知りたいけれどわからない。聞きたいけれど聞きにくい。
銀行からいくらまでなら融資を受けられるのか・受けやすいのか?の目安についてお話をしていきます。
いくらまでなら融資を受けられる? という野暮。
会社・事業における銀行融資について。
ウチの会社はいくらまでなら融資を受けられるのか? あるいは、いくらまでなら融資が受けやすいのか? は気になるところでしょう。
実際に、銀行融資のお手伝いをしていると、ご相談が多いところでもあります。
銀行に直接聞く、という手もありますが。それはそれで、「いくら必要なのか、が先だろう?」と思われてしまうのも問題があるものです。よって、銀行に「いくらまでなら融資が受けられるか?」をたずねるのは得策ではありません。
そこで。 銀行からいくらまでなら融資を受けられるのか・受けやすいのか?の目安についてお話をしていきます。こちらです ↓
- 債務償還年数 10年以内
- 運転資金の範囲内
- 信用保証協会付き融資の枠内
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行からいくらまでなら融資を受けられる・受けやすい?の目安
債務償還年数 10年以内
銀行からいくらまでなら融資を受けられるのか? あるいは、いくらまでなら融資が受けやすいのか? 1つめの目安は「債務償還年数 10年以内」です。
債務償還年数とは、算式で言うと次のとおり ↓
債務償還年数 = 借入金残高 ÷(税引後利益 + 減価償却費)
算式を見るとクラクラする… という体質の人もいるかもしれませんが。カンタンに言うと、債務償還年数とは「銀行借入金をあと何年で返済できそうか?」の財務指標です。
ひとまず、算式中の「減価償却費」を除いて見てみましょう。「借入金残高 ÷ 税引後利益」というシンプルな算式になります。
借入金の返済原資は「税金を払ったあと手元に残った利益(税引後利益)」であり、これで借入金残高を割ってみれば「何年で返済できるかがわかる」という考え方です。
ちなみに。減価償却費を税引後利益に加算するのは「現金の支払いをともなわない経費だから」になります。なんのこっちゃ… であれば、あまり気にせず、そういうものだと思っておくのもよいでしょう。
向学心を抑えきれないというのであれば、こちらの記事もどうぞ ↓
なんにせよ。債務償還年数は、「銀行借入金をあと何年で返済できそうか?」の指標です。
この債務償還年数について。銀行は「10年以内」という考え方を持っています。10年以内であれば、融資をしてもいい。逆に、10年を超えるようなら、これ以上は融資をしない・したくない。
したがって、自社の債務償還年数を計算してみて 10年以内であれば、まだ融資を受けられる「余地」があるのかなぁ、と考えられます。
余地がどのくらいあるのか? 算式で言うと次のとおりです ↓
(税引後利益 + 減価償却費)×10 − 現在の借入金残高
債務償還年数 10年以内とは言い換えると、「税引後利益 + 減価償却費」の 10倍まで貸すよ、ということでもあります。
したがって、「税引後利益 + 減価償却費」の 10倍が融資限度であり。そこから、現在の借入金残高をマイナスした金額が借入余地だ。そういうことです。
もちろん。これは目安であって、絶対的な基準ではありません。ただそれでも、銀行はこの目安でもってざっくりと「融資できそうか・できなさそうか?」を考えていることはたしかです。
ひとつの目安として覚えておきましょう。
また、自社の借入金残高が「税引後利益 + 減価償却費」の 10倍に近づくほど、次の融資は受けにくくなる。逆に、「税引後利益 + 減価償却費」の 10倍までに余裕があるほど、次の融資は受けやすいことは言うまでもありません。
[ad1]運転資金の範囲内
銀行からいくらまでなら融資を受けられるのか? あるいは、いくらまでなら融資が受けやすいのか? 2つめの目安は「運転資金の範囲以内」です。
ここで言う「運転資金」とは、算式で言うと次のとおり ↓
運転資金 =(売上債権 + たな卸資産)− 仕入債務
これは「正常運転資金」や「経常運転資金」などとも呼ばれるものです。
算式中の「売上債権(売掛金や受取手形)」と「たな卸資産(在庫)」は、おカネが入金されるのを待っている状態のもの。
仕入債務(買掛金や支払手形)は、逆に、おカネを支払うのを待ってもらっている状態のものになります。
結果として。「売上債権+たな卸資産」と「仕入債務」の差額である、「運転資金」分のおカネが無いと資金繰りはもちません(経費の支払いなどができない)。
つまり。運転資金とは、「会社・事業を続けていくためには必要なおカネ」を言うのです。
