銀行融資において、しばしば注目される「財務指標」。
けれども、あまり細かな財務指標についてまで、融資を受ける側が考える必要はありません。その理由をお話していきます。
木を見て森を見ず、みたいな。
会社・事業における銀行融資について。銀行が融資の審査をするうえで、重視しているものに「決算書」があります。決算書の良し悪し。
そのため融資を受ける側でも、決算書をもとに計算される各種の「財務指標」の良し悪しは、しばしば注目されるところです。財務指標というのは、なんたら利益率とか、なんたら比率とか、インタレストカバ…なんたらとか。まぁ、いろいろです。
銀行もまた、財務指標については計算をしていますし、注目もしていることでしょう。
ただそれでも、あまり細かな財務指標についてまで、融資を受ける側が考える必要はありません。少なくとも、細かな財務指標の良し悪しを見て、一喜一憂すべきものではありません。
その理由をお話していきます。こちらの3つです ↓
- 数ありすぎだから
- そもそも正確な数字とは言えないから
- すべての指標を良くする方法があるから
それでは、このあと順番に見ていきましょう。
銀行融資で細かな財務指標まで考える必要がない3つの理由
《理由1》数ありすぎだから
財務指標とひとくちに言っても、その数は決して少なくありません。売上総利益率や自己資本比率など、メジャーなものだけでもすぐに 10を超えますし。
ネットでちょっとググるだけでも 20〜30くらいはカンタンに見つかります。おそらく、わたしが知らない・よくわかっていないものも含めれば 50とか 100とかあるのでしょう。
じゃあ、それらたくさんの財務指標を覚える必要があるのか。確認する必要があるのかと言えば。こと銀行融資という観点では「必要ない」と言ってよいものと考えています。
会社の決算書を見て。融資が受けられそうか、どれくらいの融資が受けられそうか、融資条件についてどのような交渉ができそうか。そのあたりをおおむね知りたいのであれば、指標は3つあればじゅうぶん。
そう考えると、世の中にある財務指標は「数ありすぎ」です。では、その3つの指標とは?こちらになります ↓
- 簡易キャッシュフロー
- 債務超過
- 債務償還年数
えっ、これだけ? と思われるかもしれませんが。銀行融資に必要な財務指標の要素が、これら3つの指標に集約されている。そういうイメージです。
これらの指標の見方・考え方については、本記事の趣旨からはずれるので別記事にゆずります。ご興味あれば、こちらの記事もどうぞ ↓
なにはともあれ。銀行融資を考えるうえで、たくさんの財務指標・細かな財務指標まで考える必要はありません。考えるには「数ありすぎ」だからです。
《理由2》そもそも正確な数字とは言えないから
誤解を恐れずに言えば、中小零細企業の決算書から導かれる「財務指標」は正確な数字とは言えません。
ここで言う「正確な数字」とは。大企業の決算書から導かれる財務指標に比べると、そういう意味です。
大企業には、たくさんの株主がいます。その株主は、会社から見ると不特定多数の「他人」です。社長が高額の役員報酬をとっていたり、多額の交際費を使っている。そのうえで赤字… ということになれば、他人である株主から厳しく追及されるのが大企業です。
いっぽうで、中小零細企業はと言うと。多くの場合、「社長(加えてその家族)=株主」です。よって、株主から厳しく追及されることがありません。
結果として、世間相場より高い役員報酬になることもあります(逆に低くなることもありますが)。社長の裁量が大きいから、株主の追及がないからです。
交際費などの諸経費についても同じで、やはり裁量が大きい。「ちょっと使いすぎちゃったかな…」というようなこともあるわけですが、それでも経費は経費だから、と決算書には経費として計上されることとなります。
また、大企業には公認会計士による「監査」が求められている点も見逃せません。大企業の決算は、基本的に「無限定適正(すべて正しい)」を求められるほどの厳格さです。
中小零細企業だって、税理士の監査があるだろう。そう思われるかもしれませんが、税理士の場合には「無限定適正」までの厳格さはないものです(いちおう、「一般には」と申し添えておきます)。
だから、中小零細企業の決算書はそもそも信用ならないんだ。という見方が銀行サイドにあるのもまた事実です。
このように、中小零細企業には「株主の目が無い」ことや、「無限定適正までの厳格さがない」ことから、決算書の数字は大企業ほどに正確ではない。その数字から導かれる財務指標もまた正確とは言えない。
正確ではないのに、細かな財務指標を見ていても… ですよね。
税金を抑えるための利益調整(粉飾ではなく合法的な)が常である中小零細企業の決算書。利益調整された数字で、毎年の財務指標を比較するのもまたおかしなハナシだと言えるでしょう。
[ad1]《理由3》すべての指標を良くする方法があるから
いましがた、「財務指標を見たって意味がない」くらいの話をしてしまいましたが。
そうは言っても、財務指標は先人の知恵が詰まった「道具」でもあり。決算書の不正確さを知りしつつも、銀行は財務指標を融資審査の道具として使っています。
だとしたら、各種の財務指標を良くするための努力には意味がある。
とはいえ。ひとつひとつの財務指標を見て、この指標を良くするにはああしたらいい・こうしたらいい… みたいなことを考える必要はありません。
たとえば、自己資本比率を良くするには。まず総資産を減らして… 負債も減らしたほうがいいのかな… ? 営業利益率を良くするには、売上を増やして、仕入や人件費を減らして… でもそうすると、自己資本比率はどうなるんだろう? 流動比率は? 労働分配率は?
あっちをいじるとこっちも変わる。こっちをいじるとあっちも変わる。各指標のそれぞれを良くすることを考えようとすると大混乱です。
じゃあ、どうするか?
答えは「利益」を出すことです。利益をたくさん出すことで、すべての財務指標は良くなります。短期的には良くならない指標があったとしても、利益を出し続けることで中長期的には必ず良くなります。
すべての財務指標を良くする方法は「利益を出すこと」。これがわかっていれば、細かな経営指標の改善にこだわる必要はありません。
ちなみに。利益を出すなんてあたりまえだろう、と思われるのであれば違います。なぜなら、決して少なくはない数の会社が「利益を出し惜しんでいるから」です。
税金を嫌って(というか必要以上に嫌いすぎて)、利益をみずから削っている。経費を増やして利益を削っていたりする。だから、決算書が不正確にもなるのです。
利益を出し惜しまなければ、決算書は適正化されるし、財務指標も改善される。ひいては、銀行融資が受けやすくなる。これを覚えておきましょう。
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まとめ
銀行融資において、しばしば注目される「財務指標」。
けれども、あまり細かな財務指標についてまで、融資を受ける側が考える必要はありません。細かな財務指標の良し悪しに一喜一憂する、のはもってのほか。その理由を押さえておきましょう。
- 数ありすぎだから
- そもそも正確な数字とは言えないから
- すべての指標を良くする方法があるから