わり」ではありません。段階的に融資を受けられるのはコロナ融資の特徴のひとつになります。

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《ポイント2》経費削減を計画・実行する

さきほど、売上は半年ていどは現状維持だと言いました。楽観的に考えてはいけない、と言いました。

売上は、いくらじぶんが増やしたくてもお客さまあってのこと。じぶんだけではどうにもなりません。コロナにいたっては、「営業自粛」を求められるようなことがあればなおさらです。

売上はじぶんだけではコントロールできない。そのいっぽうで、経費であれば、じぶんでコントロールできる部分は多くなります。

言うまでもないことですが、経費を減らすことで、売上が減った分をカバーすることができるわけです。

にもかかわらず。売上を増やそうとするばかりで、経費を減らすようすはあまりない… という資金繰り表は少なくありません。

最たるところで言えば、「役員報酬の減額」です。社長やその家族のお給料の減額ですね。売上が激減して厳しい状況にありながら、役員報酬は変わらずにそのまま。

銀行は、経営改善計画について、必ずと言っていいほど「役員報酬の減額」を求めるものです(生活できないほどの減額は求めません)。それは、コロナ融資においても同じこと。

資金繰り表では、役員報酬の減額を折り込み、すぐにでも減額を実行するようにしましょう。実際に減額したという「実績」があるほうが、銀行に対する説得力にもなります。

ちなみに。税金のルールに「定期同額給与」があります。1年の途中で、役員報酬の金額を変えてはいけない、というハナシです。だから役員報酬を減額できない、と考えている社長もいらっしゃると聞きます。

これについては、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」のなかで、弾力的な取り扱いが例示されました。

顧問税理士に相談するなどして、税金のルールもふまえたうえで、役員報酬の減額を計画・実行するとよいでしょう。

経費削減の例として「役員報酬」を挙げましたが。経費はほかにもいろいろあります。いまは、どれだけ長くガマンができるか? どれだけ長く粘れるか? が重要です。経費削減を検討して、資金繰り表に折り込みましょう。

結果として、資金ショートを先延ばしすることができますし、銀行からの融資を受けやすくもなります。

《ポイント3》事業撤退ラインを引く

コロナ融資で「資金繰り表」を求められたときの作成ポイントの3つめは、「事業撤退ラインを引く」です。

これは銀行に対して伝えることではなく、あくまで会社・個人事業者自身のこととして考えるべきことになります。

コロナ融資は、文字どおり「融資」です。借りたものはいずれ返さなければいけません。「会社・事業をなんとしてでも続けたい」という思いはわかりますが、返せないほど借りるわけにはいきません。

コロナに関しては先が見えず、「ほんとうに返せるのか?」と聞かれても、確信を持てないのが正直なところでしょう。それでも融資を受けられるのは、コロナ融資は「特別な融資」だからです ↓

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であるならば。どこまで借りるか? の線引きはじぶんがしなければいけません。コロナが収束しない、収束してもかつてのような売上は戻らないかもしれない。そのときのことも考えて、どこまで借りるか? です。

たとえばそれが 1,000万円なのだとしたら。1,000万円借りてなお、また借りなければならないような事態が起きたときには会社・事業を閉める。もう借りない。

今回借りる 1,000万円でどうにもならなければあきらめる。とても辛く、難しい決断ではありますが、返しきれないまでの借金を抱えるのも困ります。

だから、事業撤退ラインを引く。

ラインを引くのであれば、融資を受けるとき・受けたときにしましょう。おカネが無くなってから、ラインを引くのは困難だからです。

おカネが無くなったときには「なんとかしよう」との思いが強く、「撤退」よりも「無茶や無理をしてでも継続」を選びがち。適切な例えかはわかりませんが、ギャンブルで負けが続いてもなお賭け続けてしまう姿に似ています。

資金繰り表をつくることをきっかけに、「事業撤退ラインを引いておく」ことを考えましょう。

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まとめ

コロナ融資では、資金繰り表の提示は必須ではないものの。コロナ以前から赤字だった会社・個人事業者については、経営改善計画の一環として資金繰り表が求められることがあります。

そんなときには、ポイントを押さえた資金繰り表の作成に気をつけましょう。

コロナ融資で「資金繰り表」を求められたときの作成ポイント
  1. 最低半年は売上低迷を想定する
  2. 経費削減を計画・実行する
  3. 事業撤退ラインを引く
コロナ融資で『資金繰り表』を求められたときの作成ポイント3選

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