したがって、会社は「運転資金分のおカネを用意するべく、銀行から融資を受ける」というのが財務の常套手段になります。自己資金で準備をするのはなかなか困難だから、ですね。
銀行もまた、このような「運転資金の必要性」については当然に理解をしています。ゆえに、運転資金分の融資には、基本、積極的です。
また、「売上債権(売掛金や受取手形)」や「たな卸資産(在庫)」は現金化できるものですから、銀行も返済財源と見て安心できる。だから、積極的に融資もできる。
運転資金の金額までの融資は受けられる・受けやすいことを覚えておきましょう。前述した債務償還年数 10年以内のなかでも、とくに運転資金分の融資は受けやすい。
いっぽうで。売上債権が多いと、銀行からは「架空債権」や「不良債権」を疑われます。たな卸資産が多いと、やはり、「架空在庫」や「不良在庫」を疑われます。
もしも架空や不良があれば、実際の運転資金はその分だけ小さくなる。架空や不良の分までは融資はできない。だから銀行は「売上債権が多くないか?たな卸資産が多くないか?」を警戒しているのです。
なお、多いかどうかの比較対象は「同業他社」です。銀行は、保有している同業他社のデータと比較することで、「架空」や「不良」をあぶりだそうとしています。くわしくはこちらの記事もどうぞ ↓
信用保証協会付き融資の枠内
銀行からいくらまでなら融資を受けられるのか? あるいは、いくらまでなら融資が受けやすいのか? 3つめの目安は「信用保証協会付き融資の枠内」です。
まずはじめに、信用保証協会とは。
たとえば、東京信用保証協会や神奈川県信用保証協会など。各都道府県に1つずつ、加えて横浜市・川崎市・名古屋市・岐阜市に1つずつ。ぜんぶで全国に51ある公的な機関です。
その信用保証協会は、「信用保証を通じて金融の円滑化に努める」ことを役割としています。平たく言うと、「信用保証協会が信用保証をすることで、中小零細企業が銀行からおカネを借りやすくする」ということです。
いっぱんに、中小零細企業は信用力に乏しく、大企業に比べると銀行からの融資が受けにくい状況があります。そこで、信用保証協会に保証人になってもらおう。これが、信用保証協会付き融資です。
すると、もし会社が返済をできなくなったときには、信用保証協会が代わりに銀行へ返済をします。これであれば、銀行も回収不能を心配せずに済みますから融資がしやすい。
会社から見ると、信用保証協会付きであれば融資が受けやすい、ということになるわけです。
ここで注意点。信用保証協会の信用保証には、「枠(限度額)」が決められています。
具体的には、無担保融資の場合で、1つの会社・個人事業者あたり 8,000万円が限度です。これに加えて、有担保での融資については、限度は2億円とされています。よって、合計2億8千万円が信用保証協会の限度額です。
なお、この2億8千万円という限度額は「通常」の保証限度額であり、経営安定関連保証(セーフティネット保証)などの国の施策による「特別」の保証については別枠で限度額が設けられていることは覚えておきましょう。
とにもかくにも。信用保証協会の信用保証にも「枠(限度額)」がある、というのがポイントです。いくらまででも保証をしてくれるわけではありません。
また、必ずしも限度額いっぱいまで保証をしてもらるわけでもないことには注意が必要です。会社の状況に応じて、限度額のうち、いくらまで保証できるかが決まります。
ひとつの目安として。無担保融資の場合には、「年商(年間売上高)の3〜5割ていどまで」と考えておくとよいでしょう。
たとえば、年商5千万円の会社であれば、信用保証協会が保証をしてくれるのは、1,500万円〜2,500万円くらいかなぁ? ということです。
そう考えると。融資を受けやすい信用保証協会付き融資の「枠」は、余裕を持っておくほうがいいい、と言えます。赤字で融資を受けにくいときのためなどに、枠を温存しておいたほうがいい。
そのためには、会社の状況が良いときに「プロパー融資」で融資を受けることです。タイミングを逃さないように気をつけましょう。会社の状況が良いときには、えてして融資への関心は薄れがちにもなりますので ↓
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まとめ
ウチの会社はいくらまでなら融資を受けられるのか? あるいは、いくらまでなら融資が受けやすいのか? は気になるところでしょう。
とはいえ、銀行に直接聞くのも得策ではありません。
というわけで。銀行からいくらまでなら融資を受けられるのか・受けやすいのか?の目安について、自身で押さえておきましょう。
- 債務償還年数 10年以内
- 運転資金の範囲内
- 信用保証協会付き融資の枠内